弁護士コラム

2017.07.20

【離婚問題】夫に彼氏がいた!?同性同士でも浮気になるの?

「夫が浮気をしていた、しかもその相手が男性だった。」こんな相談者が稀にいらっしゃいます。夫が浮気をしていただけでもショックなのに、今まで人生のパートナーと見ていた相手が同性愛者だったということで、極めて大きなショックを受けて、どうすれば良いのか分からないといった方に出会います。それだけのショックを受けて当たり前でしょう。
では、夫が浮気をした相手が男性だとしても,離婚することはできるのでしょうか。今回は,同性同士の浮気でも「不貞行為」になってしまい、離婚しないといけないのかという問題についてお話ししたいと思います。

1 どんなときに離婚できるの?

離婚をしようとする場合においては,4つの方法があります。
まずは,協議離婚という方法があります。これは,一般的な離婚のイメージと同じであって当事者間での話し合いを言います。
協議離婚がどうしてもできない場合,調停離婚を行うことになります。これは,裁判所を入れて当事者間で話し合いをするという方法です。これらの2つの制度は話し合いによるものであるので,「離婚しよう」という合意が可能であれば,どんな理由でも離婚することが可能になります。
しかし、どうしても話し合いがまとまらない場合には、判決離婚(裁判所に離婚できるかを決めてもらうものを言います)という手続によるしかありません(審判離婚という方法もありますが,実際に使われることはほぼないので省略します。)。

判決離婚は,裁判所の力を使って離婚することになるため,「離婚を命じられてもやむを得ない」といった事情がある場合に限って可能であると言えます。それでは,実際に法律がどのようなときが「離婚を命じられてもやむを得ない」と考えているかを見てみましょう。

民法770条(裁判上の離婚)
1 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みのない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由

今回では,①「不貞行為」にあたる可能性がありそうですね。それでは,まず同性との浮気が「不貞行為」にあたるかについて詳しく検討してみましょう(これだけの事実では難しいかもしれませんが,⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性もあります。)。

2 不貞行為ってなあに?

「不貞行為」という言葉は,普通聞くことはほぼないと思います。「不貞行為」を簡単にいうと日常用語における「浮気」と同じような意味と思っていただいて構いません。そのため,今回のように「浮気じゃないのか?」ということが問題となっている場合においては,「不貞行為」といえるかを最初に検討することになります。
日本では,一夫一妻制のもと夫婦は相互に貞操義務(浮気をしてはいけないという義務のことです)を負っており,「不貞行為」を行うことは,貞操義務に違反することになり、相互の信頼関係を破壊することになってしまうので離婚原因とされています。そのため,「不貞行為」とは,貞操義務に違反すること、つまり配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうとされています。
 もっとも,性的関係とは何を意味しているのでしょうか?
 この点について,裁判所は「性的関係」を性交に限定して解釈しています。そうだとすると,裁判所は,不貞行為とは異性間で起こるものであることを前提としていると考えられます。
 よって,同性同士で性的な接触を行ったとしても「不貞行為」には該当しません。したがって,同性同士での浮気をしたことが「不貞行為」にあたるとして離婚することはできません。

3 じゃあ婚姻していても同性同士ならいくらでも浮気をもっていいの?

 では,夫と離婚することはできないのでしょうか?
同性であるために「不貞行為」に該当しないとしても,妻以外の人と浮気をすることは、夫婦の本質的な要素である性的生活を破壊するに足りる行為であるといえるはずです。そのため,夫が同性の相手と性的関係をもったことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されれば、離婚をすることができます。
この点について,夫が婚姻前から同性愛を続けており,妻との間で性交渉を全く持とうとしなかったという事案について,性生活は婚姻生活における重大な要因の一つであって,妻がすでに,すでに数年間にわたり夫との間の正常な性生活から遠ざけられていることや,夫が同性愛者だと知って妻が受けた衝撃の大きさを考えると,妻・夫相互の努力によって正常な婚姻関係を取り戻すことはまず不可能と認められるということから,「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在すると判断して,妻からの離婚請求を認めた裁判例があります(名古屋地判昭和47年2月29日)。
この裁判例の判断に従えば,単に夫が同性の相手と性的関係をもったというだけでは「不貞行為」だけではなく,「婚姻を継続し難い重大な事由」にも該当しないと判断される可能性も十分にあると思われます。「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか否かは,同性との浮気だけでなく,そのために妻との性行為がなされていないことなども考慮して判断されることになるでしょう。

4 まとめ

 以上のような裁判例があることからすれば,同性愛行為を夫がした場合であっても,簡単には離婚できないといわざるをえないでしょう。しかし,異性とはいえ性的関係を持たれることは,精神的に大きなダメージを負うものであることは疑う余地がありません。離婚をしたいと考えることは当然ともいえるでしょう。
 こういった場合でも同種事例について経験豊富な弁護士であれば的確な対応をできますので,お困りの方は同種事例について経験豊富な弁護士に一度,相談してみてください。

 

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