弁護士コラム

2018.09.05

相続財産と可分債権について②~預貯金債権について~

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が無くなりました。先日,父が亡くなりました(遺言書はありません。)。相続人は私を含めて,兄と姉の合計3人です。父の遺産は,銀行に貯金が600万円ありますが,それ以外の財産はありません。調べてみると,預金の契約をしている預金者は,預金の払い戻し請求権という債権を取得していることになるとのことでした。先生のブログでは,可分債権は遺産分割を経ずに相続されるとのことであったため,預金債権についても遺産分割は不要ですよね。

 

【弁護士からの回答】

那珂川オフィス 前回,可分債権については,相続により,法定相続分に従い当然に承継する旨ご説明しております。もっとも。預金債権については,近年最高裁判所にて,異なった判断がなされておりますので,今回は,預貯金債権の取り扱いについてご説明させていただきます。

 

 

1 預金契約について

 銀行等に口座を開設した際には,銀行との間で預金契約を締結していることになります。そして,預金者には,銀行に預けている預金を引き出すことができる債権(払戻請求権)を有していることになります。この払戻請求権のことを預金債権といいます。

 この預金債権については,金銭の支払いを求める債権であり,分割して請求することができる債権であることから,可分債権であることには間違いありません。

 したがって,可分債権である以上,これまでは,通常の可分債権と同様,遺産分割を経なくとも法律上当然に相続されると理解されていました。

 もっとも,銀行実務上,亡くなった方の預貯金を引き出すためには,遺産分割協議書若しくは,相続人全員の合意を必要とし,相続人単独での払戻請求については,応じていませんでした。

 

2 最高裁判所判例について

 このようななか,平成28年12月19日に,最高裁判所において,「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」との判断が出され,従来の預貯金債権に関する判例が変更されることになりました。判例変更の理由としては,遺産分割の場面においては,被相続人の財産をできる限り対象とするのが望ましいことや,上記でご説明した銀行実務上の取り扱いも理由とされています。また,預貯金債権であったとしても実質は現金と同じ取り扱いをされているという実情も踏まえた判断となっております。

したがって,ご相談者さまの事例においても,お父様の預貯金債権については,遺産分割の対象となり,被相続人名義の預貯金を引き出すには,遺産分割協議を行う必要があります。

 このように,何が遺産分割の対象になるかという判断についても,非常に専門的な知識を有するものであるため,相続が発生した場合には,是非一度,弁護士にご相談ください。

 

 

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