弁護士コラム

2017.07.29

【離婚問題】どんなときに裁判で離婚ってできるの?離婚原因あれこれ

相手方がどうしても離婚に応じてくれない場合,裁判によって離婚をすることになります。しかし,裁判によって離婚するためには,法律に定める離婚原因(民法第770条)がある必要があります。今回は,どういった場合に離婚が認められると法律が定めているかについてお話ししたいと思います。

1 法律の定める離婚原因

 離婚をしようとする場合には,協議離婚(当事者間での話し合いをいい,一般的な離婚のイメージだと思います。),調停離婚(裁判所が間に介入して当事者間で話し合いをします。),判決離婚(裁判所に離婚できるかを決めてもらうものです。)などの方法をとることになります(審判離婚という方法もありますが,実際に使われることはほぼないので省略します。)。
協議や調停といった話し合いで「離婚しよう」という合意ができるのであれば,どんな理由でも離婚することができます。たとえば,お互いの性格が気に食わないでも,夫の足がくさいでも,妻のいびきがうるさいでも離婚ができるのです。
そのため,お互いの話し合いがどうしてもまとまらず,話し合いでは離婚ができないけど,どうしても離婚したいという場合に,やっと裁判によって離婚をできないかということが検討されることになります。このように裁判で判決を得ようという場合は,離婚を望まない当事者に対して,離婚を強制することになるのですから,その夫婦に「離婚を命じられても仕方ない。」といった事情がある場合に限って離婚を命じることができるようになっています。
それでは,実際に法律がどのような離婚原因を定めているか見てみましょう。

民法770条(裁判上の離婚)
1 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みのない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由

法はこれらの場合に,裁判によって離婚することができるとしていますが,これだけだと分かりにくいと思いますので,個別に説明していきたいと思います。

2 具体的な離婚原因について

(1)  ①不貞行為について

 不貞行為とは,配偶者以外の異性と性的関係を持つことをいいます。日常的な言葉でいうところの不倫,浮気をいいます。これについては説明するまでもありませんよね。浮気したら離婚しないといけないということを定めたものということができます。

(2) ②悪意の遺棄について

続いて,悪意の遺棄について見てみたいと思います。
悪意の遺棄とは,正当な理由なく同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。夫婦であれば,互いに助け合わなくてはなりませんが,夫が生活費すら払わずに,専業主婦の妻を置いて家を出ること等がこれに当たる可能性があります。結局は,相手が生活できない状況に追い込むことを指すので,互いの職業や収入,健康状態等,様々な事情を考慮して,悪意の遺棄に該当するか否かを検討することになります。
 逆に,浮気を繰り返す夫を反省させるため,妻が家を一時出たとしても,夫は働いていて妻に支えられなくても自分で生活できますので,悪意の遺棄には当たらないでしょう。
 最近では,あまり悪意の遺棄が原因で離婚がされることは少ないと言われています。

(3) ③3年以上の生死不明について

生死不明というのは,その生死が3年以上不明であるような客観状況が継続する場合をいいます。どこにいるかが分からなくとも生きていることがわかっている場合は,「生死不明」ではなく「行方不明」にあたります。そのため,例えば,大津波や飛行機の墜落事故などによって生死が不明になった場合などが該当します。昭和30年代までの戦地からの未帰還者に関する事案が多く,最近の公表例はみられません。
 相手方が生死不明であるので,調停を前置することなく,公示送達によって離婚訴訟が提起されることになります。なお,生死が7年以上不明であれば,失踪宣告制度を用いることで配偶者の財産を相続することができます。

(4) ④回復の見込みのない強度の精神病について

対象となる精神病には,統合失調症,躁うつ病などの高度の精神病が該当すると判断される傾向がある反面,アルコール中毒,モルヒネ中毒,ヒステリー,神経衰弱症,認知症などは,ここにいう精神病に該当しない傾向にあります。もっとも,回復の見込みのない強度の精神病に該当しなくても,後述の⑤婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性はあります。
また,回復の見込みについては,精神科医の鑑定を前提として,裁判所の裁量で判断するものとされています。
もっとも,裁判所は,精神病にり患した配偶者にも配慮して,不治の精神病にかかったことだけで離婚ができるとはしておらず,精神病にり患した配偶者の今後の生活問題を解決するための具体的な方法を講じて,ある程度の見込みが立つことを要求しています(最判昭和45年11月24日)。たとえば,治療費をずっと払っていた実績があるうえで,これからの治療費についても可能な限り支払うと約束している場合等はこれにあたり得ます。
 よって,配偶者が精神病になってしまったからといってすぐに離婚が認められるということ訳ではなく,その上で配偶者の今後の生活の目途がついた場合に限って離婚ができるという事例が多いでしょう。

(5) ⑤婚姻を継続し難い重大な事由について

 上で述べた①~④に該当しなくても,婚姻関係が深刻に破綻し,共同生活をすることができない場合には,離婚が認められることになります。これを「婚姻を継続し難い重大な事由」といいます。この「婚姻を継続し難い重大な事由」として主張されるものとしては,長期間の別居,性格の不一致,重大な病気への罹患,配偶者の宗教活動があまりに盛んであること,配偶者からの暴力・重大な侮辱,配偶者が働かないこと,浪費癖,借金,犯罪を行ったこと等多種多様な事情があります。そのため,離婚訴訟では大抵,この「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することが主張され,実務上最も多い離婚原因となります。
 なお,婚姻を継続し難い重大な事由の有無の判断は,以下の事情などを総合的に考慮し,最終的に夫婦関係をやり直す余地があるかどうかという観点で判断されます。
<考慮要素>
・婚姻期間
・別居あるいは家庭内別居の有無とその期間の長さ
・会話や交流の有無
・性的関係の有無
・口論・けんかの有無と程度
・双方の意思・感情
・修復の意思や行動の有無
・未成熟子の有無
・子らとの関係
・子の離婚についての意見
・訴訟態度
・不和となった原因 

以上のとおり,様々な要素の総合的判断となるため,同じ事実関係であっても担当する裁判官や弁護士によっても評価が分かれ,離婚できるかどうかの結論も異なり得る問題です。ですので,正確な見通しを立てるためには,離婚事件について多数取り扱っている専門の弁護士に相談されることをお勧めいたします。

3 まとめ

 以上でみてきたように,離婚の原因には様々なものがありますが,具体的事案においてこれらに該当するか否かについては,法的な判断が要求されるものも多くあり,適切な解決を図るためには,弁護士に依頼することが最善策となります。まずは,一度,経験豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所