弁護士コラム

2019.08.05

【離婚問題】保護命令・接近禁止令について

配偶者や事実婚のパートナーなどの親密な関係にある相手から、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害を受け、解決策が分からずに悩まれている方は多くいらっしゃると思います。
今回はその様な方々のために、法的なDVへの対応策のひとつである「保護命令」についてご説明したいと思います。

1.保護命令とは

保護命令とは、被害者の生命または身体に危害を加えられることを防ぐために裁判所が発する命令のことです。
具体的な命令の内容としては、被害者、被害者の子供、被害者の親族等への付きまといの禁止、被害者と一緒に生活している場合は期間を限定して本住居からの退去等を命じるという内容になります。
DVの被害者が裁判所に申し立てることで、裁判所から加害者に対し命令が発せられることになり、命令に違反した加害者に対しては刑罰が科せられます。

2.保護命令の要件は?

では、DVの被害を受けたと被害者が申立てれば必ず裁判所は保護命令を発するのでしょうか?
裁判所が保護命令を発するには5つの要件を満たしている必要があります。5つの要件は『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、「DV防止法」と言います。)』において定められており、具体的な内容は以下の通りとなります。

<保護命令の要件>
①申立人が「被害者」であること(DV防止法第10条1項)

②配偶者からの身体に対する暴力を受けた被害者の場合は、配偶者からのさらなる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと(DV防止法第10条1項)

③被害者からの申立てであること(DV防止法第10条1項)
④支援センター又は警察(生活安全課)の職員に援助若しくは保護を求めて相談した事実があること(DV防止法第12条1項5号)

⑤ ④の事実がない場合は、DV防止法第12条1項の1号から4号に係る事項について被害者の供述書面を作成し、公証人に認証を受けたものを申立書に添付すること(DV防止法第12条2項)

⑤において定められている、DV防止法12条1項1号から4号は次のようになります。

<DV防止法第12条1項>
1号
配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況

2号
配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情

3号
第10条第3項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情

4号
第10条第4項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情

3.保護命令の内容

裁判所が発する保護命令とは具体的にどの様な内容が含まれているのでしょうか?以下に保護命令の具体的な内容を説明致します。

(1)被害者への接近禁止命令

命令の効力が生じた日から6か月間、被害者の住居(当該配偶者とともに生活している住居を除く)その他の場所でのつきまといや、被害者の住居、勤務先その他通常所在する場所付近の徘徊を禁止します。

(2)未成年の子への接近禁止命令

加害者である配偶者が被害者の子を連れ去ってしまうと、被害者がその子の監護のために自ら配偶者に会いに行かなくてはならなくなる等の事態が考えられます。
そのような場合、被害者に対する接近禁止令が発せられていても、結局、被害者が配偶者との接近を余儀なくされ、さらなる暴力を加えられてしまう危険が生じます。
そこで、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するために、子への接近禁止命令の発令も可能となっています。

(3)被害者親族等への接近禁止命令

被害者への接近禁止令が発令されていても、加害者が被害者の親族等の住居に押しかけた場合に、被害者がその行為をやめさせるために、自ら配偶者と接触せざるを得なくなる可能性があります。
そこで、被害者への接近禁止令の実効性を確保するため、親族等についても接近禁止令の発令が可能となりました。

(4)退去命令

被害者と配偶者が共に生活の本拠としている住居から、配偶者を2か月間退去させて被害者を保護する命令です。退去命令は、被害者の身辺整理や転居先の確保等の準備のために設けられています。

(5)電話等禁止命令

被害者に対する面会要求、電話等を禁止する命令です。被害者等への接近禁止命令が発令されていた場合でも、加害者である配偶者が被害者に電話やメール等で連絡を続けると被害者は恐怖心を募らせ、配偶者のもとに戻らざるを得なくなったり、要求に応じて接触をせざるを得なくなったりして、生命、身体への危険が高まります。
そこで、接近禁止命令の実効性を確保するために一定の電話等の禁止を命ずることができるようになりました。

4.おわりに

今回は保護命令についてご説明致しましたが、実際にDVで悩んでいる方にとって有効な手続であることをご理解いただけましたでしょうか?

DVの被害にあわれている方は、ご自身の身体、生命を守るためにも一日でも早く保護命令の手続きを検討していただきたいと思います。また、保護命令の発令に必要となる要件の立証など手続きが難しいため、専門家に相談することをお勧めいたします。

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