弁護士コラム

2019.05.30

テレビ番組制作において気をつけるべきポイント~未成年者への取材・番組収録編~

テレビ番組においては、番組のコンセプトに基づいた視聴者層に向けて制作されることが多く、それにより番組に出演するタレントや、番組内で使用する街頭インタビューの取材対象者も変わってくることかと思います。この中には未成年者への出演なども検討されることがありますが、未成年者をテレビ番組で取り扱うには、どのような点に注意すべきでしょうか。
今回は、1.未成年者へのインタビュー、2.未成年タレントの利用(出演)について考えてみましょう。

1.未成年者へインタビューする際、親の同意は必要?

テレビ局の取材班や番組制作会社は、情報番組等を制作する際、街頭インタビューを行うことがあるかと思いますが、やはり流行の商品や話題のサービスについては、中高校生や大学生を対象としたインタビューを行えば反響も大きいことでしょう。
では、このような未成年者へのインタビューは、保護者の同意が必要なのでしょうか。

(1)15歳以上であれば、保護者の同意は原則不要

街頭インタビューをテレビ番組で使用する場合、誰に対して行ったとしても使用について承諾を得る必要があると言えます。他方で、未成年者の場合、成人と異なり、何らかの契約行為を行う場合は原則として法定代理人である保護者の同意が必要とされるため(民法第5条)、街頭インタビューを行う場合も保護者の同意を得なければならないとも思えますが、必ずしもそうでもありません。

民法に関する法制審議会の報告書等で示されている見解によると、未成年者であったとしても、15歳以上の者であれば個人情報の取り扱いについての認識や意思能力、判断能力が備わっており、保護者の同意がなくともこのようなインタビューを受けることができるとされています。
例えば、高校卒業とともに就職した18歳の人へインタビューをする場合、成人と同等な個人の意見を発せられる状況において、インタビューすることに親の同意が必要であるか?と想像すれば分かりやすいかもしれません。

(2)15歳未満でも、受忍限度の範囲内で認められる

一方、15歳未満の未成年者へのインタビューについては、その未成年者が同意していたとしても保護者からの同意が得られなければ行うことができません。保護者からの同意なく使用すると肖像権、プライバシー侵害のおそれがあります。
しかしながら、社会通念上、公表しても差し支えない内容であり、個人情報や性的な質問といった不相当な内容ではない「受忍限度の範囲」内であれば、保護者の同意がなくとも上記権利の侵害にはならないこともあります。
想定されるケースとして、幼稚園児や小学生に田植え体験の感想を聞いたり、好きな遊具を尋ねるインタビューなど、一般常識として相当な場合は問題とならないでしょう。

2.未成年タレントは深夜まで働いてもいい?

最近では未成年者のタレント(芸能人)も多くテレビに出演するようになりました。ドラマやバラエティに登場し、子役タレントが大人顔負けの演技や受け答えをし、人気を博す、といったことも珍しくありません。
さぞかし多忙なスケジュールをこなしているのではと思うのですが、未成年者が深夜の生放送番組や収録等に参加しても良いのでしょうか。

(1)未成年タレントに労働基準法が適用される

多くの18歳未満のタレントは、労働基準法に定める「時間制限のある労働者」に該当するとされています。これは、所属する芸能プロダクションによりスケジュールが決定し、仕事を割り振られることが芸能プロダクションの従業員扱い(=労働者)となるからです。
後述しますが、年齢や活動内容ごとに制限される時間が異なりますので、未成年者を収録等に参加させる場合は注意が必要です。

(2)労働基準法が適用されない芸能タレント通達

爆発的な人気を得ているアイドルのようなタレントの場合は、労働基準法第9条の労働者に該当しないこともあります。
これは、歌唱や演技が他人に替えることができず、その番組において芸術性の個性が重要な場合、労働者とはならないという趣旨の通達によるもので、通称、「芸能タレント通達」と呼ばれています(昭和63年7月30日 基収355号)。
この通達が出されたのには、昭和末期に人気絶頂だったアイドルグループが午後8時より生放送の歌番組に出演した際、当時中学生だったメンバーも参加していたことが問題となったという背景があります。
これにより、影響力、人気のある未成年タレントは労働者というよりは一種の事業者として見なされ、深夜の収録等でも参加できるようになったのですが、プロダクションとの契約内容によっては、人気があってもこの通達にあてはまらないタレントも存在するようです。
まずは所属するプロダクションに条件等の確認を取ることが重要です。

(3)実際に何時まで出演することができる?

上記で説明した、芸能タレント通達に該当しない未成年のタレントは労働基準法第61条により労働者とされ、出演時間制限は以下のように分けるとしています。

・義務教育中のタレント→午後8時から午前5時の間は使用禁止
・義務教育終了後で18歳未満のタレント→午後10時から午前5時の間は使用禁止

この「使用」という部分には、生放送出演、収録はもちろんのこと、打ち合わせやリハーサルなども含まれます。カメラに映さず放送しなければ使用してもいいということにはなりません。
これに加え、義務教育中のタレント使用については労働基準監督署の事前許可を得なければ、そもそも制限時間に関わらず使用することができません。必ず許可申請を行いましょう。

一方、テレビではなく演劇に義務教育中のタレントが出演する場合には、制限時間が少し異なります。演劇の場合、夜公演時のカーテンコールへの参加などを配慮し、午後8時ではなく、午後9時までの使用が認められています。テレビと演劇で制限時間が異なりますので、混同しないようにしましょう。

しかしながら、テレビ・演劇に関わらず未成年タレント(特に13歳以下)を制限時間いっぱいまで出演させる行為はたびたび問題視され、さらには制限時間を超えて使用するという違反ケースも発生しています。
成長期における睡眠不足の問題や、就学時間確保のために制限時間を縮小するべきという意見と、子供の才能を生かし、伸ばすためには学習塾と同様、さらに遅い時間まで延長するべきといった両極の意見があり、使用時間については今後も検討の余地があるとされています。

3.まとめ

未成年者の年齢による行為規制は、各法律、法規ごとに「18歳以下」、「20歳以下」、「15歳以下」などと一定ではなく、また取材やタレント使用について許容される範囲、条件も異なります。
今から行おうとしているインタビュー取材やタレントのキャスティングについて、どの法律に当てはまるのか、年齢や時間帯、一般人については肖像権やプライバシー保護について問題ないかをよく確認し、検討することが必要です。

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