弁護士コラム

2017.09.22

破産したら財産は全て売り払わないといけないの?残しておける財産とは?

破産したら財産は全て売り払わないといけないの?残しておける財産とは?

破産を迷われている方には,「破産したら何もかも売却して借金返済に充てなければならず,無一文になってしまうんじゃないか」と不安に思われている方がいるかもしれません。しかし,破産した場合,必ずしも全ての財産が債務の引き当てになるわけではなく,手元に残しておける財産もあります(これを自由財産と言います)。

また,本来は,弁済原資に充てなければならない財産であっても,自由財産の範囲を拡張する手続によって,一定の場合には,当該財産を弁済原資から外せる可能性もあります。
そこで,今回は,債務の引き当てになる財産の範囲とはどのようなものであるのか,また,原則として引き当ての対象になる場合でも,その対象から外して手元に残しておける場合はどのような場合かについてお話ししようと思います。

1 弁済原資になる財産(破産財団)とは?

破産手続において,債務の引き当てになる財産を「破産財団」といいます。個々の財産が破産財団に該当する場合は,原則として換価し,債務の弁済に充てなければなりません。それでは,どのような財産が破産財団に含まれるのでしょうか?

⑴ 破産財団の範囲

まず,債務者が保有する財産のうち,①差押禁止財産と②99万円以下の現金以外の財産については,原則として全て破産財団に含まれ,財産の所在地は国内に限らず,外国にある財産も含まれます。なお,①の差押禁止財産とは,例えば給料債権や年金等の4分の3相当額や,生活に欠くことができない家財道具等があり,民事執行135条,152条等に規定されています。

⑵ 基準時

では,いつの時点で保有している財産が破産財団に含まれるのでしょうか。破産手続は,申立て→破産手続開始決定→(財産があれば)換価・配当という流れで進んでいきますので,いつの時点で保有している財産が破産財団に含まれるのかが問題になります。
これについて,破産法は,破産手続開始時を基準時としています。そのため,破産手続開始後に取得した財産については引き当てにならず,自由に使うことができます。例えば,破産手続開始後に取得した給料は一切債務の弁済に充てる必要はありませんし,手続開始後に相続が生じた場合は,相続で得た遺産も一切債務の弁済に充てる必要はありません。

但し,破産手続開始後に取得する財産であっても,その取得のきっかけとなる原因行為が破産手続開始前に生じている場合は,当該財産は破産財団に含まれるため注意が必要です。例えば,破産前に交通事故に遭い,加害者と慰謝料の示談交渉をしている間に破産手続開始決定が出され,その後,加害者から慰謝料の支払いを現実に受けた場合は,当該慰謝料は,破産手続開始前に生じた交通事故を原因とするものであるため,破産財団に該当し,弁済原資に充てられることになってしまいます。
なお,破産手続開始時とは,裁判所が破産手続開始決定を出す時期のことを言い,破産手続申立後,裁判所が破産原因を審査し,破産相当と判断した時点で出されます(早ければ申立後数日で出ることもあります。)

2 破産財団から外れる財産(自由財産)とは?

上記の通り,破産手続開始決定時に保有する財産については,差押禁止財産や,99万円以下の現金でない限り,法律上は原則として破産財団に該当し,弁済原資に充てられる建前になっています。しかし,実際は,差押禁止財産や99万円以下の現金以外であっても,債務の引き当てにならない財産(自由財産)として認める運用をしていることもあり,その運用基準については,各裁判所によって異なるようです。
そこで,以下,某裁判所で採用されている自由財産の判断基準をご紹介いたします。

某裁判所では,差押禁止財産及び99万円以下の現金(これらは,法律で自由財産として認められているため,「法定自由財産」といいます。)以外にも,以下に該当する財産については,換価せずに,自由財産として手元に残しておけるという運用をしているようです。なお,以下の財産を自由財産に組み込むかどうかは,最終的に破産管財人の意見を聞いて決めることになります。

①20万円以下の預貯金
②生命保険解約返戻金(但し,見込額が20万円以下に限る)
③処分見込額合計が20万円以下の自動車
(初年度登録5年を経過したものについては,外車又は排気量2500ccを超える物でない場合には,処分見込額を0円とする運用とする)
④居住用家屋の敷金返還請求権
⑤電話加入権
⑥将来の退職金支給見込額の8分の7相当額
(但し,8分の1相当額が20万円以下である場合には,当該退職金債権の全額)
⑦家財道具

3 自由財産の拡張申立手続

 自由財産として認められるのは,法定自由財産(99万円以下の現金及び差押禁止財産)と各裁判所で自由財産として認める運用をしている財産(ex某裁判所では前述の①~⑦)ですので,それ以外の財産に関しては原則として換価して配当に回さなければなりません。
しかし,破産する人の中には,例えば,親の介護等で車がないと生活ができない人や,扶養家族が多く,手元に残しておける費用が99万円以下では到底生活が成り立たない人もいます。そこで,破産法は,破産者の生活の状況や,破産手続開始時に保有していた財産の種類,金額,破産者が収入を得る見込みやその他の事情を考慮して,自由財産の範囲を拡張できるという手続きを定めています。この場合も,自由財産として認めるか否かについては,管財人の意見を聞いて決定されますが,自由財産として拡張が認められた場合は,換価を免れ,手元に残しておくことができます。

4 まとめ

 以上の通り,破産することになっても,全てを失うわけではなく,法定自由財産については自由に処分できますし,それ以外の一定の財産についても,各裁判所の運用によっては,自由財産として残しておける可能性があります。
ですので,「破産したいけれども,どうしてもこの財産を残しておきたいから破産ができない」等のお悩みをお持ちの方は,まずは自由財産として残せるかどうかについて弁護士にご相談されることをお勧めします。また,破産財団に該当する財産を自由財産として残すためには,当該財産を自由財産として扱う必要性や具体的事情を裁判所に上申する必要があるため,破産手続に詳しい弁護士に破産手続を依頼されることをお勧めします。

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