弁護士コラム

2017.09.18

投稿者が分からない!記事を表示しているサイトの管理者に記事の削除を請求できる?

投稿者が分からない!記事を表示しているサイトの管理者に記事の削除を請求できる?

インターネット上に自分に対する悪口やネガティブ情報が書かれていた!そんな状況に置かれた場合,1日でも早くその記事を削除したいですよね。

しかし,投稿者が誰か分からず,その特定に時間がかかってしまったり,投稿者が分かっても投稿している人が悪意をもって投稿している場合は,なかなか記事の削除に応じてくれないですよね。

そんな場合,投稿者ではなく,その記事を表示しているサイトの管理者に,記事の削除を求めることはできるのでしょうか。

そこで,今回は,サイト管理者に対する削除依頼をテーマにお話しようと思います。

1 サイト管理者の特定

まず,サイト管理者が誰かが分からなければ,削除の依頼先が分からないため,まずはサイト管理者の情報を調査する必要があります。サイト管理者の情報については,サイト内の表示からすぐに分かる場合もありますし,サイト内からでは分からない場合もあります。

⑴ 表示されている場合

サイトのトップページや一番下の部分に「会社概要」「運営会社」「お問い合わせ」などのリンクが張られていたり,運営会社の名前や所在地が書かれていることがあります。
そのような記載がある場合は,そこに記載されている運営会社等に削除を依頼することとなります。

⑵ 表示がない場合

サイト管理者情報について表示がない場合は,サイトのURLやドメイン名から,サイト管理者の情報に辿りつける場合もあります。これについては,IPアドレスやドメイン名の登録者などに関する情報を誰でも無料で参照できるサービスがありますので,当該サービスを利用するといいでしょう。有名なものとしては,「Whois検索」や「aguse」等があります。たとえば,「Yahoo!」で「aguse」と検索すると,「aguse.jp: ウェブ調査」というサイトが出てきますが,ここで,調べたいサイトのURLを入力すると,そのサイトに関するドメイン情報が表示されます。しかし,ドメイン情報については,ドメインを取得した業者の情報が表示されるだけで,必ずしもサイト管理者と一致していないこともあります。(おそらく,一致していないパターンの方が多いでしょう。)

そこで,そのドメイン情報が表示されている右側の「正引きIPアドレス***** の管理者情報」という表示を見ます。これについては,最初から左側のドメイン情報と同様に表示されている場合もありますが,表示されていない場合は,「WHOISで調べる」というボタンをクリックします。すると,WHOIS検索の結果が表示され,その中にサイトの情報が保存されているサーバを管理している会社(ホスティングプロバイダ)の情報が表示されることがあります。

このホスティングプロバイダは,あくまでサーバーの管理者でしかありませんので,サイト自体を管理している訳ではありません。したがって,ホスティングプロバイダに対して,ホスティングプロバイダとサーバー利用契約をしているサイト管理者の情報開示を求め,サイト管理者を特定するという作業が必要になります。そして,サイト管理者が開示されれば,そこに対して,削除を請求する形になります。

2 削除依頼の方法

⑴ お問い合わせフォーム・メール等

 サイト内に,お問い合わせフォームやメールフォームが設置されている場合には,それを通じて削除依頼をすることが初動となるでしょう。
 メールに書く内容としては,氏名,連絡先,削除したい記事の具体的部分の抜粋と,当該記事のURL,削除してほしい理由等を書きます。

どのような方法で削除依頼をするかを問わず,削除依頼にはコツがあるものです。サイト管理者としては,投稿者の表現の自由を尊重するためにも,書き込みに不満がある人から削除依頼が来た場合,無制限に削除対応をするわけにはいきません。そこで,ある一定の権利侵害が認められる違法な書き込みでなくては,削除は実行してくれないものです。そのため,その書き込みがどのような理由で誰の何の権利を侵害しているのかを明確に伝えなくてはなりません。

⑵ テレコムサービス協会の書式による削除依頼(送信防止措置依頼)

 サイト内にお問い合わせフォーム等がない場合でも,削除依頼に関して,テレコムサービス協会という協会が提唱している書式があるため,それを用いて削除依頼をする方法が考えられます。
 テレコムサービス協会とは,インターネットサービスプロバイダ(ISP),ケーブルテレビ会社,コンテンツプロバイダ,ホスティングプロバイダ等,情報通信に関わる幅広い事業者を会員とする一般社団法人で,通称「テレサ協」ともいいます。

 テレサ協が提唱している書式は,別名「送信防止措置依頼書」とも言います。「テレコムサービス協会 書式」や「送信防止措置依頼書」等のワードで,検索エンジンで検索すると,書式が見つかると思います。無料ダウンロードも可能ですので,そちらを記載して,サイト管理者やホスティングプロバイダに郵送し,削除依頼をします。なお,郵送後の手続きの流れについては,別の記事に詳述しますのでそちらをご覧ください。

⑶ 裁判上の削除請求(削除の仮処分)

 上述したお問い合わせフォームやテレサ協による削除依頼は,裁判外の手続きですが,何ら強制力はないため,請求をしても何ら対応をしてくれない場合も多々あります。
 そこで,強制的に削除を求めるためには,裁判所を通じて,削除の仮処分を申し立てる方法があります。これは,裁判所が,当該書き込みにより,申立人の権利侵害(たとえばプライバシー侵害,名誉毀損等)があったと一応認められる場合には,一定額の担保金の供託を条件に,「削除を仮に認める」という決定を出してくれるものです。裁判所の決定が出れば,多くのコンテンツプロバイダ,ホスティングプロバイダは削除に応じてくれます。
 なお,裁判上の請求ですので,簡単な手続ではなく,法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となりますので,弁護士に依頼をされた方が良いでしょう。

3 まとめ

 以上のとおり,削除請求の方法としては,任意(裁判外)の手続きとして,サイト内備え付けのお問い合わせフォーム等による方法や,送信防止措置依頼書の提出等の方法,裁判上の手続きである仮処分申立ての方法があります。
 しかし,いずれの方法においても,削除を求める部分の特定や削除を求める理由(権利侵害の存在)を適切に記載する必要があり,権利侵害の有無に関しては法的判断となりますので,その分野に経験豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

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