弁護士コラム

2017.06.27

【離婚問題】離婚時年金分割制度の手続きはどうやってするの?

一般にはあまり認知されていない制度ですが,離婚時年金分割制度というものがあります。この制度は,夫婦の一方が婚姻中に厚生年金に加入していた場合に,厚生年金保険料納付記録の最大2分の1までをもう一方の当事者に分割する制度です。この制度には,合意分割制度と3号分割制度の2つがございますが,今回は,その具体的な内容ではなく,合意分割と3号分割の申請手続についてご説明させて頂きたいと思います。

1 合意分割の手続きについて

 合意分割制度は,離婚する夫婦の一方又は双方が婚姻中に厚生年金の被保険者であった場合,婚姻期間中に対応する標準報酬額の多かった当事者の厚生年金の保険料納付記録の最大2分の1までを少なかった(又はなかった)当事者に分割できる制度です。例えば,共働きで二人とも会社勤めの場合などにこの制度が利用されることになります。
 離婚時年金分割制度の手続きは以下の流れで進むことになります。
① 年金分割のための情報通知書(以下,情報通知書と言います。)を手に入れる
② 分割の割合を決める
③ 年金分割の請求
では,具体的に年金分割の手続きを見て行きたいと思います。

(1) ①まず年金分割のための情報通知書を手に入れる!

合意分割を行う場合,まず,実施機関(年金事務所・共済組合等)に年金分割のための情報提供の請求を行い,情報通知書の交付を受けましょう。情報通知書には,他の実施機関の期間も合わせて一つの通知書として発行されます。
 情報提供を請求するには,「年金分割のための情報提供請求書」に所定の事項を記入し,請求者の年金番号が分かるものと婚姻期間を証明する書類を添付して提出します。記載方法などご不明な点があるときは,年金事務所等にご相談ください。

(2) ②分割割合を決めよう

 情報通知書を入手したら次は年金分割の割合を決めることになります。合意分割においてはその名の通り,話し合いによって分ける方法と裁判所の手続きに沿って決める方法とがあります。

ア まずは話し合いから!
 まずは話し合いからスタートしましょう。ここでは,分割割合だけでなく,年金分割を行うことについても合意をしておくことが大事です。
また,裁判所における判断では,年金分割の割合は2分の1とされることが多いことから,出来れば2分の1の割合でまとめるように意識しましょう。
なお,事後の手続きの簡便さから,年金分割を行うこと,分割割合については書面でまとめるだけでなく,出来れば公証役場に行って公正証書で残すよう意識して下さい。

イ 話し合いがまとまらない場合は裁判所を利用しよう!
もし話し合いで分割割合がまとまらない場合,裁判手続で決定する方法があります。
これから離婚する場合,離婚調停やその後の離婚裁判で年金分割の分割割合を定めるよう請求します。
他方で,案分割合を定めずに離婚した場合,離婚成立後2年以内に,家庭裁判所に年金分割の案分割合を定める審判,調停を申し立てることが出来ます。この場合ですと,調停よりも審判を申し立てた方が簡便な手続きをすることが可能です。なお,夫婦関係調整調停(離婚調停)や裁判離婚の際,離婚するか否かに併せて分担割合について話し合うこともできます。
先程も申しましたように,裁判所では案分割合を2分の1と定めることが多く,裁判所の手続きを利用する場合にはよほどの事情が無い限り,案分割合は2分の1とされると思っていただいて大丈夫です。
なお,元配偶者が死亡してしまうと案分割合を定めることが出来なくなってしまうので,離婚と同時に定めるか,離婚後速やかに審判(又は調停)を申し立てるようにしましょう。

(3) ③年金分割の請求をしよう!

 分割割合が決定したら年金分割の請求をしましょう。年金分割の請求は,原則として離婚後2年以内に,実施機関に「標準報酬改定請求書」を提出して行うことになります。請求書の記載内容が分からない場合は年金事務所等にご相談ください。
 ここで注意してほしいのが,年金分割に際して必要な添付書類や年金分割を一人で行えるかが分割方法によって異なると言うことです。そこで,以下では,どちらの手続においても必要な書類を説明したうえで,それぞれの手続ごとに説明したいと思います。

ア 共通で必要になる書類
 どちらの手続で分割割合を決定したとしても,
①  請求者の年金番号が確認できるもの(年金手帳,国民年金手帳,基礎年金番号通知書など)
②  婚姻期間を証明する書類(元夫婦の戸籍謄本,抄本など)
を添付する必要があります。これに加えて,以下の手続きがそれぞれ必要になります。

イ 話し合いで分割割合を決めた場合
 まずは,話し合いで分割割合を決めた場合について見て行きましょう。
 この場合,手続には,案分割合を証明する書面が必要となります。この書面を持って当事者双方が直接年金事務所の窓口に持参することになります。なお,この書面が公正証書の場合には,分割を受ける当事者だけで請求することが可能になります。

ウ 裁判手続で分割割合を決めた場合
 次に,調停,審判などの裁判手続で分割割合を決めた場合について見てみましょう。
 この場合は,調停調書又は和解調書の謄本・抄本,審判書又は判決の謄本・抄本及び確定証明書の添付が必要になりますが,分割を受ける当事者のみで手続が可能です。

2 3号分割の場合の手続き

以上のような合意分割の場合の手続きと異なり,3号分割制度では,合意や裁判手続きを経る必要が無く,分割を受ける人が請求さえすれば自動的に2分の1の割合で分割されることになります。
そのため,3号分割をする際は,分割を受ける当事者が単独で実施機関に標準報酬改定請求書を提出すれば大丈夫で,情報提供通知書を手に入れる必要も,分割割合を定める必要もありません。

3 まとめ

今回は年金分割の手続きについてご説明させて頂きました。年金分割の制度はわかりにくく,実際の利用率も決して高くはありません。しかし,年金分割が認められると,月々3万円程度年金受給額が上がることになります。1年ですと36万円,10年ですと360万円も年金が増えることになります。
 離婚をスムーズに解決するためには,このような制度までも詳しく把握している必要がありますが,このような知識まで有しているのは弁護士の中でも離婚事件について経験豊富な弁護士だけでしょう。
 離婚問題をスムーズに解決するためにも,離婚事件に経験豊富な弁護士にご相談するようにしましょう。

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