弁護士コラム

2018.09.03

相続財産と可分債権について①

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が亡くなりました(遺言書はありません。)。相続人は私を含めて,兄と姉の合計3人です。父の財産整理していたところ,父が,知り合いに対し,600万円貸したことが記載された借用書がみつかりました。貸金債権も,父が有していた財産であるため,遺産分割に関する協議をして分割する必要があるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

弁護士 これまでは,相続財産に含まれない財産について,ご説明させていただきましたが,今回は,相続の対象になるものの,通常の財産とは異なる扱いになる,可分債権についてご説明させていただきます。

 

 

1 可分債権と相続財産

 まず,これまで説明したとおり,民法896条により,被相続人の一身専属の権利義務以外の財産に属した一切の権利義務が相続財産になります。

 そして,相談事例の貸金債権等のように,性質上分割することができる債権を可分債権といいます(逆に,動物の引渡しを請求する権利のように分割することができない債権を不可分債権といいます。)についても,一身専属の権利ではないため当然に相続の対象となることには間違いありません。

 そして,被相続人が遺言書を作成しておらず,相続人が複数人存在する場合には,被相続人の相続財産は,遺産分割の協議が整うまでの間,共同相続人間全員による,「共有」状態となります(民法898条,)。

 したがって,相談事例においても,被相続人の貸金債権についても共有状態となり,遺産分割協議により協議を行う必要があるようにも思えます。

 

2 可分債権と遺産分割の対象

 もっとも,実務上,可分債権については,判例上,不動産等の通常の財産とは異なる取り扱いがなされています。

 すなわち,可分債権については,他の財産と異なり,相続によって,当然に共同相続人に対し,各人の法定相続分にしたがって相続されるとされています。その理由としては民法427条において,可分債権において,債権者が複数存在する場合には,各債権者が等しい割合で権利を有すると規定されていることから,相続により,取得した場合も同様であると考えられているのです。

したがって,ご相談者さまの事例でも,貸金債権(600万円)については,遺産分割を経ることなく,法定相続分にしたがい,200万円ずつ相続されることになります。

もっとも,可分債権については,民法427条で,「別段の意思表示」がある場合には,別の割合によって取得されることになります。したがって,相続人全員が,可分債権について遺産分割の対象にすることに合意した場合には,法定相続分と異なる割合にて相続することも可能になります。

今回は,可分債権一般について,ご説明させていただきましたが,同じ可分債権であっても預金債権については,近年,最高裁判所にて異なった判断がなされております。次回,預貯金に関する取扱いについてご説明させていただきます。

 

 

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