弁護士コラム

2017.05.29

借金を整理するにはどのような手続きがありますか?

世の中には,「返しても返しても借金が減らない。」「借金は整理したいけれど,破産ってなんかイメージ悪いなぁ。」と,多重債務問題に悩まれている方が多数いらっしゃると思います。そこで,今回は,借金を整理する方法としてどのような手続きがあるのかについて,ご説明したいと思います。

1 借金を整理するための4つの手続き

 個人の方が借金を整理する方法としては,大きく分けて①任意整理,②自己破産,③個人再生,④特定調停の4つの方法があります。以下,順に説明します。

⑴ 任意整理について

任意整理とは,裁判所を介さずに,債権者と個別的に交渉して債務額を減額してもらったり,支払いスケジュールを見直してもらって,返済していく手続です。上記①~④の手続きのうち,唯一裁判所を介さない手続きですので,裁判費用もかからず簡易に進めることが可能です。また,債権者ごとに返済額や返済時期を個別に合意できるため,自由度が高く弾力的な解決ができます。
しかし,任意整理は,一種の和解手続きですので,あくまで債権者から「契約通り利息を含めて全額支払ってくれないと困る。弁済期の延期にも一切応じない。」等と言われてしまうと,和解はできず,何も解決できないという弱点があります。

⑵ 自己破産

 自己破産は,裁判所を介した手続きで,原則として,債務者の保有資産全部を換価し,借金の返済に充て,それでも返済できない借金に関しては原則として免除される手続を言います。上記①~④の手続きのうち,唯一「免責」,つまり借金をチャラにしてもらえる可能性がある手続きです。破産手続を申し立てる方は,この免責を獲得するために申立てをすることが通常です。自己破産は,免責という債権者に重大な影響を及ぼす仕組みを制度上認めているため,その分,要件は厳しく,①~④の手続の中で最も厳格な手続きになります。
なお,免責要件を満たしていても,借金の種類によっては消えないものもありますので注意が必要です。また,職種によっては,破産してしまうと資格制限を受け,破産後の仕事に差支えが出るものもありますので,ご注意ください。

⑶ 個人再生

 個人再生手続は,裁判所を介した手続で,債務の一部をカットしてもらい,残額については3年から5年かけて分割支払いしていく手続です。個人再生手続には,㋐小規模個人再生手続と㋑給与所得者等再生手続の2つがあります。
 ㋐小規模個人再生手続とは,将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり,かつ住宅ローン等の一定の債務を除いた借金総額が5000万円以下である場合に利用できる手続きになります。また,㋑給与所得者等再生手続は,㋐の要件を満たした上で,さらに,収入について変動が少なく安定しており,弁済原資として可処分所得の2年分以上を充てなければならない等の要件を満たす必要があります。(㋐と㋑の手続の詳細については,別の記事でまたご紹介します。)
 なお,再生手続きは,破産手続と異なり,全財産を換価する必要はないため,家を残すことができますので,「多少の借金は返し続けてもいいから,どうしてもマイホームを残したい」という方がよく利用する制度です。

⑷ 特定調停

 特定調停は,裁判所を介して債権者と債務の減額や返済スケジュール等について話し合いを行う手続です。簡単に言えば,裁判所で行う任意整理手続のようなものです。
 しかし,特定調停は任意整理と異なり,調停が成立すると調停調書というものが作成され,これは確定判決と同一の効力を持つとされています。
 そのため,特定調停で,例えば,今後3年かけて返済していくというスケジュールを立てた場合,返済に滞りが生じると,債権者は調停調書に基づき,債務者の財産について差押えを申し立てることができます。

2 まとめ

 以上の通り,債務整理の方法としては,大きく分けて4つありますが,どの手続きを選択すればいいかについては,各手続のメリットとデメリットを比較しながら,債務者の置かれた状況に照らして検討することになります。なお,各手続のメリットとデメリットは別記事に詳述しますので,そちらをご覧ください。
 債務整理は,放っておくと,利息や遅延損害金が膨れ上がり,いつまで経っても問題は解決しません。早いうちに相談に来ていれば,債務整理の方法としていろいろな手続きをとる余地があったにも関わらず,放っておいたために,破産するしか方法がなくなってしまうケースもあります。また,破産するにも,予納金と言って,裁判所に納める費用が必要ですので,予納金さえ準備できなければ破産さえできません。また,破産申立を弁護士に依頼するのであれば,弁護士費用も必要になって来ます。
 借金問題は逃げても何も解決しない問題ですし,運が悪ければ,闇金業者等の悪質業者に債権が譲渡されてしまい,過酷な取り立てに追われるリスクもあります。
ですので,借金問題にお悩みの方は,早いうちに債務整理について経験豊富な弁護士にご相談されることをお勧めします。
以上

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