弁護士コラム

2017.05.30

任意整理,自己破産,個人再生手続のメリットとデメリット

個人の方の債務整理手続の種類としては,①任意整理,②自己破産,③個人再生,④特定調停の4種類がありますが,各手続には,それぞれメリット・デメリットがあります。そこで,今回は,各手続のメリット・デメリットをご紹介し,事案に応じてどの手続を選択すべきかについてのポイントをお伝えいたします。なお,各手続の概要については,別の記事に記載しているので,そちらをご覧ください。

1 メリット・デメリット

メリット

デメリット

任意整理

・裁判所が関与しないため,簡易かつ裁判費用がかからない。

・債権者ごとに返済計画を個別に取り決めできるため弾力的な和解が可能。

・資格制限が問題とならない。

・免責不許可事由は問わない。

・貸金業者によっては,分割払いを一切認めない業者もあり合意困難。

・破産や個人再生手続と異なり,大幅な債務の減免は見込めない。

・通常支払期間が長期に及ぶため,途中で挫折する事例も多く,その場合の破産手続き以降は二度手間となる。

自己破産

・免責許可が下りれば原則として債務が消える(※一部消えないものもあるので注意。)

・債務者に安定した収入がなくても制度利用可能。

・手続開始申立てにより,個別の強制執行手続は中止されうる。

・名前が官報に掲載される。

・破産手続開始決定により資格制限を受ける職業がある。

・住宅,自動車,保険等の資産も処分しなければならない。(一部残せる場合もある。)

・免責不許可事由に該当する場合は,債務が消えない。

・裁判費用がかかる。管財事件の場合は,管財人の報酬として数十万円の予納が必要。

個人再生

・債務総額によるが,返済総額を約8割程度カットできる。

・資格制限が問題とならない。

・住宅資金特別条項の利用により住宅を残すことができる。

・免責不許可事由は問わない。

・手続開始申立により,個別の強制執行手続は中止されうる。

・債務者に安定した収入が必要。

・裁判費用がかかる。再生委員が選任される場合は,同委員の報酬として数十万円の予納が必要。

・再生計画認可後,途中で挫折すると認可が取消され,結局は破産することになり二度手間となる。

・債権者間の形式的平等が要求され,一部債権について一括返済したり支払期限を延長する等の融通が利かない。

特定調停

・手続き費用が安い。

・資格制限が問題とならない。

・免責不許可事由は問わない。

・住宅等の財産処分を強制されない。

・貸金業者によっては,分割払いを一切認めない業者もあり合意困難。

・破産や個人再生手続と異なり,大幅な債務の減免は見込めない。

・相手方とされた債権者間では平等性が要求されるため,一部の債権者の利益に偏った合意はできない。

・通常支払期間が長期に及ぶため,途中で挫折する事例も多く,その場合の破産手続き以降は二度手間となる。

・調停で決まった内容に不履行があった場合,債権者から調停条項に基づき強制執行を申立ててくるおそれがある。

2 各手続選択の基準

各手続のメリット・デメリットの比較は以上の通りです。以上を踏まえると,手続選択をする上では,以下の事項を確認しておく必要があるでしょう。

⑴ 債権者の対応 

 任意整理や特定調停は,債権者との話し合いによる解決ですので,債務の減免に関し頑なに拒否する債権者がいる場合は,これらの手続きを取るのは難しいでしょう。そこで,各債権者が話し合いに応じてくれそうなタイプかどうかについては,確認しておく必要があるでしょう。

⑵ 債務者の資力

 破産手続は,無職の場合や安定した収入がない場合でも申立てをすることができますが,再生手続は,安定した収入がなければ手続利用ができません。また,任意整理や特定調停は,安定した収入は要件ではないため,手続きを進めることはできますが,結局は,債権者に分割弁済計画を了承してもらえないと合意ができないため,無職である場合は,保証人や担保等がない限り,債権者の合意を取り付けることは困難でしょう。

⑶ 費用 

 破産手続や再生手続は,裁判所に納める費用の他,管財人や再生委員が選任される場合はその費用を準備しなければならないため,申立時に数十万円程度必要になる場合もあります。手続費用を準備できそうか否かについては,予め確認しておきましょう。

⑷ 自宅を失いたくないか 

破産手続きの場合,申立時に保有する資産は基本的に換価して弁済に充てなければならないため,持家の場合は自宅を失うことになります。どうしても自宅を手放したくない場合には,破産手続以外の選択肢を考える必要があります。

⑸ 資格制限 

 破産の場合は,一定の職業(弁護士,税理士,宅地建物取引士等)については資格を制限されてしまいます。破産申立てにより仕事を失う可能性もありますので,ご自身の職業に関し,資格制限がないかについては,必ず確認しておきましょう。

⑹ 非免責債権・免責不許可事由

 破産手続を選択される方は,大半免責目当てだと思いますが,借金の種類によっては,破産開始決定後も免責されないものもあります(養育費等の債務や,一部税金等)。ですので,ご自身の借金が,破産によって消えるものかについては必ず確認をする必要があります。  また,そもそも,借金の原因がギャンブルによる浪費等,一定の場合は,免責不許可事由に該当し,そもそも免責が認められない可能性もあります。  そのため,免責不許可事由の有無については必ず確認しておきましょう。

3 まとめ 

 以上の通り,各手続を選択する上では,様々な事項を確認する必要がありますので,ご自身にとって最適な手続を選択するためにも,債務整理を多数取り扱う経験豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

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