弁護士コラム

2019.07.22

【離婚問題】離婚後に受けられる各種補助について

離婚を考えていても、特に子供がいると金銭的な心配からなかなか離婚に踏み切れない方は数多くいらっしゃいます。離婚の際には財産分与、毎月の養育費、場合によっては慰謝料を得ることもありますが、相手が本当に支払ってくれるか不安という場合も多いでしょう。

今回は、離婚後に受けられる公的な補助についてご説明します。なお、紹介する金額等はいずれも令和元年6月現在のものです。

1.児童扶養手当

児童扶養手当は、父母の離婚などにより、父又は母と生計を同じくしていない児童のいるひとり親家庭等の保護者に支給される手当で、ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進を通して児童の福祉の増進を図ることを目的とした制度です。

(1) 対象者
対象年齢 18歳に到達した日以降の最初の年度末まで
該当する児童
  • 父母が離婚(事実婚を含む)を解消している
  • 父又は母が死亡した
  • 父又は母が法令に定める重度の障害の状態にある(年金障がい等級1級程度)
  • 父又は母の生死が不明
  • 父又は母に1年以上遺棄されている
  • 父又は母が法令により1年以上拘禁されている
  • 父又は母が裁判所からDV保護命令を受けている
  • 母が未婚のまま子供を産んだ場合
支給対象外
  • 児童の父又は母が婚姻の届出をしていなくても事実上の婚姻関係(内縁など)にある
  • 申請者又は児童が日本国内に住所を有しない
  • 児童が里親に委託されている
  • 児童が児童福祉施設等に入所している
  • 公的年金給付等を受給しており、その額が児童扶養手当の額と同額以上である
  • 申請者及び扶養義務者などに定められた額以上の所得があるとき
(2) 支給額
子供の人数 全部支給 一部支給
1人 42,910円 10,120円から42,900円(所得に応じて決定)
2人 53,050円 15,190円から53,030円(所得に応じて決定)
3人 59,130円 18,230円から59,100円(所得に応じて決定)
4人以上 以降、1人増えるごとに第3子の加算額が加算

2.児童手当

児童手当は、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長を図ることを目的とした制度です。

子供を養育している人に対し手当を支給するものなので、離婚した家庭に限られず、要件を充たせば受けられます。

(1) 対象者

15歳到達後の最初の3月31日までの間にある児童を養育する者

(2) 支給額
対象となる児童の年齢等 児童1人あたりの月額
3歳未満(3歳の誕生日の属する月まで) 15,000円
3歳~小学生 第1子、第2子 10,000円
第3子以降* 15,000円
中学生 10,000円
所得制限限度額以上の場合 5,000円

*「第3子以降」とは、18歳の誕生日後の最初の331日までの養育している児童のうち、3番目以降の児童をいいます。

(3) 所得制限限度額

世帯の合算所得ではなく、受給資格者と配偶者それぞれ単独の所得で判定し、所得の高い方が受給資格者となります。

控除額は様々なものがあるため、収入額は控除前の額としておおよその額となります。

扶養親族等の人数 所得制限限度額 収入額の目安(控除前)
0人 622万円 833.3万円
1人 660万円 875.6万円
2人 698万円 917.8万円
3人 736万円 960.0万円
4人 774万円 1002.1万円
5人 812万円 1042.1万円

 

3 特別児童扶養手当・障害児福祉手当

精神又は身体が障がいの状態にある20歳未満の児童について、児童の福祉の増進を図ることを目的として、手当を支給する制度です。

・支給額
重度障がい児(1級) 1人につき 52,200円
中度障がい児(2級) 1人につき 34,770円

 

4 生活保護制度

生活保護は、資産や能力等全てを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保護し、その自立を助長する制度です。

・扶助内容
生活を営む上で生じる費用 扶助の種類 支給内容
日常生活に必要な費用
(食費、被服費、光熱費等)
生活扶助 基準額は、①食費等の個人的費用②光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。特定の世帯には加算(母子加算等)
アパート等の家賃 住宅扶助 定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学用品等 教育扶助 定められた基準額を支給
医療サービスの費用 医療扶助 費用は直接医療機関へ支払い(本人負担なし)
出産費用 出産扶助 定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の習得等にかかる費用 生業扶助 定められた範囲内で実費を支給
葬祭費用 葬祭扶助 定められた範囲内で実費を支給

 

5 母子(父子)福祉資金貸付金

母子家庭の母等が、就労や児童の就学などで資金が必要となったときに、都道府県、指定都市又は中核市から無利子又は低金利で貸付を受けられる資金です。

母子(父子)家庭の母等の経済的自立を支援するとともに生活意欲を促進し、その扶養している児童の福祉を増進することを目的としています。貸付資金の種類により、無利子の条件が異なりますので、事前に確認する必要があります。

なお、文字通り本制度は貸し付けを行う制度ですので、返済の必要があります。

6 母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金

母子家庭の母又は父子家庭の父の主体的な能力開発の取組みを支援することを目的とした制度です。

雇用保険の教育訓練給付の受給資格を有していない人が対象教育訓練を受講し、修了した場合、経費の60%(上限20万円、12000円を超えない場合は支給対象外)が支給されます。

支給については、受講前に都道府県等から講座の指定を受ける必要があります。

(1) 対象者

対象者は、母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養し、以下の要件を全て満たすことが必要です。
・児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
・雇用保険法による教育訓練給付の受給資格を有していないこと
・就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、当該教育訓練が適職に就くために必要であると認められること

(2) 対象となる講座

・雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座
・その他、上記に準じ都道府県等の長が地域の実情に応じて対象とする講座

 

7 母子(父子)家庭高等職業訓練促進給付金

母子家庭の母又は父子家庭の父が看護師や介護福祉士等の資格取得のため、1年以上養成機関で修業する場合に、修業期間中の生活の負担軽減のため、高等職業訓練促進給付金が支給されます。

また、入学時の負担軽減のために、高等職業訓練修了支援給付金が支給されます。

(1) 対象者

対象者は、母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養し、以下の要件を全て満たすことが必要です。

・児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
・養成機関において1年以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれること
・仕事又は育児と修業の両立が困難であること

(2) 支給額

〇高等職業訓練促進給付金
【支給額】            月額100,000円(市町村民税非課税世帯)
                 月額70,500円(市町村民税課税世帯)
【支給期間】           修業期間の全期間(上限3年)

〇高等職業訓練修了支援給付金
【支給額】            50,000円(市町村民税非課税世帯)
                 25,000円(市町村民税課税世帯)
【支給期間】           修了後に支給

(3) 対象となる資格

対象となる資格は、就職の際に有利となるものであって、かつ法令の定めにより養成機関において1年以上のカリキュラムを修業することが必要とされている者について都道府県等の長が指定したものです。

例として、看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、理学療法士などがあります。

 

8 まとめ

以上のように、離婚後に子供を養育しながら受けられる公的扶助制度には様々なものがあります。離婚後に手当を受けながら生活することができ、また、たとえ婚姻中に仕事をしていなくても、離婚後に給付金を受けながら資格を取得すれば、安定した職業に就くことも可能です。

本当は離婚したいにもかかわらず、金銭的に不安という点だけで何年も我慢してしまうのは、ご本人にもお子様のためにも良い環境とは言えないかもしれません。

弁護士や最寄りの役所等に相談しながら、前向きに新しい生活についても考えてみることをお勧めします。

 

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