弁護士コラム

2018.01.26

欠格事由と廃除について(1)~欠格事由について~

欠格事由と廃除について(1)~欠格事由について~

 <ご相談者様からのご質問>

 父が先日亡くなったのですが,父の遺言が見つかりました。ところが,遺言の中身を見た母(配偶者)が遺言を破り捨ててしまいました。私自身遺言書の内容がどのようなものであったのかは分からないのですが,父の生前の遺志がわからず,母に対してはとても憤りを感じています。こんなひどいことをした母にも相続する資格はあるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 相続人が誰になるのかという問題について,これまでは法定相続人,すなわち,法律上相続人となることができる親族は誰かということについてご説明させていただきました。今回からは,形式的には法定相続人に該当する者であっても,不誠実な行為をしたことより,法律上相続人となる資格を失う場合や,被相続人や他の相続人の意思に基づき相続人としての資格を失う場合として,欠格事由と相続人の廃除についてご説明させていただきます。今回は,欠格事由として法律上当然に相続人としての資格を失う場合についてご説明いたします。

 相続における欠格事由とは,相続人が当該欠格事由に該当する行為を行った場合,法律上当然に相続人たる地位(資格)を失うものをいいます。
 欠格事由については,民法891条に規定されており,891条の各号に規定されている事由に該当するものは「相続人となることができない」とされています。
 欠格事由の具体的な内容として,「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」(1号),「被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者」(2号,ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは除く),「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」(3号),「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」(4号),「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」(5号)があります。

 上記の欠格事由に該当する者がいる場合には,法律上当然に相続人たる地位を失うことになります。その結果,遺産分割協議については,欠格事由に該当する者を除いて遺産分割協議を行うことが可能です。
 しかし,相続欠格事由に該当する場合であっても,戸籍等で客観的に欠格事由であることが明らかにならないため,実際の遺産分割の手続では,その人が欠格事由に該当することを客観的に証明する必要があります。具体的には,自分が欠格事由に該当していると認めている場合には,その者に欠格者であることの証明書に署名いと実印を捺印してもらい,印鑑証明書を添付して登記手続等を行うことになります。他方,自分が欠格者ではないと主張している場合には,別の機会にもご説明させていただきますが,民事訴訟(相続人の地位不存在確認の訴え)により確定判決を得る必要があります。

 ご相談者様の事例では,母親が被相続人の遺言書を破棄しているため,欠格事由(民法891条5号)に該当するため,ご相談者様の母親には相続権はありません。
 欠格事由については,別の機会にもご説明しますが,代襲相続とも関連する問題であり非常に複雑であるため,是非一度弁護士にご相談ください。

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