弁護士コラム

2025.06.06

無料求人広告でトラブルが起こったら?「掲載無料」と言われて高額請求されたときの対処法を判例をもとに解説

「無料だから安心して掲載したのに、突然高額な広告費用を請求された」──そんな相談が近年急増しています。

本コラムでは、無料求人広告を巡り広告費用の請求が棄却された代表的な裁判例を解説したうえで、請求書が届く前後で取れる具体的な防御策をまとめました。

請求に疑問を感じたら支払う前に必ず証拠を集め、弁護士へご相談ください。

1. 無料求人広告トラブルの全体像と初動対応

無料求人広告とは、「掲載料ゼロ、採用決定時のみ成果報酬」というモデルが主流です。多くは電話・飛び込み営業で契約が始まり、ウェブ上の管理画面で求人票を公開する仕組みになっていますが、広告料金を巡ってトラブルになるケースも多くなっています。

トラブルの典型的な例としては、①完全無料のはずが採用後に高額の成功報酬を請求される②トライアル終了後に自動で有料プランへ切替わる③成果が出ないまま最低契約期間を理由に費用が発生するというようなケースです。

また、解約・掲載停止の際も、オプトアウトの期限が短い、FAX解約しか認めない、解約書類の受領日を巡って主張が対立するなど、解約手続条項の不備によるトラブルも多くなっています。

このような無料求人広告に関するトラブルが発生したら、必ず請求された費用を支払う前に弁護士に相談をされてください。

関連記事:無料求人広告の「無料」は要注意?被害事例と対策を那珂川の弁護士が解説

2. ケーススタディ:無料求人広告トラブルの代表的な裁判例

2-1. “無料3週間→自動で1年契約”は説明不足で無効

・東京地裁令和元年9月9日判決(平成31年〈ワ〉4528号)

3週間の無料掲載期間が過ぎると、解約手続きをしない限り自動で1年分の広告料(約60万円)が発生する仕組みだったケースです。営業担当は無料期間だけを強調し、有料期間への切替と高額請求の仕組みを口頭で一切説明していませんでした。裁判所は「利用者に本質的な負担を知らせないまま契約させるのは社会常識に反する」として契約全体を公序良俗違反で無効と判断。広告会社の請求を全面的に退けました。

2-2. 求人内容が確定せず“停止条件不成就”で支払義務なし

・東京地裁令和元年11月13日判決(令和元年〈ワ〉7890号)

こちらは「無料掲載→有料移行」モデルですが、広告主が掲載する求人内容を最終確定しないまま請求書だけが送られてきたケースです。裁判所は「求人原稿が確定して初めて契約の効力が発生する」という停止条件を読み取り、条件が成就していない以上、支払い義務は発生しないと判断。広告会社の請求を全面否定しました。

2-3. 有料契約へ自動移行する契約であることを一切理解しておらず、詐欺認定

・那覇簡易裁判所令和3年10月21日判決(令和3年〈ハ〉204号) 

電話営業で「完全無料・期間無制限」と案内され求人広告に申し込んだところ、その後に広告掲載料を請求されたケースです。店舗側は「無料と聞いていた」と支払いを拒否。 裁判所は①営業トークの録音で「ずっと無料」という部分のみを強調していたことが確認できた、②無料期間掲載終了後は自動的に有料掲載に移行するという説明がなく有料契約に自動移行するという契約になっていることを全く認識していなかったという事実より、広告会社側の詐欺を認定し、契約の取り消しを認めました。

特徴的なのは、簡易裁判所が「零細事業者であっても消費者に近い立場であり、情報の非対称性が大きい」と指摘し、契約書よりも営業現場での説明内容を優先した点です。

3. 無料求人広告を利用する際のリスク低減策とは?

3-1. 広告業者からの説明内容は録音・書面両方で記録を取る

那覇簡令和3年10月21日判決では、営業担当が電話で「完全無料」と強調した録音が決め手となり、広告会社側の詐欺が認められ、契約取消の判断がされました。

このように、営業担当者からの説明内容を明確に記録しておくことで証拠として使用できますので、録音・書面等できちんと残しておきましょう。

3-2. 「無料期間後に自動で有料化」を防ぐための事前確認

求人広告の契約前には必ず以下の点を確認しておきましょう。

・無料終了日と課金開始日が書面に明記されているか確認する

・「自動切替を了承します」というような記載がないか

・不明点はその場でメールで問い合わせ、回答も保存する(電話ではなく、文章として残しておいた方が良い)

4. 本コラムのまとめ:認識と違う請求をされたら支払う前に速やかに弁護士に相談を

「無料のはずが高額請求」「説明を受けていない自動更新料金」など、契約内容と食い違う請求書が届いたら、まずは入金を止めてください。一度支払ってしまうと返金交渉は難航しがちです。

弁護士名で内容証明を出すなどの法的対応を行うことで、請求側が減額・取り下げに応じる確率も大幅に上がります。

既に請求を受けてしまった場合は、できるだけ早めに弁護士へご相談ください。

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