弁護士コラム

2019.04.25

【相談事例37】「平成32年」と書かれた契約書は有効?~内容の確定性について~

【相談内容】

ニュースで、新元号が発表されたのを見て、気になったことがあります。
私は、5年前(平成26年)に、ある人にお金を貸しており、その際借用書も作成しているのですが、返済期間として「平成26年9月~平成32年8月まで」と記載されています。

新しい年号に変わったことにより、「平成32年」というものが存在しなくなってしまったのですが、契約が無効になったりすることはないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

平成31年4月1日に、新元号が「令和」になることが発表されました。これにより、「平成」は平成31年4月30日で終わり、翌日の5月1日からは、新元号の令和元年5月1日ということになります。

元号が変わること(「改元」といいます。)に伴い、ご相談者様の事例のように従前の元号で表記していた契約の有効性に影響を及ぼすのか否かについて、契約の有効性の要件の説明と併せてご説明させていただきます。

1. 契約(法律行為)の有効性

契約(法律行為)が有効であるための要件のひとつに、法律行為の客観的有効要件というものがあります。

契約が成立する場合には、その契約の内容にしたがった権利、義務が発生することになり、義務に反した場合には損害賠償などのリスクを負うことになります。
したがって、契約(法律行為)内容に関し、内容が確定しない場合や、実現できない場合にまで、権利を取得させたり、義務を負わせたりするべきではないと考えられています。

したがって、契約が成立するためには、契約内容に関する客観的有効要件を満たしている必要があります。
客観的に有効要件には、

①内容の「確定性」
②内容の「実現可能性」
③内容の「適法性」
④内容の「社会的妥当性」

の4つの要件があります。
そして、改元にともなって、存在しなくなった従前の元号による契約書の有効性の問題は、上記要件のうち①内容の「確定性」の問題であるため、内容の確定性の要件についてご説明させていただきます(他の要件については次回以降ご説明させていただきます。)

2. 内容の「確定性」とは

上記のとおり、契約が成立すると、契約内容に沿った義務を負うことになります。

したがって、契約が有効であるためには、契約の内容、すなわち、どのような権利を有し、どのような義務を負っているのかについて(契約の重要な部分)は確定していることが必要であり、内容を確定することができない契約は無効になります。

3. 「平成32年」とする契約は有効か

それでは、ご相談者様の事例のように「平成32年」という期限が設定されている契約は、確定性の要件を満たしているといえるのでしょうか。

確定性については、当事者の合意した内容を合理的に解釈することにより、内容が特定することができる場合でも満たされると解されています。

そして、平成32年を期限とする場合、当事者の意思として「平成という元号が続いている場合のみ有効とする」というような合意をしているということは通常考えられず、平成32年=西暦2020年を期限とするという合意をしていることは解釈上明らかです。

したがって、「平成32年」という期限を設定していたとしても、当事者において西暦2020年が期限であるという契約の内容は確定しているといえるため、内容の確定性の要件を満たしているといえます。

4. 改元にあたっての注意事項

このように、改元が発生した場合に、旧元号のままの書面を作成したとしても、契約の有効性については問題ないのですが、旧元号のまま契約書等を作成することで、相手方との間でトラブルが発生する可能性は否定できません。

したがって現時点で契約書や請求書等の文章を作成する際に5月1日以降に期限などが到来する場合には、新元号により記載するか、西暦を併記するなどして、内容に誤解を与えないよう工夫が必要です。

次回以降にもご説明させていただきますが、契約の有効要件を満たしているかについては意外にも専門的な知識が必要になってきます。

したがって、契約書の作成に際しては、弁護士にご相談いただいたほうがよいでしょう。

 

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