弁護士コラム

2018.08.10

いらない土地を放棄することはできるのか?

古くなった実家の処分を考えています。父のも母も亡くなり,だれも実家に住んでいないため,実家を処分しようと考えていたのですが,先日,実家の登記を取得したところ,土地は私名義になっているのですが(父から相続しました。)建物自体は,祖母名義になっていました。父は叔父との2人兄弟であり,叔父が存命のため,祖母の相続人は私と叔父の2人になるのですが,叔父との関係が悪く,おそらく遺産分割等で協議をすることは困難ではないかと思います。このままだと,使えない不動産についていつまでも固定資産税などを支払い続けなくてはいけなくなってしまうため,土地や建物の所有権を放棄したいと考えているのですが,できるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 相続手続きを行っておらず,不動産等について,多数の,相続人が存在することになってしまい,被相続人名義のままの不動産が残っているということも少なくありません。ご相談者様のご質問にあるように,土地の所有権を放棄することができれば,不要な土地の固定資産税等を回避できるのでしょうか,不動産の所有権の放棄はできるのでしょうか(なお,祖母名義の建物については相続分の放棄が可能ですがこれについては別の機会にご説明させていただきます。)。

 

1 権利の放棄について

 民法は,私的自治の原則という制度を採用しており,権利の行使や放棄については,当事者の自由な意思に基づいて行使することができるという原則を採用しています。したがって,誰かに対し債権を有しているとしても,債権を行使するのか放棄するのかについては,債権者の自由な意思に委ねられています。したがって,債権については債権者の意思で自由に放棄することができます。

 

2 所有権の放棄

 上記のように,私的自治の原則からすると,不動産の所有権という権利を放棄することも自由にできるようにも思えます。もっとも,結論からお伝えすると,現時点では,不動産の所有権の放棄については認められていないというのが現状です。

 先程お伝えした,私的自治の原則にしたがえば,権利の放棄も自由行使することができますが,私的自治の原則には,権利の行使については第三者の利益を害するような場合には公序良俗に反するとして,権利行使が制限されるという側面があります。したがって,権利の放棄についても,第三者の利益を害する場合には放棄が認められないということになります。

 そして,不動産について自由な放棄が認められてしまうと,建物の場合には老朽化した建物があふれかえってしまうおそれもあり,倒壊などにより近隣の住民に損害を被る恐れなどが否定できないため,一般的に不動産の所有権の放棄は認められないとされています(実際,不動産の登記実務上では,放棄による所有権の滅失登記などは一切認められておりません。)。

 

3 今後の課題

 このように,自由な所有権放棄が認められていない以上,不要な土地を処分する場合には,誰かに売却するか,相続の始まった時点で相続放棄をする以外に方法が考えられない状況になります。したがって,遺されたご家族が困らないように生前に財産を処分しておくか,相続が判明した時点ですぐに相続放棄等の対応を行う必要があるため,ご親族がお亡くなりになった場合にはすぐに,弁護士にご相談ください。

 もっとも,ご相談者様の事例では,相続放棄の申述期間も経過してしまっているでしょうし,建物が祖母名義であることから,土地の買い手もなかなかつかないのではないかと思います。この場合,遺産分割調停や審判等で建物についてもご相談者様名義にして,土地と一緒に売却することになると思われます。

 このように,土地の放棄が制度として認められていないこともあり,現在,日本では,空き家として放置されている不動産が非常に多く,社会問題になっています。

このような状態を解消するためにも,不動産の放棄の制度や,一定期間空き家状態となっている不動産に関して,国庫の帰属とするような立法措置により解消していくしかないのではないかと感じています。

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