弁護士コラム

2019.04.10

従業員の退職に伴い必要な手続きと解雇について

従業員を採用するとき同様、従業員が退職するときにも従業員に対する手続き、年金事務所・ハローワークに対する手続きなどを行わなければなりません。

今回は、これらのような退職に伴い必要になる手続きと、それに関連して、従業員の解雇について詳しくご説明します。

1.退職時に必要な手続き

(1)従業員に対する手続き

従業員の退職が決定したら、退職届を提出してもらいます。この際、トラブルに発展することがないように、必ず書面で受け取りましょう
入社時にマイナンバーが分かる書類(マイナンバーカード、マイナンバーが記載された住民票の写し等)を提出してもらっていない場合は、それも受け取ります。
そして、退職日以降に、本人及び被扶養者分の健康保険被保険者証を回収します。
回収した健康保険被保険者証の取扱いについては、(2)社会保険・雇用保険の手続きでご説明します。

 また、退職の年月日と理由を労働者名簿に記載する必要があります。
死亡した場合には、その年月日と原因を記載します。

(2)社会保険・雇用保険の手続き

①社会保険

退職の翌日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」に回収した健康保険被保険者証を添付して、所轄の年金事務所に提出します。
もし、従業員が健康保険被保険者証を紛失している場合は、代わりに「健康保険被保険者証回収不能(滅失)届」を提出しましょう。

②雇用保険

「雇用保険 被保険者資格喪失届」と、従業員から離職票の交付を希望しない旨の申し出がない限り「雇用保険 被保険者離職証明書」を準備します。
そして、退職の翌日から10日以内に、出勤簿、労働者名簿、賃金台帳、退職届など退職理由を確認できる書類を添付した上で、所轄のハローワークに提出します。
この離職票とは、失業手当を受けるために必要な書類です。
提出すると、「資格喪失確認通知書」、「雇用保険被保険者離職証明書」、「離職票-Ⅰ」、「離職票-Ⅱ」、パンフレット「離職された皆様へ」が交付されるので、離職票とパンフレットを速やかに本人に郵送しましょう。

(3)給与関連の手続き

退職日以後1か月以内に「源泉徴収票」を本人に交付します。
従業員が死亡したことによる退職の場合、死亡時にまだ支給期が到来していない給与については、所得税や住民税は非課税ですので、源泉徴収票には記載しません。

また、住民税を給与から特別徴収している場合には、「給与所得者異動届出書」を作成します。1月1日から5月31日までの間に退職する場合には、未徴収税額を最後の給与や退職金から一括して徴収します。
5月中に退職する場合、未徴収分はひと月分ではありますが、一括徴収の方法により納めることになります。

6月1日から12月31日までの間に退職する場合には、本人が自分で納付する「普通徴収」、最後の給与や退職金から差し引く「一括徴収」、特別徴収税額を次の会社に引き継ぐ「特別徴収の継続」のいずれかを選択できるので、本人に確認します。

普通徴収または一括徴収の場合は、退職した月の翌月10日までに本人の居住地の市区町村に提出します。
特別徴収の継続の場合は本人に渡し、次の会社に提出してもらいましょう。

2.解雇事由と解雇予告

これまでは、従業員が退職するときに必要な手続きについて説明してきました。ここからは、退職に関連して、経営者が気になる「解雇」についてお話します。

雇っている従業員の勤務態度などに問題があると分かった場合、会社はすぐに解雇できるのでしょうか。
実は、解雇するためにはいくつかの条件があります。それは、①解雇に正当な理由があること、②就業規則に記載されている「解雇の事由」に該当すること、③解雇禁止事由に該当しないこと、④少なくとも30日前に解雇予告を行っていることです。

③の解雇禁止事由に関して、例えば、労働基準法19条において、業務上の怪我や病気により休業する期間や産前産後の休業期間とその後30日間は解雇してはならない旨が定められています。
他にも、育児・介護休業法10条においては、育児休業の申出をしたことや、育児休業をしたことを理由に解雇してはならない旨が定められています。

次に、④の解雇予告について詳しくご説明します。
前述したように、解雇するときは少なくとも30日前に解雇の予告をしなければなりません。
解雇の予告をしない場合は、「解雇予告手当」として、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。20日前に解雇の予告を行い、10日分の手当を支払うといったように、手当を支払うことによって日数の短縮をすることもできます。

ただし、解雇予告については、労働基準法20条に例外が定められています。
それは、①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合です。
これらの場合は、解雇予告を行わなくても解雇することができますが、所轄の労働基準監督署から「解雇予告の除外認定」を受けなければならないということに注意してください。

それでは、「試用期間中」の場合はどうなるのでしょうか。
あくまで試用期間なのだから、簡単に辞めさせることができるとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、試用期間であっても、労働契約が成立している以上、解雇する正当な理由が必要です。
この場合でも、解雇予告をする又は解雇予告手当を支払う必要がありますが、採用から14日以内の試用期間中の場合であれば、解雇予告は不要です。

最後に、解雇をすると、一定期間助成金を受けられないというデメリットがあるので、注意しましょう。

3.まとめ

従業員を雇う以上、いつかは退職する日が来ます。
何のトラブルもなく、気持ちよく退職してもらえるよう、スムーズに手続きを行うことを心がけましょう。

また、従業員の解雇のお考えの方も、安易に解雇を決めると労使関係が悪化してしまうかもしれません。
まずは、従業員と話し合うなどして、解決する方法がないか考えてみましょう。

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