弁護士コラム

2019.05.16

同性間のパートナーシップ証明について~LGBTQに関する行政の取り組み~

人が人を好きになる理由はさまざまで、また、その対象もさまざまであって、それがこの世の中の興味深いところであると個人的には思うのです。

しかしながら、世の中は、何らかの事情で時として人を好きであることに消極的な姿勢をみせることがあります。例えば同性同士が婚姻をしようとする場合にも法律上は積極的にこれを認める決まりはありません。

心理・社会的性別(gender)について考えると、その内容がとても難しいことに気付きます。どのような社会がよいのか考えても一定の結論にたどり着けないのがこの問題の難しいところです。

1 生物学的性とジェンダーに関して

ジェンダーという言葉をよく聞きますが、果たして何を指しているものなのでしょう。
もしかするとご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ジェンダーは後天的に獲得するに至った性であって、先天的に持つ性別とは異なるものと定義されています。
出生後私たちは発達の過程でジェンダーを獲得します。発達過程において生物学的な性とジェンダーが一致しない場合と、する場合があります。

最近ではその一致は当たり前のことではないという考えのもとLGBTQやLGBTX等の概念が普及しています。
そして「ダイバーシティ」の枠組みの中において多様性の推進がなされている今日、同性同士のパートナーシップを公に認める取り組みも実際になされています。

2019年5月現在において、この取り組みは渋谷区に限定されていますが、今後政令市や中核市などの主要都市が導入をはじめると全国に広がってゆくことが想定されます。

2 渋谷区パートナーシップ証明書

今回ご紹介するのは、渋谷区パートナーシップ証明書制度です。
パートナーシップ証明書とは、法律上の婚姻とは異なるものとして、条例において、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二者間の社会生活関係を「パートナーシップ」と定義し、二人がパートナーシップの関係にあることを確認して証明するものです。

このパートナーシップ証明書は、同性同士のパートナーシップを前提としており、戸籍上の異性間で婚姻以外のパートナーシップを望む場合は取得できないという問題点はあるのですが、これまで後天的な性に関して閉鎖的であった我が国では先進的な制度といえるでしょう。

渋谷区では、戸籍上の性が同性同士のパートナーシップであっても婚姻に準じた取扱いがなされており、できるだけ異性間の場合と同性間の場合と変わらないように取り扱われるとのことです。

前向きに、パートナーシップに関してお考えの方は、以下簡単に概要を説明しますので、ご覧になっていただければ幸いです。

3 実際にパートナーシップ証明を得るには

実際の手続の概要は条例第10条に定められています(※渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例)。

第4条 区は、次に掲げる事項が実現し、かつ、維持されるように、性的少数者の人権を尊重する社会を推進する。
 (1) 性的少数者に対する社会的な偏見及び差別をなくし、性的少数者が、個人として尊重されること。
 (2) 性的少数者が、社会的偏見及び差別意識にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮し、自らの意思と責任により多様な生き方を選択できること。
 (3) 学校教育、生涯学習その他の教育の場において、性的少数者に対する理解を深め、当事者に対する具体的な対応を行うなどの取組がされること。
 (4) 国際社会及び国内における性的少数者に対する理解を深めるための取組を積極的に理解し、推進すること。

第10条 区長は、第4条に規定する理念に基づき、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップに関する証明(以下「パートナーシップ証明」という。)をすることができる。
2 区長は、前項のパートナーシップ証明を行う場 合は、次の各号に掲げる事項を確認するものと する。ただし、区長が特に理由があると認めるときは、この限りでない。
 (1) 当事者双方が、相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律(平成11年法律 第150号)第2条第3号に規定する任意後見受任者の一人とする任意後見契約に係る公正証書を作成し、かつ、登記を行っていること。
 (2) 共同生活を営むに当たり、当事者間において、区規則で定める事項についての合意契約が公正証書により交わされていること
 (3) 前項に定めるもののほか、パートナーシップ証明の申請手続その他必要な事項は、区規則で定める。

第11条 区民及び事業者は、その社会活動の中で、区が行うパートナーシップ証明を最大限配慮しなければならない。
2 区内の公共的団体等の事業所及び事務所は、 業務の遂行に当たっては、区が行うパートナーシップ証明を十分に尊重し、公平かつ適切な対応をしなければならない。

また、取得手続きに入る前に以下の要件を満たしている必要があります。(渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例施行規則3条1号~4号)

① 渋谷区に居住し、かつ、住民登録を行っていること。
② 20歳以上であること。
③ 配偶者がいないこと及び相手方当事者以外の者とのパートナーシップがないこと。
④ 近親者でないこと

以上の要件の下、実際にパートナーシップ証明書を取得する手続きに移行します。

このように、パートナーシップ証明書を取得する基本的な流れは、①任意後見契約に係る公正証書を作成して②登記をし、③合意契約を公正証書で作成し、申請するという流れになるようです。

しかしながら、この手続きには、条例で合意するように定められている事項に合意していること等の要件があり、その上で、公正証書という公証人が作成する公文書を作成しなければなりません。

そこで、パートナーシップ証明書の取得をご希望の方は、パートナーシップ証明書関係の事務を取り扱う渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>にご連絡の上、法律事務所に依頼し、公正証書の案を練るというのが一般的な流れであると思われます。

4 まとめ

さて、今回はパートナーシップの証明についてご説明しました。いまはまだ、渋谷区のみの取り組みですが、今後拡大してゆけば各自治体で取り組むものとなってゆくかもしれません。
このように多様な在り方をみとめてゆくことで、全ての人にとって生活しやすい社会が形成されることへの期待がなされています。

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