弁護士コラム

2017.11.08

小規模個人再生手続とは?

小規模個人再生手続とは?

【Aさんの相談】
借金を繰り返した結果、現在負債額が約500万円に膨れ上がり、毎月10万近く弁済に充てていますが元本は一向に減りません。各債権者と交渉して任意整理を進めていましたが、全く応じてくれない債権者がいて行き詰まっています。毎月給与は安定して入っているため、長期間の弁済猶予をもらえれば返済できるのではないか考えているのですが、もう破産するしかないのでしょうか。破産以外で何か債務整理の方法があれば教えて下さい。

 借金で苦しんでいるものの、色々な事情で「破産だけは避けたい」と考えられる方は多いと思います。無収入で返済の見込みが全く立たなければ破産を検討せざるを得ないでしょうが、Aさんのように安定した収入がある方には、その他の債務整理の方法である個人再生手続について検討する余地があります。そこで今回は、当該手続について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 小規模個人再生手続とは?

 小規模個人再生手続とは、将来において反復継続的に収入の見込みがある場合に、今後の収入を原資に3~5年以内での返済計画を立て、裁判所が許可した返済計画に基づき弁済を継続すれば、残りの債務は減免されるという手続です。破産と異なり免責の制度はないため、負債がゼロになることはありませんが、原則として最低弁済額の返済ができれば残りの債務は免除されるため、大幅な債務の圧縮(元本カット)が可能となります。また、裁判所を通じた法的手続であるため、任意整理の場合と異なり、返済計画に反対する債権者がいても、再生計画が適法に可決・認可されれば、反対債権者も強制的に返済計画に組み込まれることになります。
 以上の通り、個人再生手続きは、任意整理や破産にはない大きなメリットがある制度といえます。

2 要件は?

 個人再生手続を利用する場合は、①債務総額が5000万円以下であること、②債務者は個人であり、将来において反復継続的に収入を得る見込みがあることの2つの要件が必要になります。なお、①の債務総額5000万円には、住宅ローンの負債や抵当債務等の被担保債権額は含まれません。
 また、②については、収入が安定していれば問題がないため、年金や生活保護でも問題ありません。また、パートやアルバイトでも問題ありません。
 なお、再生手続は、破産する前段階の手続ですので、破産のおそれがあるか又は事業の継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済できない状態にあるということは手制度利用の前提となります。

3 支払総額はどのくらいになるの?

 個人再生手続を利用した場合、大幅な債務の圧縮が可能ですが、最低弁済基準額は以下の通り決まっています。

債務総額 最低弁済額
3000万円超~5000万円いか 債務総額の10分の1以上の額
3000万円以下

①債務総額の5分の1

or

②100万円(※①or②のいずれか多い額の方)

 たとえば600万円の負債がある人は、最低弁済額は120万円となりますので、120万円を3年以内で返済する計画を立てる形になります。

4 再生計画の認可・遂行

 再生手続によって債務の減免を実現させるためには、再生計画案を裁判所に提出し、債権者に可決され、裁判所の認可を受ける必要があります。
 再生計画案が可決される要件としては、①議決権者の頭数による過半数の賛成と②議決権総額の2分の1以上の議決権を有する債権者の賛成の2要件を満たす必要があります。
 たとえば、債権者がA,B,C,Dの4人おり、それぞれ、100万、100万、100万、400万円の債権を有しているとします。ここで、誰か2人が再生計画案に反対すると、過半数の賛成が得られないため、再生計画案は否決となります。
 また、A,B、Cは賛成しても、Dが反対している場合は、議決権総額(今回だと700万)の2分の1以上を有する債権者の反対があることになり、この場合も否決となります。
 なお、再生計画が可決され、認可が下りると、再生計画案通りに権利変更が生じ、債務者は再生計画通りに分割弁済を遂行すれば、残りの債務は免除となります。しかし、弁済が滞ったりすると、再生計画の認可が取り消されてしまいますので、返済計画については必ず実現できる内容で組み立てる必要があります。

5 再生計画の終了

 小規模個人再生手続は、再生計画の認可の決定が確定すると、その時点で手続は当然に終結します。

6 最後に

 再生手続は、任意整理手続と比べると、元本カットが受けられる点で債務の大幅な減免が可能となり、メリットの大きい制度です。しかし一方で、一度決まった再生計画については、数年間かけて責任をもって履行しなければならないため、確実に弁済できる計画を立てる必要があります。再生手続を利用される方の中には、途中で返済計画通りに返済ができなくなり、最終的に破産手続に移行される方も少なくありません。また、再生手続で申立てを行ったけれども、再生計画の認可が下りず、途中で破産手続に移行するケースもあります。その場合は、手続が二度手間になり、余計な費用もかかってしまうため、手続き選択をする上では、破産手続に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

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