弁護士コラム

2019.02.04

マイナンバー制度とわたしたち

これまで、個人の情報は国や地方公共団体などそれぞれの機関内で、住民票コード、基礎年金番号、雇用保険被保険者番号などそれぞれの番号で管理され、個別の情報を照らし合わせる事務に相当の時間と労力が費やされていました。
マイナンバー制度」の導入によって、国や自治体などで管理されている所得や年金、社会保険などが1つの番号で紐付けされます。これにより行政は、事務等の効率化がはかれ、税や社会保険料の適正な徴収などにも役立てられるとともに、国民は公的な手続きにおいて役所などの窓口を訪れる回数が減るというメリットもあります。
行政が個別の情報を照らし合わせる場面にはどのようなものがあり、どんなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

1.わたしたちの国民生活はどう変わる?

みなさん一度は耳にされたことのある「失業保険」は、雇用保険という制度の一つです。雇用保険にはいわゆる失業保険(正式には「求職者給付」の「基本手当」)とは別に、「高年齢雇用継続給付」があり、60歳時に定年となり再雇用となって賃金が下がってしまった場合に、60歳から65歳までの間賃金低下を補填する制度です。
若い世代にはなじみの薄い制度かもしれませんが、60歳~65歳から年金がもらえるというのは、よく見聞きされていると思います。
この「老齢厚生年金」と「高年齢雇用継続給付」が同時に受けられる場合、実はそれぞれを満額で受け取ることはできず、支給調整が行われることとされているのです。

国民は、それぞれの申請の際に、他方の支給を受けていることを自ら申告しなければならず、時には窓口を何度も行き来しなければならないこともありました。
その上、「老齢厚生年金」は日本年金機構が基礎年金番号で、「高年齢雇用継続給付」は都道府県労働局公共職業安定所が雇用保険番号で管理しているため、両者間での情報照会に相当の時間と労力をかけて支給調整事務が行われていました。
今後は、申請書に「マイナンバー」を記載することで国民は同時受給の申告をする必要がないので、国民の利便性の向上がはかられるとともに、照会事務が不要となるため行政の効率化がはかられます。

また、これまで同時に支給を受けてしまっていた場合、不正受給として返還を求められていましたが、これを未然に防ぐことで不正受給返還にかかる事務が削減され行政の効率化がはかられます。
国民にとっても、不知による申告漏れで返還を求められてしまうリスクがなくなり、利便性向上がはかられるとともに、より不正受給のない公平・公正な社会を実現するための社会基盤となると言うことができます。

2.そもそも「マイナンバー」って?

マイナンバー(個人番号)は、赤ちゃんからお年寄りまで、日本国内に住民票のあるすべての方に割り振られる12ケタの個人番号です。
ちなみに「マイナンバー制度」には個人に付番される「個人番号」のほかに、法人に付番される「法人番号」があり、設立登記法人、国の機関、地方公共団体、その他の法人や団体に13ケタの数字で割り当てられます。
この2つの番号には、公開に関し大きな違いがあり、法人番号はだれでも自由に利用することが可能であるのに対し、個人番号は非公開です。

個人情報が漏えいした場合に、なりすましによる被害を受ける可能性があるためで、漏えいに関しては重い罰則規定が設けられています。

3.わたしたち従業員のマイナンバーはどう使われる?

マイナンバーは赤ちゃんからお年寄りまで、と前述しましたが、お子さんが生まれた際、早速健康保険証のため勤務先に申し出て、お子さんを扶養に入れる手続きが必要になります。
平成30年10月より、家族を扶養に入れる手続きには原則マイナンバーが必須となっています。では赤ちゃんのマイナンバーはいつどのようにして分かり、いつ扶養の手続きは可能になるのでしょうか?

実は、マイナンバー通知カードは市町村に出生届が出されてから2週間~1ケ月で国から発送されます。時期の幅は、マイナンバーの振り出しが出生届の受付順に順次行われるためで、たとえばある月にその市町村に生まれた赤ちゃんが多ければ、その市町村の住民であるお子さんのマイナンバー通知カードの発送に時間がかかってしまう仕組みです。
とはいえ、出産された病院から、「お子さんの健康保険証を窓口に出してください」と催促を受けることもあります。
原則マイナンバー必須の例外として、住民票の写しの添付をもって代えることが可能です。ただし、住民票の写し等の交付申請には手数料300円がかかります。

4.わたしたちのマイナンバーを守る企業としての取り組みは?

雇用保険も全国健康保険協会管轄の健康保険も、会社の従業員として加入している制度です。「高年齢雇用継続給付」の申請手続きや扶養に入れる手続きのため、わたしたちのマイナンバーは会社に取得され利用されます。
前述のとおり、情報漏えいに関しては重い罰則規定が設けられていますが、それでは不十分です。
企業はマイナンバーを安全に管理し、外部への漏えいや紛失を防ぐために、「誰が」「どのような事務で」「どのような」マイナンバーを取り扱うかについて措置を検討することが求められます。

そしてこれらを考慮の上、マイナンバーを安全に管理するための方針(基本方針)と、安全に取り扱うためのルール(取扱規定等)を策定し、安全管理措置を講じることが求められます。
これらの企業の取り組みにより、わたしたちのマイナンバーが守られる仕組みになっています。

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