弁護士コラム

2017.09.30

勤務先が破産しました!給料や退職金は消えちゃうの?

勤務先が破産しました!給料や退職金は消えちゃうの?

【Aさんの相談】
先日,会社の社長から「経営状況悪化で破産することになった。申し訳ないが今日付けで全員解雇にせざるを得ない。」と言われ,解雇予告手当もなく解雇されました。少し前から給料の遅配があったため心配はしていましたが,突然の解雇と破産の報告に愕然としました。今月分の給料についてはまだもらっていないのですが,会社が破産しても給料はきちんともらえるのでしょうか。また,退職金はどうなるのでしょうか。

1 会社が破産した場合,給料はどうなるの?

会社が破産した場合、従業員の給料に未払い部分があることが一般的です。その際の未払給料が、その後の破産手続きでどのように取り扱われるのかについては,いつ働いた分の給料が未払いなのかによって取り扱いが変わってきます。

①破産手続開始前3か月間の未払分

会社が裁判所に破産を申し立てると、破産開始決定がなされます。
そして、破産手続開始前3か月間の給料については,破産手続が終わるのを待たずに,すぐに支払ってもらえます。この,破産手続によらずに弁済を受けることができる債権を財団債権といいますが,給与は労働者の生活に関わる重要な権利ですので,破産手続においても,直近3か月分の範囲で財団債権として保護されています。ここでいう「破産手続開始前3か月間」というのは,裁判所より破産手続開始決定が出された日より前3か月の間になされた労働の対価のことを意味します(なお,開始決定日は不算入です)。

給料は,労務を提供する度に日々発生しますので,手続開始前3か月間の労働の対価であれば,給与支給日と破産手続開始日の時期的先後関係に関わらず,支払いを受けられます。なお,賞与(ボーナス)に関しては,日々発生するものではなく,支給日に在籍している場合に支払われるものですので,破産手続開始日より3か月前に支給日が来る未払いのものに限り,財団債権として弁済を受けることができます。
したがって、会社が破産申立を行い、破産開始決定がなされた場合は、直近3か月分についてはすぐに請求するようにしましょう。このとき、会社にまだ何らかの財産が残っているのであれば、優先的に支払ってもらえます。

②①以外の未払分

①以外の未払給料分については,破産債権となります。破産債権の場合,弁済を受けるためには,債権額の届出を行って破産手続に参加する必要があり,配当という手続の中で弁済を受けることになります。配当の引き当てになる財産には限りがあり,配当を受ける債権についても優先順位があるため,債権者によっては全く配当が回ってこないこともあります。つまり、ちゃんと破産手続きで決められた手続を踏んで請求し、破産手続きの最終段階にならないと、全く支払いはなされません。なお,給料等の労働債権については,従業員の生活に関わる重要な債権ですので,他の一般債権(例えば売買代金債権や貸金債権等)よりも優先した順位で配当を受けることができる「優先的破産債権」として取り扱われます。

例えば,債権者Aが労働債権として50万円,債権者Bが一般の売掛債権として200万円,債権者Cが一般の売掛債権として300万円有しており,配当財産としては100万円しかない場合,まずは債権者Aに対して配当として50万円が優先的に支払われ,残りの50万円を債権者Aに20万円,債権者Bに30万円配当するという流れになります。

2 退職金はどうなるの?

破産手続終了前に退職して退職金が発生する場合は,退職金請求権(退職手当)を会社に対して請求することができます。この退職手当は,退職前3か月の給料の総額に関する部分は財団債権となり,その他の部分は優先的破産債権として,それぞれ弁済を受けることができます。

3 解雇予告手当はもらえるの?

 使用者側から解雇をする場合,解雇する30日以上前に予告をするか,30日分以上の平均賃金を支払って解雇するかいずれかを支払わなくてはなりません。後者の30日分以上の平均賃金の支払いを,「解雇予告手当」と言います。通常は、解雇予告手当をきっちり支払ってもらってから退職するのですが、破産の場合には支払ってもらえていないままに退職になることが多いはずです。

 本件事例のAさんは,解雇予告手当をもらっていませんが,Aさんは法律上,会社に対して解雇予告手当の支払いを請求できる立場にあります。なお,解雇予告手当支払請求権は,労働の対価としての性質ではないため,給料とは言い難いですが,雇用関係に基づいて生じた債権であるため,優先的破産債権には該当します。
 よって,Aさんは,破産債権として届出をすることで優先的破産債権として配当を得ることができます。つまり、すぐには支払ってもらえず、破産手続きに沿って、最終的に配当という形で受け取ることになります。
(なお,解雇予告手当については,裁判所によっては財団債権として取り扱ってくれるところもあるようですので,各地方裁判所に運用を確認されることをお勧めします。)

4 労働債権の弁済許可制度とは?

 労働者が,給料や退職金などの未払労働債権について,弁済を受けなければ生活の維持を図るのに困難を生じる恐れがあるときは,他の債権者の利益を害さない限りで,破産管財人の判断により,他の債権よりも早く配当を行ってくれることがあります。これを労働債権の弁済許可制度と言います。
 そのため,生活困難で未払い給与等の支払いを緊急に必要とする場合には,当該事情を破産管財人に対して連絡しましょう。場合によっては先払いを受けられる可能性があります。

5 まとめ

 以上の通り,労働債権については,その発生時期によって優先的破産債権となるか財団債権になるかの取り扱いが変わってきます。いずれになるかによって,支払いを受けられるタイミングや金額が大きく変わるものの,このあたりの判断は一般の方には難しいと思われますので,破産手続に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所