弁護士コラム

2018.06.08

有責配偶者について⑤~有責配偶者からの婚姻費用請求~

【ご相談者からのご質問】

私は結婚しているのですが(子どもはおりません。),夫以外の他の人を好きになってしまい,その人と不貞までしてしまいました。その人はあまり収入がないので,別居後の生活がきちんとできるか心配です。ですが,インターネットで調べたのですが,私が別居した場合,夫から婚姻費用として一定の生活費がもらえると知りました。夫の収入はある程度あるので,何とか生活ができそうです。

【弁護士からの回答】

不貞行為については,夫だけが行うものではなく,妻が不貞行為を行うケースも少なくありません。婚姻費用についての具体的な内容や問題点については,別の機会でご説明させていただきますが,今回は,有責配偶者からの婚姻費用の請求の可否についてご説明させていただきます。

 

民法760条では,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,かかる規定から,夫婦の一方は,別居していたとしても相手方配偶者の生活費を婚姻費用として支払う義務があります。したがって,収入がある配偶者は,別居した他方の配偶者に対し,離婚が成立するまでの間若しくは,別居が解消するまでの期間については婚姻費用を支払う必要があります。

 では,相談事例のように,妻が不貞行為を行い別居した場合のように,有責配偶者が,他の配偶者に対し,婚姻費用を請求することは認められるのでしょうか。

民法752条では,「夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されており,夫婦間には同居義務があることを定めています。

そして,裁判例では,自らが不貞行為を行ったことで婚姻関係を破綻させ,夫婦での同居することを困難にさせた有責配偶者であるにも関わらず,婚姻費用を請求することは,信義誠実の原則に反するとして,有責配偶者からの婚姻費用の請求がなされた場合には,請求を否定するか若しくは,通常の場合に認められる婚姻費用の金額から減額されるべきであるとしました。したがって,ご相談者様の事例のように,別居の原因がもっぱら不貞行為にある場合には,婚姻費用の請求は認められないでしょう。他方で,不貞行為をしてしまったものの,それ以前より夫婦関係が相当程度悪化していた場合や,相手にも落ち度がある場合には,減額された婚姻費用が認められる可能性があります。

このように,有責配偶者からの婚姻費用請求は原則として認められませんが,相談事例とことなり,別居した有責配偶者側に未成年の子がいる場合には,有責配偶者自身の生活費分の婚姻費用は認められないものの,子の生活費に相当する部分の婚姻費用は認められることになります。

このように,有責配偶者からの婚姻費用の請求は原則として認められません。そればかりか,不貞行為を行ったことにより,ご自身や,不貞行為の相手方において慰謝料を支払うことにもなるため,くれぐれもお控えいただいた方がよいでしょう。

 

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