弁護士コラム

2017.09.27

弁護士が教える民事訴訟の流れ

弁護士が教える民事訴訟の流れ

債権を回収するための最終手段が民事訴訟になります。民事訴訟は,訴額(簡単に言うと原告が請求する債権の額になります。)が140万円以下であれば基本的には簡易裁判所に,140万円を超える場合は地方裁判所に対して訴えを提起することになります。

訴訟は,お互いの法的主張を対立させる場所ですので,訴訟を代理することは,基本的に弁護士しか認められていません。
もっとも,民事訴訟制度は紛争の当事者が弁護士を付けずに訴訟を提起することも予定しています。そこで,今回は,民事訴訟の大まかな流れについてご説明したいと思います。

1 民事訴訟の手続き

(1) 訴えの提起-原告による訴状の提出

民事訴訟の第一審手続は,原告が管轄の裁判所に対して訴状を提出することによって開始されます。
訴状には,
①原告と被告の氏名,住所
②請求の趣旨(原告が裁判所にどのような判決を求めているのか)
③請求の原因(どのような理由で判決を求めるのか)
などを記載することになります。

なお,被告に送達する関係上,原本のほかに副本が必要です。
また,訴え提起に際しては,所定の裁判所に対する手数料(収入印紙で納付)や郵券も一緒に提出する必要があります。

(2) 裁判所による第1回口頭弁論期日の指定及び呼び出し

裁判所に訴状が提出されると,裁判所は訴状審査を行います。訴状審査とは,訴状に先程お話しした①~③の記載がない場合や印紙が貼られていない場合などの形式的不備について行います。訴状に不備がある場合,裁判長は,原告に対し必要な補正を促し,あるいは相当の期間を定めて補正命令を発します。この補正に応じない場合には,訴状が却下されますので注意して下さい。

訴状に不備がない場合や補正がなされた場合,口頭弁論期日を指定し,訴状と同時に期日の呼出状,訴状と一緒に提出された証拠書類,答弁書催告状を被告に送達することになります。口頭弁論とは,公開の法廷において,定数の裁判官及び書記官が出席し,直接,当事者双方の口頭による弁論を聴く手続を言い,それが行われる日を口頭弁論期日と言います。
口頭弁論期日を指定するにあたっては,前もって原告となるべき当事者に対して,担当裁判所書記官から期日調整の連絡があり,出席できるように調整されますのでご安心ください。なお,この時点では被告の側に予定を聴くことはありません。

(3) 被告による答弁書の提出

被告は,訴状が送達され第1回口頭弁論期日の指定を受けた場合,訴状に対して反論をする必要があります。被告の反論は,答弁書という書面を提出する方法によって行われます。

答弁書においては,原告の請求を認めるかどうか,訴状に記載された事実を認めるか認めないか,それとも知らないかなどを記載することになります。
答弁書は,通常,第1回口頭弁論期日の1週間ほど前に裁判所を通して,原告の元に届けられます。

(4) 第1回口頭弁論期日

 さて,ここまでやってやっと第1回口頭弁論期日になります。
もっとも,第1回口頭弁論期日は,被告の都合を聞かずに設定されることになりますので,被告が欠席する場合が多いです。そのため,第1回の口頭弁論は,裁判官が「陳述は訴状通りで良いか」を原告に確認し,次回の日程を決めるだけで終わってしまうこともよくあります。

ただ,被告が欠席しただけでなく,答弁書も提出しない場合,被告には争う意思がないものとして,原告の請求どおりの判決がなされます。
したがって,もし自分が訴えられたのであれば,どうしても第1回口頭弁論期日に行けなくても,最低でも,原告の訴状における請求の趣旨についての答弁を述べる答弁書を提出しておく必要があるでしょう。

(5) 第1回口頭弁論期日以降の審理

第1回の口頭弁論期日以降は,第2回,第3回と期日が進んでいくことになります。また,何が争点となっているか分からない複雑な事件であれば,当事者の主張や証拠を整理するために,弁論準備手続等の争点整理手続が行われることもあります。

この期日間では,当事者は,それぞれ主張を記載した準備書面やその主張を裏付ける証拠を提出して立証をしていくことになります。
各当事者が提出した主張やそれを裏付ける証拠を整理して,裁判所が既に提出された主張又は証拠では不十分であると判断した場合,裁判所は各当事者に釈明を求める場合もあります。

(6) 証拠調べ手続

裁判所は,各当事者が提出した証拠を,証拠調べという手続によって確認・調査します。証拠には文書などを証拠方法とする書証と当事者,証人などを証拠方法とする人証があります。
裁判所は,まず,書証を取り調べていきます。裁判所は,書証によって立証出来ていない事実を踏まえて争点整理を行います。

当事者は,整理された争点について人証によって立証することになります。人証の申出が認められると,当事者本人や証人について尋問手続が行われることになります。尋問手続を,簡単に言いますと,ドラマなどでよく見る弁護士が法廷で質問をしている場面がこれに当たります。

(7) 結審・判決

裁判所は,各当事者の主張,反論が尽くされ,裁判所が判決を出すのに熟したと判断すると,弁論を終結します。これを結審と言います。
そして,この際には,判決言渡期日が指定されます。判決言渡期日は,結審の日から2か月以内に指定されることになっています。

この判決言渡期日に裁判官が判決を言い渡します。判決には,原告の請求をすべて認める全部認容,原告の請求を一部認める一部認容,原告の請求を全て認めない全部棄却があります。これらの判決が送付され,2週間の間にお互いがその判決に不服を申立てなければ,判決が確定することになります。つまり,もはやその判決に不服を申し立てることができなくなるのです。
一方,第一審判決に対して2週間以内に不服を申し立てた場合,訴訟手続は,第二審(控訴審)に引き継がれることになります。この第一審裁判所の判決に対する不服申立てを控訴と言います。

(8) 控訴

 第一審が地方裁判所であった場合には,高等裁判所に控訴することができます。(第一審が簡易裁判所であれば,控訴は地方裁判所にします。)
 控訴審では,また一から当事者の主張立証をさせるのではなく,第一審の判決の中で不服がある部分のみ審理を行います。そのため,第一審と同じ主張や立証をしたとしても,控訴審ではほとんど審理されることはなく,第一審と同じ判決がなされるのが通常です。

そのような主張や立証をした場合には,控訴審の第1回期日で審理が終結するのが普通です。
第一審と異なる主張や立証がなされた場合や第一審の審理に間違いがある可能性があると控訴審の裁判所が判断した場合には,再度,証拠調べ等が行われる場合があります。

2 まとめ

 先程も申しましたように,民事訴訟では,必ずしも弁護士を代理人とする必要はありません。ただ,裁判においてはお互いの法的主張が対立することになります。そのため,お互いが弁護士を就けていない状況であればまだしも,片方に弁護士が就くとどうしても知識と経験の面で大きく差をつけられてしまいます。弁護士を代理人に就ければ,判決と言う手段だけでなく和解など紛争そのものを有利に進めことが可能になります。弁護士に依頼すると,多少お金はかかってしまいますが弁護士に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。

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