弁護士コラム

2019.06.04

標準報酬月額②~算定基礎届(定時決定)のポイント~

毎年6月ごろに年金事務所から届く「算定基礎届」。今年もこの時期がやってきました。毎年1回、実際の報酬と標準報酬月額が大きくかけ離れないように、「算定基礎届」を提出しなければなりません。全員提出すればいいというものでもありませんので、しっかり要件を確認してみましょう。
ちなみに、提出期限は、7月1日~7月10日ですので、ご注意ください。

1.定時決定とは

原則として毎年7月1日現在の被保険者全員が対象となり、標準報酬月額の見直しを行います。これを、定時決定といいます。

▼定時決定(健康保険法41条)
標準報酬月額は、原則として、当然被保険者全員について毎年1回決定され、その決定された標準報酬月額が、1年間使用されます。
(1)算定方法

定時決定の算定の対象となる、4月・5月・6月のことを「算定基礎月」と言い、算定基礎月に支払われた給与(報酬額)を対象とします。
この金額を、期間の月数で割った額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します。

例:末日締め、翌月10日払いの場合
4月…4月10日支給 21万円
5月…5月10日支給 18万円 → 合計60万円÷3か月
6月…6月10日支給 21万円   =平均20万円

支払われた給与・・・?どの手当を含むの?こちらの記事に詳しく解説があります。

標準報酬月額①~基礎知識と報酬に含む手当~ はこちらから

4・5・6月の給与が多いと、その後1年間の社会保険料が高くなります。
7月以降の給与が少なかったとしても、この3ヶ月で算出された社会保険料は基本的に変わらないので、4-6月は極力残業を少なくすることをお勧めします。
しかし、業務の性質上、4-6月に残業や歩合が多く発生することが見込まれる場合については(算定基礎月とその他の月を比べて2等級以上の差がある場合)、「定時決定の特例」として扱われ、年間平均額を算出し、別途、理由を記載した申立書や同意書を提出し、年間平均額にて決定することもできます。

(2)支払基礎日数

「支払基礎日数」とは、給与を起算する基礎となった日数のことをいいます。
間違えやすいのが、4月・5月・6月に出勤した日数ではなく、それぞれに支払った給与の計算基礎となった日数となります。つまり、4月支給分の基礎日数は3月勤務分となります。

フルタイム勤務の場合
 4月…31日
 5月…30日
 6月…31日
(3)算定の対象月

①支払基礎日数(出勤日数)が17日以上ある月を計算の対象とします。

②短時間労働者:同一の事業所に使用される通常の労働者の、1週間の所定労働時間の4分の3未満、又は、1か月間の所定労働日数の4分の3未満であるときは、11日未満
※4分の3以上であれば、短時間労働者でも①と同様に17日。

③月給制:支払基礎日数の暦日数、休日や有休休暇も含み、欠勤は含みません。
     所定労働日数が20日で、2日欠勤した → 18日(支払基礎日数)

④日給制・月給制:支払基礎日数の出勤日数に有給休暇を足した日数。

⑤17日を満たしていない月は?(短時間労働者かつ4分の3未満の人は11日)
支払基礎日数が17日未満の場合は、算定の基礎から外して、給与を平均します。
 例:4月は20日勤務 5月は18日勤務 6月は15日勤務
 →17日未満となる、6月を除き、4月と5月だけで給与を平均します。

(4)「算定基礎届」の提出が不要な人

7月1日現在、被保険者である人で以下に該当する人は定時決定を行いません。

6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した人
 →定時決定ではなく、入社時決定方法で標準報酬月額が決まります。
 →7月1日に退職した人は、届出が必要です。

②4~6月に賃金の変動があり、7月~9月に標準報酬月額が随時改定される人、又は、産前産後休業や育児休業等を終了した際に標準報酬月額を改定される人。
 →定時決定ではなく、「月額変更届」が優先されます。
  4月や5月に昇給降給し2等級以上変更となる人は、9月の定時決定を待たずに、「月額変更届」と同様の改定となります。
 →産前産後・育児休業の方は、終了した後に提出する、報酬月額変更届により決まります。

(5)届出までの流れ

<有効期限>
定時決定によって決定された標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額とする。

2.事務手続き

届出先 管轄する年金事務所
期日 7月1日~7月10日
必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届
※70歳以上の方は、「厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届」を提出します。
添付書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届総括表
注意1 算定基礎届出用紙は、管轄の年金事務所より事前に郵送で届きます。
被保険者1人ひとりについて、氏名・生年月日など印字されています。退職者の記載があったり、入社した人が記載されていないことがありますので、注意が必要です。
注意2 提出が不要な人やその他記載が必要な方は、備考欄に記載しましょう。
パートや短時間労働者な、備考欄の確認は必須です。

 

3.まとめ

算定基礎届出用紙がまだ届いていない場合は、管轄の年金事務所へ問い合わせてみましょう。「算定基礎届出」は、被保険者の報酬額に応じた保険料を算出する大切な作業ですが、各事業所の報酬の支払い状況や被保険者数などを年金事務所が把握する為というのも兼ねています。
提出が遅れたり金額を間違えると、本人たちが迷惑することもですが、会社も後日精算した金額を支払ったり手間となりますので、期限内の提出、適正な記入を行いましょう。

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