弁護士コラム

2019.07.08

クリニックを作って地域医療に貢献したい方へ

はじめに

この記事では、地域医療への貢献を行いたいドクターや医療経営コンサルタントをはじめとした、医療関係者の方々に向けて診療所開設にあたっての手続をご紹介していきたいと思います。医局に所属する道を選ぶか、勤務医となる道を選ぶか、開業医となる道を選ぶかは個人によりますが、将来に向けて知っておいて損はありません。

実際に、開設しようという決断をして、どのように行動すると良い病院(診療所)がつくることができるかと考える時間を割くために、一通りの手続を把握しておくことがよいでしょう。(法人開設の場合、最低でも、立案→ご準備(X線や用地調達等)→社員総会等→定款変更→開設許可申請→開設届提出→保険医療機関指定申請の手順を踏む必要があります)。

なお、コ・メディカル(医師や歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者のことです。)の人数はもちろんのこと、診療所の各部屋の面積や、部屋の名前の細かい名称、放射線装置の線量の遮蔽計算の数値(管理区域境界において1.3Sv/3月以下である必要性)などの細かい情報も集めなければなりません。

1 立案

「診療所を開設しよう」と思うと、まずは以下の手続があることを踏まえて、綿密な案を練ることが必要で、案を練るためには、開設までに要する期間と費用を計算した上で、必要な設備を予め手配することが必要です。
 
少なくとも、手配が完全でないまま開設に臨むことは、想定をはるかに上回る費用・時間と労力を要する結果となりますので、開設を行おうと考えるときには、十分な準備から始めることが重要です。また、法人開設の場合は個人開設に比べて越えなければならないハードルが非常に高いため、期間を考えるにあたって、以下の手続を考慮していただければ幸いです。
 
例えば、診療所の候補となる場所の賃貸借契約の締結やエックス線の搬入は予め行っておかなければ、のちのち保健所が許可を下ろさず、クリニック開設予定日に間に合わなくなる等、大変なことになります。高額なMRIを設置する診療所はあまりないものと思いますが、MRIを設置する場合はMRIの搬入も行わなければなりません。

2 第1の関門「定款変更とその認可」(医療法人の場合)

医療法人が新たに診療所を開設する場合は、医療法第54条の9第3項・医療法施行規則33条の25の規定の法人の定款を変更してその認可を受ける必要があります。法人の定款変更手続きは、診療所開設の場合は、思い描いていらっしゃるクリニック像に応じて添付すべき資料が変わり、その数は多数に上ることもあり、綿密な事前準備が必要です。
 
事前準備が終わったら、法人の主たる事務所の住所を管轄する保健所に定款変更手続を行うこととなります。診療所開設の場合は、提出資料が多いと記載しましたが、保健所において、これをチェックすることになるので、定款変更認可が下りるまでにそれなりの時間がかかります。標準処理期間は保健所によって異なるので、その点でも注意が必要です。

全ての添付書類をまず、厳重にチェックする係の方がいらっしゃり、さらにそのチェックした書類を上長がさらに厳重にチェックするものと思われます。
保健所の最終決裁権者が決裁を行うと、定款変更について、保健所の認可が下りることになります。

3 第2の関門「現地保健所の開設許可」

(1)開設許可申請

新たに診療所を開設しようとするときは、医療法7条1項に基づく都道府県知事または保健所設置市においては市の許可、特別区においては特別区の許可を要します。

この手続きを行うに先んじて、X線を設置する診療所ではX線の遮蔽計算という計算書を予め入手しておかなければなりません。この書類の取得にも時間がかかりますのでご注意ください。
また、ある場所を借りて診療所にする場合、賃貸借契約書の控えや、診療所に関する地理的情報等の記載されている文書、更には取得している医師免許証などの提出が必要となる場合があります。このように、準備が必要な書類が多岐にわたるため、事前に打合せなどを勧める保健所もあります。

各書類が集まったらようやく許可申請手続が開始されます。これにも、定款変更の認可と同様に、保健所の職員のチェックに時間がかかります。各書類のチェックが全部終了し、開設しても問題がないと判断されれば開設許可が下り、一応は開設をすることができる状態になります。

(2)開設届の提出

準備を整え、実際に開設をした後は保健所に開設届を提出しなければなりません。

4 第3の関門「厚生局の保険医療機関指定」

以上の手続きを終えても、まだ保険診療にたどりつけません。この後、厚生局の保険医療機関指定を受けなければ保険診療はできません。したがって、今度は地方厚生局の各都道府県事務所に対して保険医療機関指定申請を行う必要があります。
こちらでは、基本的に保健所に提出した書類をそのまま提出することとなりますが、追加で必要となる書類もあります。地方厚生局の指定申請は毎月の締切日があり、その日を逃してしまうと指定が1ヶ月も先送りになってしまいますので、お気をつけください。

5 まとめ

このように、診療所を開設するにはかなりの道のりを踏まなければなりません。特に認可・許可・指定という段階は高いハードルですので、長期的なスパンで開設を考えて行動するのが妥当です。少なくとも手続に4~6ヶ月以上はかかるものであるとの認識で行動すべきでしょう。

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