弁護士コラム

2019.05.31

クーリング・オフ期間を過ぎて契約を解除するにはどうするの?

前回、『一度結んだ契約が取り消せる?「クーリング・オフ制度」とは?』の記事で、エステの契約をし、契約書面を受領した日から8日間がクーリング・オフ制度の対象期間となり、その期間を過ぎてしまうと、原則としてクーリング・オフはできない、ということをご説明しました。
しかし、クーリング・オフできないからといって、契約を一切解除できないわけではありません。
今回は、クーリング・オフ以外に商品購入の契約を解除する方法を見ていきましょう。

1. 中途解約

まず1つ目の契約解除の方法が中途解約です。
クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約できることが、特定商取引法第49条で定められていて、以下のように記されています。

役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける者は、第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後においては、将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。

こちらを分かりやすく解説すると、
サービス提供事業者が、エステ等の特定継続的役務提供契約を締結した場合、消費者は契約書面を受け取った日から数えて8日が経過した後は、サービス提供期間内であれば、将来に向かって、契約を解除することができる、ということです。ここでいう「将来に向かって」というのは、それまでに提供されたサービスについては返金対象外であるが、それ以降の、まだサービス提供を受けていない部分に関しては返金を受けることができるという意味です。

このように、クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約で契約解除をすることが可能なことがわかりましたが、中途解約の際に、注意しておかないといけないことがあります。

2.中途解約時に注意が必要なこと

中途解約時、気を付けておかなければならないことの1つ目が解約料についてです。

① 解約料

特定商取引法で定められている通り、中途解約を申し出ることで、サービスを受けていない分に関しては返金を受けることはできますが、一方で中途解約では、事業者に対して解約料(違約金・損害賠償額)を払わなければならないときがあります。この解約料を払う必要があるかどうかは、事業者の方針によって異なりますが、その額の上限は2万円と決められているので、この上限を超えた金額をエステの中途解約時に請求されることはありません。

上限2万円の範囲で解約料が発生するので、特に事業者で解約料の定めがなければ、
・サービスを受ける前であれば2万円、
・既にサービスを受けている場合は、2万円か、契約残額の10%のうちの低いほう
が解約料となります。つまり、契約残額の10%の額が2万円より少ない場合は、そちらが解約料となります。契約残額とは、契約に関するサービスの対価の総額から、すでに受けたサービスの分の対価を差し引いた金額のことです。

次に知っておいたの方が良いのが、関連商品についてです。

② 関連商品の中途解約

エステの契約を結んだ際に、サプリメントやボディケア商品などの関連商品も一緒に購入することがあります。これらの関連商品も、エステのサービス同様に中途解約の対象となります。
ただし、未使用品のみ解約の対象になりますので、開封・使用・消費したものに関しては対象外となってしまうので、注意が必要です。

このように、中途解約はサービスを受けた部分は返金対象外で、また解約には一定の解約料が発生します。また、使ってしまった関連商品は解約の対象外となりますので、その点を注意しておきましょう。
次に、クーリング・オフでも、中途解約でもない方法での契約解除の仕方を見ていきましょう。

3. 消費者契約法における契約取消

消費者契約法においては、消費者取消権というものが認められていて、不当な勧誘によって結ばれた契約は、取り消すことができます。
エステにおける不当な勧誘による契約とは、以下のような、消費者に誤認や困惑がある状態で勧誘し、契約を結ぶことを言います。

① 不実告知

不実告知とは、重要事項について、事実と異なることを告げることです。その結果、消費者が告げられた内容を事実と誤認してしまうことにより、消費者取消権が認められます。
具体的には、施術内容やその効果について嘘(「エステを受ければ若返る」という)をつくこと、専門用語や専門知識を使い、消費者には理解し難い説明を行い契約させることや、クーリング⁺オフや中途解約に関する消費者の権利・義務について告げていないこと、「無料」と謳いながら、実際には有料の施術を受けさせた場合などが不実告知にあたります。

② 断定的判断の提供

断定的判断の提供とは「絶対に痩せます」「二度と元の体型には戻りません」などのように「絶対」、「二度と」などの断定的な表現を使い勧誘・契約を行うことを言います。代金を払いエステを受けたことで「絶対に」その効果を体感できるということは言い切れないので、そのような勧誘は消費者契約法違反になり、取消の対象となります。

このように、契約時に述べた内容が実際は違っていたり、「絶対」などと言い切れないことを断定したりして契約に結び付けると、消費者契約法の違反になるので、取消の対象となります。
また、いずれも取消できる期間は、誤認に気が付いたときから6か月間、また契約時から5年間です。契約後5年以上が経過してしまうと原則として取り消せなくなってしまうので注意が必要です。契約を解約したい人は、ご自身が契約時にどのようなやり取りをしたのか、記憶を辿ってみましょう。

4.まとめ

クーリング・オフは期間が短いですが、期間を過ぎてしまったからといって、後悔している契約の解除を諦めるのは早いです。
中途解約もできますし、また勧誘や契約の仕方が不当である場合は法律の定めで契約の取り消しが可能です。
しかし、不当な勧誘・契約と言っても様々なケースがあり、一概には言えず、ご自身で判断するのは難しいので、困ったときは専門家に相談するのが良いでしょう。

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