婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~
婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~
<ご相談者様からのご質問>
単に離婚がしたいということだけでは簡単には離婚事由にはならないのですね。
他には,どのような事情が離婚原因として主張しうるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
夫婦が結婚してから,離婚に至るまでには,当事者のみならずときには両家の家族をも巻き込んで様々なことが起きているのが通常です。一方当事者が離婚に応じていない場合,「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」が認められるか否かについては,上記の様々な出来事についてどれだけ説得的に主張及び立証(証拠により証明することです。)できるかが重要になってきます。前回に引き続き,今回もどういった事情が該当しうるのかについてご説明させていただきます。
1 暴力,暴言(DV,モラハラ等)
暴力や暴言等を行うことが,夫婦の関係を破綻させることにつながることは当然であり,裁判所としても,DV(ドメスティック・バイオレンス)等に対して厳しく対応しており,きちんと証拠に基づきDVとして認定される場合には,離婚事由に該当することになります。また,近年ワイドショーなどでも使われているモラハラ(モラルハラスメント)についてもDVと同視しうるような程度のものであれば離婚事由足りえるでしょう。ここで大事なのが,単に当事者が「DVだ」「モラハラだ」と主張するのみでは,足りず,あくまでも客観的に裁判所からみてDVとして評価されるうる事実が存在することが必要になってきます。また,「ドメスティック(=家庭内)」というだけあって,DVやモラハラの立証はとても困難を伴います。したがって,録音,録画,毎日日記を書く,程度がひどい場合には警察や,市などの相談窓口に連絡を取っておくなど地道な証拠集めが重要になってきます。
2 性生活の問題
最高裁判所の判例においても夫婦間の性生活が夫婦関係の重要な要素であること自体は認めています。したがって,相手方が拒否しているにも関わらず異常な性行為(SMプレイ等)を強制させることを継続的に行っている場合などには離婚原因の1つとして主張しうる事情になりえます。
逆に,正当な理由がないも関わらず性交渉を拒否する(いわゆるセックスレス)状態が長期間に渡り継続していた場合にも離婚事由として主張しうることになります(あくまで正当な理由もなく拒否していることが必要になりますが,長期間にわたり拒否し続けた場合には慰謝料の支払いが認められた裁判例もあります。)。
各債務整理手続の特徴について~②破産と民事再生~
各債務整理手続の特徴について~②破産と民事再生~
<ご相談者様からのご質問>
借金の額が非常に多くなってしまい,任意整理での解決は難しいのではないかと考えております。破産と民事再生はどちらの方がよいのでしょうか。
<弁護士からの回答>
法的整理を行うべきであると判断した場合には,原則として破産を選択することになりますが,破産手続きは,債務をゼロにする(免責)という効果が認められるものであるため,要件が定められており,要件に充足しないと破産が認められません。弁護士の立場からすると,破産の要件を充足しているのであれば破産を選択すべきであると考えます。
今回は,破産と民事再生の特徴についてご説明させていただきます。
1 破産手続について
破産手続の一番のメリットとしては,破産によりこれまで支払ってきた債務の支払い義務を免れる(免責)点にあります。これにより債務を払うことなく新しい生活を進むことができますので,経済的な再建を図るためには,破産の要件を充足しているのであれば,破産により債務の免責の効果を得ることで借金問題を解決することが一番であると弁護士としては考えています。
このように,破産手続は,免責という効果を与えるものであることから,破産手続を行うためには様々な制約があります。例えば,一定の財産を所有している場合にはその財産を差し出して債権者へ支払う(「配当」といいます。)必要があります。
したがって,不動産等を所有している場合には原則として財産を手放す必要があります。また,破産にいたった理由(借入を行った理由)がギャンブルや浪費など法律で定められた原因に該当する場合には,免責が認められない場合もあります。さらに,破産手続中は資格制限が認められており,保険の外交員,警備員等一定の資格の職業にはつけなくなってしまいます。
したがって,ご相談者様より事情をお伺いする際には,上記のような破産を進めるのに障害たりうる事情がないかという点についてお聞きした上で,障害になりうる事情が存在した場合には,個人再生等をの手続きを検討していくことになります。
2 個人再生について
個人再生のメリットとしては,破産における上記のデメリットをカバーしつつ,債務額を大きくカットできる点にあります,具体的には,要件を満たしている場合には住宅ローンを支払い続けながらそれ以外の債務をカットすることもできますし,借金の原因が,ギャンブルや浪費など非免責事由に該当する行為であったとしても問題なく債務を減額することができます。
他方,個人再生については,あくまでも債務を支払っていくことを前提としていますので,一定の収入が継続して得られる状況でない場合には個人再生の要件を満たさないため,認められません。
上記のとおり,借金問題について,任意整理にて解決することができない場合には,原則としては破産手続により債務をなくすことが一番の再建につながると考えています。
したがって,破産手続きか個人再生手続きのいずれを選択すべきかという点については,原則的には,破産での解決が可能であるかを模索し,破産での解決に支障が生ずるような事情が存在する場合には,個人再生による解決を検討すべきであると考えています。
いずれにせよ,任意整理により解決が困難な状況の場合,債権者から督促状や下手をしたら裁判所から訴状等がいつ届いてもおかしくはない状況であるため,早めに弁護士にご相談ください。
各債務整理手続の特徴について~①任意整理~
各債務整理手続の特徴について~①任意整理~
<ご依頼者様からのご質問>
債務整理に色々な方法があるのは分かったのですが,自分にとってどの方法が良いのかが全く分かりません。まずは,各債務整理手続きのメリットやデメリット,どういった場合に適した債務整理の方法があるのかについて教えてください。
<弁護士からの回答>
借金問題で悩まれている方からのご相談を受け,状況を把握した段階で,弁護士は,自分が考える最適な整理の方法をご提案させていただくのですが,実際にどの方法により,債務整理を行うかについては,ご依頼者様自身で決めていただく必要がございます。そこで,今回から数回にかけて,各債務整理手続きの特徴(メリット・デメリット)をご説明し,どのような方にその債務整理の方法が適しているのかについてご説明させていただきます。今回は,任意整理(特定調停)の特徴についてご説明させていただきます。
任意整理のメリットとしては,裁判所を利用せず,個々の債権者と直接弁護士が交渉するものであることから,財産の換価等の作業も行われないため,破産手続等の法的整理と比較すると短期間で解決できることや,家族に借金をしていることを知られたくないという場合には,家族に知らせることなく債務を整理することが可能です。
また,全ての債権者を対象とすることなく,特定の債権者に対する債務のみ整理するということも可能な点があげられます。具体的には,自動車のローンにおいて,自動車に所有権留保等が設定されている場合には,その債権者に対し受任通知を送ってしまうと,自動車が引き上げられてしまうため,自動車ローンについては,弁護士が入ることなく,従前通り支払い続け,それ以外の債務を整理するということが可能です。
他方,デメリットとしては,法的整理と異なり,債権者の意思に反して債務をゼロにしたり,債務の額を減額することができず,あくまでも債権者との交渉により債権者が合意してくれた内容でしか債務を整理することはできません。過払い金等が発生している場合を除き,債務の総額を減額することはほんとんど難しく,通常,支払回数を従前の状態より長期にし,将来発生する利息をカットすることにより債務整理することがほんとです。そして,毎月の支払回数については,通常,3年間(36回払い)もしくは5年間(60回払い)程度の延長が可能となります。
このような任意整理の特徴からすると,自動車や住宅等財産を有しており,そのような財産を手放したくない人,家族に借金が発覚することを避けたい人,毎月の返済が厳しいが,毎月の返済額が少なくなって利息がなくなれば返していくことができる人については任意整理による解決方法が適していると言えるでしょう。
他方で,借金の総額が多く,支払い期間を延ばしたとしても返済していくことが困難な場合(目安として,借金総額を36回(3年間)で割った金額を毎月支払っていくことができない場合)には,任意整理による解決は困難である可能性が髙いため,破産などの法的整理することを検討した方が良いでしょう。
債務整理のデメリットについて
債務整理のデメリットについて
<ご相談者様からのご相談>
消費者金融数社から少しずつお金を借りており,毎月の返済についてはきついときもありますが,一度も滞納することなく支払っています。弁護士さんに任意整理を依頼すると毎月の支払額が減ると聞いたことがあります。毎月の支払いは問題なくできているのですが,支払額が減ると助かるので,任意整理を依頼しようかと思っています。
<弁護士からの回答>
前回ご説明した4つの債務整理については,基本的に借金で悩まれている方の問題を解決するために有効な手段であることは間違いありません。
しかし,債務整理のいずれの方法を選択したとしても,利用した時点で信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。
今回は,各債務整理手続それぞれのメリットデメリットをご説明する前に,債務整理共通のデメリットである信用情報の登録について弁護士がご説明させていただきます。
お金を借りたいと思う人が新規に貸金業者に対して借り入れの申し込みをした際,貸金業者は,この人にお金を貸しても問題ないかを調べるために,信用情報機関(貸金業者の違い等により,3つの情報機関があります。)に対し,借り入れを申し込んできた人の信用情報を確認することになります。
信用情報とは,入金予定日から支払いが遅れたことがあるか等に加え,自己破産,民事再生の申立てを行ったことがあるか,債務整理の申立てを行ったことがあるかなどの情報(いわゆる「事故情報」といいます。)も掲載されることになります。よく,「破産をするとブラックリストに載ってしまう」等ということを聞いたことがあるかもしれませんが,実際にブラックリストというものがあるわけではなく,上記の信用情報機関に,事故情報が登録されてしまうことを俗にブラックリストに載ってしまうといいます。
事故情報が登録されてしまうと,ヤミ金等の違法が業者を除き通常の貸金業者の場合には,審査が通らずお金を貸してもらえなくなってしまいます。それだけでなく,事故情報が登録されてしまうと,住宅ローン,自動車ローンが組めなくなるだけではなく,新たにクレジットカードが作れなくなったり,携帯電話を新規に購入するときに発生する機種代金の分割払い(割賦払いといいます。)もできなくなってしまいます(ブラックリストについては,一生記録が残るわけではなく,各債務整理手続によって期間は異なりますが,債務整理が終了してから5年~10年間で消滅はします。)。
前回,ご説明した4つの債務整理の方法については,法的整理のみならず,任意整理であっても,手続きを開始したことが,債権者に伝わった時点で,事故情報として登録されてしまいます。
したがって,今後,住宅ローンを組む予定があったり,クレジット―カードを作りたいと考えられている場合には,弁護士に依頼して債務整理を行うことができなくないため,なんとかして,今まで通り,毎月きちんとお支払いしていく必要があります。
もっとも,債務を返済していくために,新たに別のところから借入をしなければならない状況に陥っている場合には,多重債務の状態になっているため,遅かれ早かれ債務整理をしなければならない状況ですので,ブラックリストに載ってしまうことはやむを得ないといえるでしょう。早期に解決するためにも,いち早く弁護士にご相談ください。
債務整理の方法について
債務整理の方法について
<ご相談者様からのご質問>
私は,ヤミ金からも借りていないし,消滅時効になるような債務もなさそうです。この場合には,債務整理により借金問題を解決していただけると聞きました。
債務整理にはどのような方法があるのですか。
<弁護士からの回答>
法律上,返済義務が存在する場合には,債務整理により借金問題を解決することが必要になります。債務整理の方法については,いくつか種類がありどの方法により解決すべきであるかという点については,ご相談者様の情報をお聞きして弁護士が一緒に考えていくことになります。
そこで,今回から数回に分けて債務整理の方法の内容や各手続のメリットやデメリットについてご説明させていただきます。今回は,各債務整理の内容についてご説明させていただきます。
1 任意整理について
債務整理の方法について大きく分けると,裁判所を利用して債務整理と行う「法的整理」と裁判所を利用しないで解決する「任意整理」に分けることができます。
任意整理については,裁判所を利用しないで債務整理を行うことから,弁護士が代理人として債権者と交渉し(本人で交渉すること自体も可能ですが,通常,債権者は本人での交渉には応じてくれない場合が多いです。),①元本額を減らしたり(場合によっては過払金によりお金が返ってきたりします。),②将来の利息をカット(なくす)したり,③毎月の返済額を減らしたりすることにより,借金問題を解決することになります。
2 破産手続
破産手続は,法的整理の方法の1つで,裁判所に対し,すべての債権者に対する債務及び,破産を希望する人の財産状況や生活状況,破産に至るまでの経緯(借金の原因等)等について資料を添付し書面にて申し立てることにより,裁判所(正確には裁判所から選任された管財人と呼ばれる弁護士が行います。)が,破産者の財産を回収,換価(金銭に替えることをいいます)し,その後,裁判所において許可がでれば,債務が免責される(支払う責任を免れる,払わなくてよいとされることをいいます。)という手続きです。別の機会でもご説明いたしますが,多くの債務により返済が困難となっている状況では,第一に破産により債務を整理することを検討することになります。
3 民事再生手続
民事再生手続きは,破産手続と同じ法的整理の方法1つなのですが,破産手続きと異なり,債務の支払い義務をなくす(免責)ことや財産を換価することはなく,債務を一定額まで減額(圧縮)することにより,経済的な再建を図る手続きとなります(破産手続きが財産を換価し,債務をなくすような清算的な要素が強いため,「清算型」と呼ばれるのに対し,民事再生は,清算手続きを行わない法的整理であるため,「再建型」と呼ばれることがあります。)。
破産手続と異なり,財産の換価等は基本的には行われないため,不動産など手放したくない財産がある場合や,破産することができない事情が存在する場合には,民事再生の手続きを選択することになります。
4 特定調停
特定調停とは,裁判所を利用する手続きである点において,法的整理手続の側面を有するものではありますが,「調停」ということから,裁判所を介在して,債権者と,債務総額や支払い方法について協議を行う点では任意整理的な側面を有する手続きになります。
現実的に,特定調停により解決するケースというのはあまり多くはありませんが,任意整理により解決が困難な場合に,裁判所を介在させることにより破産等せずとも解決することができる場合には特定調停を裁判所に申して立てることを検討することになります。
このように,債務整理の方法については上記の4つがあるのですが,それぞれ,メリット,デメリットがあり,かつ,状況によって選択すべきでない方法もございます(各手続のメリットデメリットについては,次回以降にご説明させていただきます。)。したがって,債務整理を検討されておられる場合には,是非一度弁護士に早めにご相談ください。
返済義務の有無について③~過払金について~
返済義務の有無について③~過払金について~
<ご相談者様からのご質問>
よく,テレビのCM等で,過払金により,借金が減額できたり,払いすぎた借金が返ってくるといったことを耳にするのですが,どういった場合に,借金が減額できたり,払いすぎたお金が返ってくるのですか。
<弁護士からの回答>
消費者金融からお金を借りた場合,借りたお金に利息を加えて返済する必要があります。しかし,最高裁判所の判例により,過去の違法な金利を支払っていた期間が一定期間あった場合には,借金の借入額が減額されたり,ときには過払金としてお金が返ってくる場合があります。そこで,本日は,過払金についてご説明させていただきます。
貸金業者遵守すべき利息に関する法律としては,出資法(利息上限が29.2%)と利息制限法(10万円以上100万円未満の場合18%)の2種類があったのですが,従来貸金業者は,利息の上限が高い出資法に基づき,利息制限法を越えた高い金利を取っており,(利息制限法の上限金利と,出資金法の上限金利の間の利息を「グレーゾーン利息」といいます。),利息制限法を越えた利息を払っていたとしても,有効な弁済として(みなし弁済といいます。)返還が認められないとされてきました。
しかし,最高裁平成18年1月13日判決により,利息制限法の上限利息を越えた弁済については有効な弁済とは認められず,借金についても利息制限法の範囲内の適法な利息に引き直した上で,債務の額を計算することになりました。これにより,払いすぎた利息については,元本等に充当されていくことになったため,借金の額が減少したり,場合によっては,既に元本と適法な利息を支払い終えて,消費者金融に払いすぎている状態になっている方もでてきており,その方については,消費者金融から,払いすぎた分を取り戻すことができるようになり,これを過払い金というようになりました。
過払い金に関しては,いつから借入を行っていたか,滞納していた期間がどのくらいあるか等の様々な状況によって認められるのかということや認められる金額についても異なってきますが,消費者金融において,平成20年頃を前後に,違法な金利から適法な金利への切り替えがなされていることから,平成20年よりも前より借り入れを行っている場合には,過払により債務が減少したり,平成20年よりもだいぶ前から借入を行っており,現在も返済を続けているような方の場合には,多くの過払い金が返ってくる可能性もございます。
もっとも,過払金については最後に取引を行ってから,10年間経過してしまうと,時効により過払金の請求もできなくなってしまいます。
したがって,現在,借金に悩んでおられる方だけでなく,過去に債務を完済した人であっても,過払金によりお金が戻ってくることもあるため,なるべく早く,弁護士にご相談ください。
返済義務の有無について②~消滅時効について~
返済義務の有無について②~消滅時効について~
<ご相談者様からのご質問>
若い頃に,消費者金融数社からお金を借りており,少しは返していたのですが,働けない時期があり,返せないままずっと放置していました。
つい先日,その消費者金融から督促の手紙がきました。これは返す必要があるのでしょうか。1つの債権者は11年前くらいに裁判をされており判決が確定しています。また1つの消費者金融からは電話があり,返すように言われたため,「今は返済できないので少し待ってほしい」と回答しています。
<弁護士からの回答>
一度お金を借りた以上,返さなければいけないことは当然のことですが,その義務(債務)が一生残り続けるわけではなく,債権者が一定期間権利(債権)を行使しなかった場合にはその権利は消滅することになります。
本日は,消滅時効にかかっている債務についてご説明させていただきます。
消滅時効とは,債権者が一定期間権利(債権)を行使しなかった場合には,その権利が消滅することをいいます。借金についても,弁済期又は最後に返済した日から一定の期間が経過すると,消滅時効の対象となり,債務者は債務を返済する必要がなくなります。消滅時効の対象となる一定の期間については債権の種類ごとに異なっており,知人,友人など商人でない個人から借り入れた場合には10年間,貸金業者が会社である場合には5年間で消滅時効の対象となります。
時効期間が経過する前に,債権者が裁判で請求したり,債務があることを承認(返済する行為も承認に該当する行為です。)した場合には,時効は中断(リセット)され,再び時効期間が経過するまでは,消滅時効を主張することができません。また,裁判により判決が確定した場合には当初の時効期間が5年であったとしても,判決により確定した債権の時効期間は10年間となります。
したがって,ご相談者様の事例でも1社については,判決が確定してから10年以上経過しているので,消滅時効の対象となります。
ここで注意が必要な点は,消滅時効については,時効期間が経過したことにより,当然に債務が消滅するという効果は発生しないということです。消滅時効により債務が消滅するためには,債務者において消滅時効の援用の意思表示(消滅時効の効果を主張するという意思を表示することです。)を行う必要があり,援用があって初めて債務が消滅することになります。そして,時効期間が経過していたとしても,債務を承認するような行為をしてしまった場合には,消滅時効の効果を主張することができなくなってしまいます。したがって,ご相談者様の事例でも,債権者からの連絡に対し返済の猶予を求めており,これは,債務の承認に該当する行為であるため,承認した債権者に対しては,消滅時効を主張することはできません。
以前に借り入れた債務については,上記のとおり消滅時効により返済する必要がないものもございますので,是非一度弁護士にご相談ください。弁護士により,債権者に対し時効援用通知という書面を送ることにより,債務を支払わなくてすむ場合がございます。その際には,ご相談者様の事例にように債権者からの連絡に応じることなくできるだけ早くご相談にお越しいただくのがよいでしょう。
離婚後の年金について
【相談事例②】
年金分割について教えて欲しいです。夫と離婚をして,2年7か月になります。離婚する際に,年金について何も話さないまま,離婚し,結婚していた期間は9年ですが,その間,第3号被保険者でした。自分が勉強不足で離婚してすぐに合意分割の手続きをしていないことに気づき,慌てて調べると離婚成立した翌日から換算して,2年経過してしまうと請求手続きが出来なくなるとの事でした。そうなった場合,結婚していた間の年金は全く含まれなくなるのでしょうか?
【弁護士からの回答】
結論から申し上げますと,現時点で2年以上経過しているため,年金分割は認められず,婚姻期間中に相手方が支払った厚生年金保険料の分割を受けることができません。年金分割については離婚に関する記事において,詳しくご説明させていただきますが,今回は,離婚に伴う,各種請求権の時間的制限についてご説明させていただきます。
1 年金分割について
年金分割とは,夫婦が婚姻期間中に支払った厚生年金保険料を当事者の合意や審判等で定められた割合で分割する制度のこといい,これにより,会社員,公務員などの第1号被保険者が配偶者である第3号被保険者であっても,第1号被保険者である者が支払っていた厚生年金保険料の一部(原則は半分になります。)を自ら支払ったことになります。
この年金分割を求める権利(「分割請求権」といいます。)については,厚生年金法や厚生年金法施行規則にて,離婚が成立した日から2年間以内に,分割割合を決めて年金事務所に申請をする必要があります(2年以内に調停や審判を申し立てるだけではなく,調停や審判で解決し,その結果をもとに,年金事務所へ申請する必要があるので注意が必要です。)。したがって,2年が経過する前に調停や審判等を申し立てていない以上,ご相談者さまのケースでは年金分割は認められません。
2 財産分与について
財産分与とは,婚姻期間中に夫婦で協力し取得した財産を離婚時に分与割合に応じて分配するものですが,財産分与請求権については,離婚と同時に請求することもできますが,離婚後に請求することもできます。もっとも,離婚後に財産分与を請求する際には期間制限があり,民法768条2項により,離婚後2年以内に家庭裁判所に財産分与調停を申し立てなければ財産分与請求を行うことはできません。
3 慰謝料請求
相手方配偶者が不貞行為を行った場合等,相手方の不法行為が原因で離婚する場合には,慰謝料請求を行うことができます。慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条,710条)の行使ですので,民法724条により「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から」3年間で消滅時効にかかってしまいます。したがって,不貞行為が原因で離婚に至った場合には,離婚という損害を知った時点(離婚が成立した日)から3年間以内に行使する必要があります。この点,不貞行為が発覚した時点と離婚が成立した時期が離れており,不貞行為が発覚してから3年以上経過しているが,離婚日は3年が経過していないという場合には,不貞と離婚との因果関係(原因と結果の関係をいいます。)が問題になってきますが,それについては離婚のコラムにおいて詳しくご説明させていただきます。
4 養育費及び面会交流について
夫婦の間に未成年のお子さんがいる場合には離婚時に親権者を夫婦のどちらかに定めなければいけません。その際,監護していない親(非監護親)は原則として,子の生活費として養育費を支払わなければなりません。他方で非監護親は未成年のお子さんと面会交流できる権利を有しています。
この養育費を請求することができる権利と面会交流を請求できる権利については,財産分与や慰謝料と異なり,2年や3年などの期間制限はなく,原則として,子が成人(20歳)に達するまでの期間であればいつでも請求することができます。もっとも,養育費について今まで相手方から支払ってもらえなかった分について,過去にさかのぼって支払うよう求めたとしても,原則としてさかのぼっての請求は認められず,請求した時点からの分しか認められないことの方が多いため,養育費を請求したい場合には早めに弁護士等に相談された方がよいでしょう。
5 まとめ
このように,離婚にまつわる各種の請求権については,それぞれ期間制限が設けられています。離婚の際にこれらの権利についても解決していれば問題はありませんが,離婚時には何ら対応していない場合には,期間が過ぎてしまうと,期間制限があることを知らなかったとしても請求することができなくなってしまうため,早めに弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。
返済義務の有無について①~ヤミ金について~
返済義務の有無について①~ヤミ金について~
<ご相談者さまからのご質問>
借金が積み重なり,消費者金融からも借り入れができなくなってしまいました。インターネット等で調べたのですが,ヤミ金等からお金を借りた場合には,元金も返さなくてよいと聞きました。もし,そうならヤミ金から借りることも考えているのですが・・・・
<弁護士からの回答>
結論から申し上げますと,ヤミ金から借りるのは絶対にやめておくべきです。当事務所にご相談に来られる方も,いわゆるヤミ金からお金を借りてしまった人は,とても悲痛な面持ちで事務所に来られます。今回は,ご依頼者様がヤミ金にお金を借りてしまった際の弁護士としての解決方法についてご説明させていただきます。
ヤミ金とは,法律上の名称ではないのですが,闇金融の略であり,貸金業としての登録を行っていない貸金業者や,登録していたとしても出資法に違反する高金利を取る業者のことを指します。
こうしたヤミ金業者は,通常の消費者金融と異なり,融資の際に審査などなく,借り入れを希望すれば直ちに貸してくれるのですが,金利が非常に高く,いわゆるトサン(10日間で元金の3割の利息が発生するものです。)などで貸し付けるもので,少しの間ヤミ金からお金を借りただけで,膨大な金額の請求がなされることになります。
それだけでなく,ヤミ金の業者の怖いところは,違法な取りたてがなされるところにあります。携帯電話に執拗に取り立ての電話が鳴り続け,ひどい場合には家まで取り立てに来るなど執拗な取り立てがなされます。
また,一度ヤミ金業者へ借り入れを行い,連絡先等個人情報を提供してしまうと,ヤミ金業者間で顧客の情報の共有がなされ,他のヤミ金業者が借り入れをするよう働きかけてくる等,ヤミ金からの借り入れから逃れられないような状況に陥ってしまう可能性もあります。
もし,ヤミ金からお金を借りてしまい,執拗な取り立てなどで困っている場合にはいち早く弁護士にご相談ください。
出資法では,貸金業者の上限金利を29.2%と定めており,それを超える利息の貸付契約を行った場合には出資法違反として刑罰の対象になります。さらに,上記のトサンの貸付けのように,年109.5%を越える利息の貸付では,そもそも契約自体が公序良俗に反し無効(民法90条)になるだけでなく,貸付金は民法708条の不法原因給付となり,ヤミ金業者から借り入れたお金は,元金も含めて一切返還する必要はありません(返済した金員についても返還請求することが可能になりますが,犯罪を行っている人達からの回収可能性は乏しく,現実的ではありません。)。
したがって,弁護士が代理人に入った場合には,直ちにヤミ金業者に連絡をして,法律上返還する義務がないこと,今後依頼者に対し取り立て行為を行わないことを伝えることにより,ほとんどの場合,ヤミ金業者からの違法な取り立てを止めることができます。仮に,弁護士からの連絡によっても取りたての電話等が止まらない場合には警察にヤミ金業者であることを連絡し,携帯電話の番号等の情報を伝えることにより,電話を止める措置を講じてもらうことも可能です。
このように,ヤミ金からお金を借りてしまったとしても,法律上返還する義務はありません。しかし,ご相談者様のように,返す意思がないのにも関わらず,ヤミ金からお金を借りる行為は,それ自体が詐欺として犯罪行為に該当するだけでなく元金すら一切返済しない場合には,ヤミ金業者からの取り立ては非常に激しいものとなります。警察を通じ携帯を止めたとしても,番号を変え執拗に取り立てがなされる可能性があるため,安易にヤミ金からお金を借り入れることは絶対にやめておいた方がよいでしょう。
借金で苦しまれている方には,法律上適切な解決方法がありますので,是非一度弁護士にご相談ください。
当事務所では、初回無料相談や出張相談もご対応致します。
借金問題の解決方法について
借金問題の解決方法について
<ご相談者様からのご質問>
借金の支払いで困っているのですが,弁護士さんに頼むとどういった形で解決してくれるのですか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明させていただいた通り,借金問題を適切に解決するためには,ご相談者様から様々な事情や資料をご準備いただく必要があります。本日は,借金問題の解決方法についてご説明させていただきます。
1 返済義務の調査
借金問題と聞くと,一般的には破産や任意整理などをすぐイメージされる かもしれませんが,弁護士としてはまず,ご相談者様が支払う必要があると考えられている債務について,本当に支払う必要があるのか(返済義務を有しているのか)について調査していくことになります。
例えば,ご依頼者様が,銀行や消費者金融ではなく,いわゆるトサン(10日間で元金の3割の利息が発生する貸し借りです。)等でお金を貸しているヤミ金等からお金を借りている場合には,法律上,返済義務が認められない場合があります(詳しくは別の機会にご説明させていただきます。)。
その他にも,最後に借り入れや返済をしてから長期間経過している場合には,消滅時効により債務が消滅する場合もあります。また,テレビCMでも頻繁にやっているのでご存知の方も多いとは思いますが,過払金が発生する場合には,債務を返済する義務がなくなるだけでなく,返済していたお金が返還される場合もあります。
このように,お話をお伺いしていくなかで,そもそも返済義務が存在しない可能性がある場合には,返済せずにすむような形で,代理人としてお手伝いさせていただくことになります。具体的な,誰から借りているか,いつから借入と返済を行っているか,最後に返済を行ったのはいつかということを中心にお伺いさせていただくことになります。
2 債務整理について
上記のように,返済義務がそもそも存在するか否かを調査した結果,返済義務が存在する場合には,破産により債務を消滅させたり,民事再生により債務の額を減額したり,任意整理により,毎月の支払額を減少させる等して,ご依頼者様の経済的な再建をお手伝いさせていただくことになります(これを一般的に「債務整理」といいます。)。そして,ご相談者さまから,債務の総額や,毎月の支払額,家庭の収支,所有している資産状況などをお伺いさせていただくことにより,ご相談者様の場合にはどの債務整理の方法が一番適切であるかを判断していくことになります。
また,債務整理を行っていくうえで,重要なのはご依頼様の生活状況等の見直しを行うことが必要です。ケースは様々ではありますが,借り入れの原因として過度の浪費やギャンブルなどが存在する場合には,仮に,今回債務整理が解決したとしても,再び同じように借金を増やしてしまうことになり,弁護士としてお手伝いさせていただいた意味がなくなってしまいます。
したがって,債務整理にてお手伝いさせていただく場合には,差し出がましくはなってしまいますが,客観的に見て生活状況を改善した方がよいと考えられる場合には,毎月の収支等についてもアドバイスさせていただくことがございます。このように,最適な債務整理の方法を模索しつつ,経済的な再建に向けて誠心誠意お手伝いさせていただきますので,是非お気軽にお問い合わせください。