弁護士コラム

2020.04.14

【相談事例65】産まれた前後で大違い(養子の子と代襲相続)

【相談内容】

先日、祖父が亡くなりました。祖父には私の父を含め2人子どもがおり、私の父は祖父よりも先に亡くなっていました。もう1人の子(私の叔父)は存命です。

実は、父は祖父の実の子ではなく、私が産まれてしばらくしてから養子縁組を行っています。私には弟がいるのですが、弟は父と祖父が養子縁組を行ったあとに生まれています。

父が祖父よりも先に亡くなっているので、私は代襲相続人という立場になり相続できると思うのですがどうすればいいでしょうか。

【弁護士からの回答】

結論からお伝えすると、ご相談者様はおじいさまの財産を相続することができません。
今回は、養子の子が代襲相続人になることができるかという問題についてご説明させていただきます。

1 代襲相続

民法878条1項では「被相続人の子は、相続人となる。」と規定しており、2項では、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき」は、「その者の子がこれを代襲して相続人となる。」と規定しており、代襲相続について規定しています。

この規定だけを読むと、ご相談者様のお父様はおじい様よりも先に亡くなっているので、ご相談者様も代襲相続人になるようにも思えます。

2 養子と直系卑属の関係

もっとも、民法878条2項但し書きでは、「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」と規定しており、被相続人の子の子であっても被相続人の直系卑属でない人は代襲相続人にならないと規定しています。

そして、養子縁組について定めた民法727条では、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と規定しています。
すなわち、養子縁組を行った日に養子と養親(養親の血族)との間には親族関係が発生することになり、養子は養親の直系卑属になります。
しかし、民法727条では、養子と養親との間の親族関係については規定していますが、「養子の子」と養親との間の親族関係については何ら規定していません。

養子縁組をするときにすでに生まれている養子の子については、自らの意思に反して新たな親族関係が結ばれるべきではないとの理由から、養子縁組前に生まれた養子の子は、養子の親との間に血族関係はないと判断されています。

これに対し、養子縁組後に生まれた養子の子については、血族関係にある養子から生まれてきているため、養子の親との血族関係が認められると判断されています(大判昭和7年5月11日)。

これをご相談者様の事例でみると、ご相談者様は養子縁組をする前に生まれてきているので、養親(おじい様)との間に血族関係はなく、残念ながら代襲相続人にはなれません。

これに対し、ご相談者様の弟様は、養子縁組後に生まれているため、代襲相続人になれます。

生まれたのが養子縁組を行った前か後かということのみをもって、代襲相続人になれるか否かという非常に大きな問題に影響を及ぼすことになります。

もっとも、ご相談者様ご本人がおじい様と直接養子縁組を結んでいれば、子として相続人になることができます。

このように、誰が相続人になるのかという問題は、簡単なように見えて非常に複雑な問題があるため、相続が発生した場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

 

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