弁護士コラム

2018.01.27

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について①~

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について①~

<ご相談者さまからのご質問>

 自分も高齢になってきたので,自分が亡くなったときに自分の残された財産がどのように妻や子ども達に相続されるのかが気がかりです。私には妻がと息子が2人おり,長男はとても粗暴な性格で長年私に対し暴力を振るってきました。このような親に対して不誠実な行為を行う長男には財産を相続させたくはありません。
 どうすればいいでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回は,相続人の欠格事由についてご説明させていただきましたが,今回から3回にわたって相続人の廃除についてご説明させていただきます。相続欠格の場合には法律上当然に相続人たる資格を喪失するものですが,相続人の廃除については被相続人の意思により相続人たる資格をはく奪するものであります。今回は,特定の相続人に相続をさせたくない場合にどのような選択肢が存在するかについてご説明させていただきます。

 特定の相続人に相続をしてほしくない場合に被相続人がとりうる方策としては(相続欠格事由に該当する行為がないことを前提としています。),①相続人に被相続人の死後,相続放棄をしてもらうことを期待する,②自分の財産のすべてを特定の相続人の相続させる(特定の相続人には相続させない)旨の遺言を作成する,③相続人の廃除を行うという3つの方策が考えられます。

 ①の方法については,被相続人の死亡前における相続放棄が認められておりませんので(民法915条1項では,相続放棄は「相続の開始があったことを知った時から」3か月以内にしなければならないと規定しており,死亡前の相続放棄を認めておりません。),いくら相続人が相続放棄すると約束していたとしても,死後,相続放棄をしない場合には,相続されてしまいます。

 ②の方法については,相続人となる予定の人(推定相続人といいます。)が兄弟しかいない場合には,兄弟には遺留分がないため(遺留分については別の機会にご説明いたします。),この方法により相続させたくない人に相続させないことが可能です。

もっとも,推定相続人が遺留分を有する配偶者や子である場合には,特定の相続人に対して一切相続をさせないという遺言を作成したとしても,後日,遺留分減殺請求権を行使されることにより,いくらか財産を回収されてしまう可能性が十分に残ってしまいます(生前に,遺留分の放棄をしてくれている場合には,こうした問題は起きませんが,遺留分の放棄を強制することはできません。
遺留分の放棄については別の機会にご説明させていただきます。)。また,残された相続人の方に遺留分にまつわるトラブルに巻き込んでしまうという側面もあります。

 そこで,被相続人において③相続人の廃除を行うことで,欠格事由に該当する場合と同様に,相続人たる資格を喪失させることができるため,自らの意思で,相続させたくない人から相続人たる資格をはく奪することができます。

 次回は,相続人の廃除に関する要件についてご説明させていただきます。

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