弁護士コラム

2017.07.13

【離婚問題】弁護士が教える養育費の請求方法!

離婚した後,子供の世話はどうしよう…。一人で子供を育てることは想像以上に難しいものです。一人で子供を養っていける自信があるとしても,お金はいくらあっても困るものではありません。そのため,今回は,相手から養育費をきっちりもらうために養育費はどうやって請求すればいいのかについてご説明させて頂きたいと思います。

1 養育費ってなあに?

 離婚する夫婦に未成年の子供がいれば,その子供の親権・監護権(子供を世話する権利)を夫婦のいずれが有するか決める必要があります。しかし,一方の親が子供の親権者・監護権者にならなかったからといって,その親も「子供の親」であることに変わりはなく,子供を育てる義務を負っています。そして,夫婦のいずれかが子供を世話するとしても,子供を育てるにはたくさんのお金が必要になってきます。
 そこで,子供を育てている親は,子供を育てていない親に対して,子供を育てていくための費用,すなわち養育費を請求することが出来ます。養育費は,先程も申しましたように,子供の親権者・監護権者ではなくても「子供の親」であることによって負担するものですので,婚姻中だけでなく,離婚した後であっても請求することが可能です。
 もっとも,中には「自分の生活が厳しいから養育費なんて払えない」と言って,養育費を払わない方もいらっしゃいます。しかし,養育費の支払義務は,子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく,それ以上の内容を含む「生活保持義務」と言われています。生活保持義務とは,扶養を受ける者にも自分と同程度の生活をさせる義務を言います。つまり,養育費は子供を育てていない親が「自分の生活が厳しいから養育費なんて払えない」と言っても支払義務を免れるものではなく,生活水準を落としてでも払う必要があるお金と言えるのです。

2 養育費の決め方

 養育費は,離婚のときに離婚と一緒に決めることが多いですが,何も離婚のときに決めていなかったからといって請求できなくなる訳ではありません。

(1) まずは話し合い!

 養育費をどのように分担するかは,両親の話し合いによって決めることが出来ます。お互いの収入や財産,これまで子供にかけた養育費の実績,これからの生活の見通しなどを考慮して決めてください。
 そして,話し合いがまとまったら必ず夫婦が署名押印した書面にその内容を記載しておきましょう。可能であれば,公証役場で「約束を守らない場合は強制執行をしても構いません。」という文言を付けた公正証書の作成までしておきましょう。このような公正証書を作成しておけば,万が一,養育費を支払ってもらえなかったときに裁判をすることなく,相手方の給料などを差し押さえることが可能になるので,活用して下さい。

(2) 二人での話し合いがダメなら調停へ

 もっとも,当事者だけでの話し合いがまとまればいいのですが,必ずしもそんなに上手く行くとは限りません。そのような場合,養育費分担の調停又は審判を申し立てることになります。養育費分担の調停が申し立てられた場合,基本的に2名の調停委員が立会い,話し合いを円滑に進行してくれます。また,調停委員は調停の進行役となりますので,調停委員の説得が有利な調停成立のカギになります。
 なお,調停・審判では「東京・大阪養育費等研究会」が提案した「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)が広く活用されています。ここでは,その内容については踏み込みませんが,調停・審判を進めるにあたっては目を通しておくべきでしょう。

(3) 調停でもまとまらないなら審判へ

 調停がまとまらなかった場合,審判へと移行することになります。審判とは,裁判官が,当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の行った調査の結果等種々の資料に基づいて判断する手続を言います。審判では先程も申しました「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」を参考にして養育費額を決定することが一般的です。

3 養育費が支払われなくなったらどうすればいいの?

(1) 履行勧告

調停離婚や審判離婚,判決などにおいて養育費の支払を定めているにもかかわらず,養育費が支払われない場合,家庭裁判所から相手方に養育費を支払うよう勧告する(これを履行勧告と言います)ことを申し立てることが出来ます。
この履行勧告を申し立てるにあたっては,手数料も不要ですので,簡単に利用することが出来ます。
しかし,履行勧告は自発的な支払いを促すにとどまり,強制力を伴いませんので実効性に欠けるのが実情です。

(2) 強制執行

そのため,養育費の支払がなされない場合,強制執行を検討することになります。強制執行は,相手方の給与債権を差し押さえるのが一般的だと思います。
養育費を支払期限通りに支払わなければ,その分の養育費だけでなく将来分の養育費についても強制執行を申立てることができます。すなわち,一度でも養育費の支払が遅れていれば,将来の養育費の差し押さえが可能となり,滞納のたびに強制執行を申し立てる必要はありません。そのため,相手方が養育費を支払ってはいるものの,期限に遅れて支払うような場合,今後の養育費を予定通り支払ってもらうために利用することも可能となります。

4 まとめ

いかがでしたでしょうか?養育費を定めるにあたっては,「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」を参考にして裁判所は運用されていますので,調停・審判を行う際には,必ず確認をしておくようにしましょう。なお,これは一般的な家庭を想定して作成されていますので,特別な事情がある場合には,修正が必要になり,適切な修正をするには専門的知識が必要になります。
 また,強制執行をするにあたっては,相手方に本当にその債権があるかが問題になります。給与債権以外にも強制執行の対象財産は考えられますので,実際に強制執行をする場合,どのような戦略をとっていくかなど専門家を含めて慎重に検討する必要があります。
そこで,養育費を請求するに当たっては,最初の段階で離婚事件について経験豊富な弁護士に相談することをお勧め致します。

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