弁護士コラム

2019.04.15

【不動産】マンション管理における会計・税務

マンションを住みやすい環境に維持管理するためには、やはりいろんなお金がかかりますよね。
区分所有であるマンションにおいては、区分所有者たちがお金を出し合うことで、この維持管理を行っていますが、その会計管理を正確に行うことが求められます。

1 マンション管理における会計

(1)管理者の会計報告義務

マンションで複数の入居者が共同して生活するためには、玄関や廊下の清掃、エレベーターの保守点検、管理費用や修繕費用の出納といった日常的な行為から、マンションの外壁補修といった中長期的な補修まで、さまざまな管理行為が必要となります。

そして、区分所有者らは、その持分に応じて共用部分の管理費用を負担しなければなりませんが、補修が発生する度に区分所有者らから必要な資金を集金していては非常に手間がかかり不便ですし、大規模修繕のお金を突然請求されても、通常は払えません。

よって事前に区分所有者らから「共用部分の負担」として、マンションの管理費用に充当するためのお金を徴収することが必要となります。

上記事情により、区分所有者らから徴収した金銭を管理組合が預かりますが、その際管理者には、管理組合の集会において、毎年1回一定の時期に、会計に関して報告をすることが求められます。

(2)適正化法が定める管理組合財産の分別管理

多くのマンションでは、管理組合の業務はマンション管理業者に外部委託されています。そして、マンション管理業者を規制する法律として、平成12年に適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)が公布されました。

この法律では、「マンション管理業者は管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金その他国交省令で定める財産については、整然と他の管理組合の財産と分別して管理しなければならない」と規定されています。

これを受けて、適正化法規則87条2項1号は、マンションの管理業者に以下のうちいずれかの方法で、当該管理組合の金銭を、自己の固有財産及び管理組合の財産と分別して管理することを求めています。

①マンションの区分所有者などから徴収された修繕積立金・管理費用を収納口座に預入し、毎月、その月分として徴収された修繕積立金・管理費用から当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに収納口座から保管口座に移し替え、当該保管口座において預貯金として管理する方法

②マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金を保管口座に預入し、当該保管口座において預貯金として管理するとともに、マンションの区分所有者等から徴収された管理費用を収納口座に預入し、毎月、その月分として徴収された管理費用から当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに収納口座から保管口座に移し替え、当該保管口座において預貯金として管理する方法

③マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金・管理費用を収納・保管口座に預入し、当該収納・保管口座において預貯金として管理する方法

(3)管理組合の会計の基準

管理組合の会計については、統一的な会計基準として成文化されたものが存在しないため、その基準をどこに置くべきかが問題となります。

ここで、管理組合は、営利を目的とする団体ではないため、企業会計の基準をそのまま適用することはできません。一方で、管理組合においても、利害関係者の意思決定に有用な情報を提供するという財務報告の目的は企業と変わりません。

従って、管理組合会計においては、企業会計と共通する一般原則に加えて、管理組合会計に特有の原則によるべきと考えられます。

A企業会計と共通する一般原則

企業会計と共通する一般原則としては、企業会計原則の「第一 一般原則」の7つの原則のうち、以下の5つの原則を管理組合の会計に準用すべきと考えられています。

 

①真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供する者でなければならない

②正規の簿記の原則
企業会計は、全ての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない

③明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない

④継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期係属して適用し、みだりにこれを変更してはならない

⑤保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない

 

B管理組合会計に特有の原則

公益財団法人マンション管理センターは、管理組合の特性から導き出される特有の会計原則として、以下の2つの原則を挙げており、それぞれ標準管理規約の中に同じ趣旨の定めが含まれています。

 

①区分経理の原則
管理費会計と修繕積立金会計は、区分して経理を行わなければならないとする原則

②予算準拠の原則
管理組合の収入および支出は、総会で決議された収支予算書に従って行う必要があるとする原則

 

(4)管理組合が作成する会計書類

管理組合は、会計帳簿に基づき、収支及び財産の状況を正確に反映した怪異系書類を作成する必要があります。
管理組合が作成する会計書類としては、収支予算書、収支決算書及び賃借対象表が挙げられ、管理組合法人の場合には、これらに、財産目録が加わることとなります。

2 マンション管理における税務

マンションの管理組合について特別に定めた税制はないため、一般的な税制をマンションの管理組合に当てはめて解釈し、適用することになります。
ここで、管理組合の形態としては、主に①人格のない社団等である管理組合と②管理組合法人に分けられます。

(1)法人税
① 人格のない社団等の場合
法人税法上、「人格のない社団等は、法人とみなして、この法律の規定を適用する」とされます。そして、公益法人等と同様に、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ、法人税が課されます。

なお、「人格のない社団等」である管理組合が収益事業に対して課税される場合の税率については、公益法人の軽減税率は適用されず、一般の会社などの普通法人と同様です。

② 管理組合法人の場合
管理組合法人については、「人格のない社団等」に該当する管理組合より不利になることを避けるため、区分所有法の規定により、法人税法及びその他法人税に関する法令の規定の適用については公益法人等とみなすとされ、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課されます。

(2)住民税
「人格のない社団等」である管理組合と管理組合法人については、収益事業を行っているか否かに関わらずまず均等割りの税が課され、さらに、収益事業を行っている場合には、収益事業に係る法人税割の税が課されます。

(3)事業税・事業所税
収益事業を行う場合についてのみ課税されます。

(4)消費税
消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に対して課されます。
マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。よって、マンション管理組合が一般的に収受するお金に対する消費税の課税関係は次の通りとなります。

① 駐車場の貸付・・・組合員である区分所有者に対する貸し付けに係るものは非課税となりますが、組合員以外の者に対する貸し付けに係るものは消費税の課税対象となります。

② 管理費等の収受・・・非課税となります。

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