弁護士コラム

2026.03.06

複数社から借入があるときの債務整理の進め方|返済管理・督促・信用情報のポイントを弁護士が解説


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複数社から借入があるときの債務整理の進め方|返済管理・督促・信用情報のポイントを弁護士が解説

 

借金の返済が難しくなった場合、問題を法的に整理して、生活を立て直す方法が債務整理です。消費者金融やクレジットカード会社など複数にまたがる借入がある場合、返済日や金利がそれぞれ異なり、返済総額や利息負担の全体像を把握しづらくなります。そうしたケースで選択肢となるのが「任意整理」です。任意整理は、弁護士が債権者と直接交渉し、将来の利息をカットするなどして返済計画を見直す手続きです。本記事では、複数社からの借入がある場合に、債務整理を進める際のポイントを弁護士が分かりやすく解説します。

1-1 任意整理とは何か―裁判所を使わない債務整理の仕組み

借金を整理する「債務整理」には、主に自己破産、個人再生、任意整理の3つの種類があります。その中でも、実務において最も多く選択されている手続きが「任意整理」です。
任意整理とは、裁判所を通さずに弁護士が債権者(貸金業者やカード会社)と直接交渉し、将来発生する利息をカットしてもらった上で、元金と合意するまでの利息を3年〜5年程度の長期分割で返済していく仕組みです。
裁判所を介する法的な強制力ではなく、あくまで任意の合意に基づくもので、特定の業者を選んで整理することもできます。
裁判所の統計に記録が残る自己破産や個人再生に対し、裁判所を通さない任意整理は、信用情報機関の統計や各弁護士会等の推計によると年間数十万件規模で活用されていると見られています。裁判所を通さないため、書類の準備が比較的簡便で、官報(国が発行する機関紙)に名前が載ることもなく、債務解決策として最初に選択されやすい手段となっています。

1-2 複数の債権者がいる場合でも対応できるのか

借入先が3社、5社と複数ある多重債務の状態でも、債務整理(任意整理)を進めることはもちろん可能です。むしろ、借入先が多い方ほど、各社の利息負担や振込手数料、返済日の管理コストが積み重なっているため、整理による恩恵をより強く実感できる傾向にあります。
任意整理においては、全ての業者を一括して整理の対象にすることもできますし、後述するように特定の業者に絞って手続きを行うことも可能です。実務上は、家計状況を慎重に分析し、全ての借入を完済できるような返済計画を立てるために、基本的には利息の高い業者をまとめて整理する方向で検討します。
「借入先が多すぎて断られるのではないか」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、債権者の数自体が直ちに手続きの可否を左右するわけではありません。大切なのは、複数の業者に支払っている現在の総額を、交渉によって「いくらまで抑えられるか」を見極めることです。

1-3 「自己破産」や「個人再生」との違い

複数社の借金を解決するにあたり、任意整理以外の法的手段(自己破産・個人再生)との違いを正しく理解しておくことは、納得のいく選択をするために必要です。

自己破産とは

自己破産は、裁判所から免責許可を得ることで、全ての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。収入がなく、元金の分割返済すら困難な場合の救済策になり得ますが、一定以上の財産(不動産や高額な車など)を手放す必要があり、全ての債権者を対象にしなければならないという制約があります。

個人再生とは

個人再生は、裁判所に申し立てを行い、借金総額を原則5分の1程度(最低100万円)まで大幅に減額してもらう手続きです。住宅ローンを守りつつ他の借金を圧縮できるメリットがありますが、官報への掲載や必要書類の作成、履行テスト(積立訓練)を伴います。

自己破産・個人再生に対し任意整理は、借金の元金自体を大きく減らすことは難しいものの、将来利息をカットし、裁判所を介さず解決できる点が特徴です。無理のない範囲で元金を完済していく意思がある方にとって生活への影響を抑えた解決手段と言えるでしょう。

第2章 複数社の借入を任意整理するメリットと注意点

2-1 督促はどの段階で止まるのか

複数社から借入がある場合、各社から交互に届く督促の連絡が大きな精神的負担となります。任意整理を弁護士に依頼すると、弁護士は速やかに各債権者へ「受任通知(弁護士が窓口になったことを知らせる通知)」を送付します。
貸金業法等の規定により、この通知を受け取った債権者は、債務者本人に対して電話や訪問、郵便による直接の督促を行うことが禁じられます。実務上は、弁護士が受任通知を発送してから数日以内には、ほぼ全ての督促が止まることになります。
これにより、日々の返済や督促に追われることなく、冷静に今後の生活再建を考えられる環境を整えることができます。

2-2 返済額や利息はどの程度見直されるのか

任意整理の主な目的は、将来発生する予定の利息を免除してもらい、元金及び合意時点までの利息の合計を分割で支払っていくことにあります。
消費者金融やクレジットカードのキャッシングの多くは年15%〜18%程度の高い利息設定となっていますが、任意整理の交渉が成立すれば、この利息が0%となる形で和解できるケースが多く見られます。
例えば、3社合計で200万円の借入があり、平均年利15%で返済している場合、利息だけで年間約30万円を支払っている計算になります。任意整理によって将来利息がカットされ、60回の分割払いで和解できれば、月々の支払額は約3万3,000円に固定され、支払った全額が元金の返済に充てられるようになります。
このように、返済の終わりが見通しやすくなる点が任意整理の大きな利点といえます。

2-3 信用情報への登録と生活への影響

任意整理を行うと、信用情報機関にその事実が登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」と呼ばれる状態です。登録期間は一般的に完済から5年程度とされており、この期間中は以下の点に留意する必要があります。

任意整理を行った場合の具体的影響
  • 新たな借入(ローン、キャッシング)の審査が通りにくくなる
  • クレジットカードの新規発行や、既存カードの更新・利用ができなくなる
  • 分割払いによる商品の購入(携帯電話端末など)が制限される可能性がある

一方で、銀行口座の利用や給与の受け取り、賃貸マンションの契約(家賃保証会社が信販系でない場合)など、日常生活の多くには直接の影響は生じにくいです。

2-4 家族や職場に知られる可能性はあるか

「債務整理をすると周囲に知られてしまうのではないか」という懸念を多くの方が抱かれますが、任意整理は他の手続きと比べても、そのリスクを低く抑えることができます。裁判所を介さないため、自宅に裁判所からの書類が届くことはなく、官報に名前が載ることもありません。
家族に知られないための対策としては、例えば、弁護士からの郵送物を個人名で送る、あるいは連絡方法を本人の携帯電話のみに限定するといった実務的な配慮が考えられます。職場についても、勤務先から直接借入をしている場合を除き、弁護士が職場に連絡することはないため、通常は知られることはありません。
債務について何も対策せず、債権者からの督促を長期間放置していると、債権者が裁判(訴訟や支払督促)を起こすことがあります。裁判手続きを経て給料の差し押さえが実行されると、勤務先に裁判所から通知が届くため、借金の存在を知られることになります。こうした事態を防ぐためにも、裁判を起こされる前の「早めの対応」が重要となります。

第3章 任意整理の実務フロー―相談から和解成立まで

3-1 相談時に弁護士が確認する借入状況と収支のポイント

任意整理の第一歩は、弁護士による現状の正確なヒアリングから始まります。
特に複数社から借入がある場合、どこにいくら返しているのか、ご本人でも正確に把握できていないケースが少なくありません。そのため、まずは以下の3点を中心に確認を行います。

借入先と残高

どこのカード会社・消費者金融から、現在いくらずつ借りているか

取引の期間

いつ頃から借入を始めたか(古い取引の場合、過払い金が発生している可能性があるため)

家計の収支状況

月々の手取り収入と、家賃・食費・光熱費などの固定費を除いて、無理なく返済に回せる金額はいくらか

これらの情報は、後に各債権者と和解交渉を行う際の返済計画の基礎となります。手元にカードや利用明細がなくても、業者名さえ分かれば手続きは進められるので、まずは記憶にある範囲でありのままを伝えることが大切です。

3-2 受任通知による督促停止と引き直し計算による正しい債務額の確定

依頼を受けた弁護士は、速やかに全ての債権者へ受任通知を送付します。第2章で触れた通り、これにより督促が止まり、和解成立まで返済が一時的に止まるのが通常です。
同時に、弁護士は債権者に対して、これまでの全ての貸し借りの記録である取引履歴の開示を求めます。この履歴を利息制限法に基づき再計算(引き直し計算)することで、法律上の正確な残高を確定させます。
債権者から履歴を取り寄せて精査するため、この債務額の確定までには、通常1ヶ月から3ヶ月程度の期間を要します。この期間を利用して、生活の立て直しや和解後の返済準備を行うケースが多いです。

3-3 将来利息のカットと分割回数を決めるための債権者との和解交渉

正確な債務額が確定した後、弁護士は各債権者と個別に交渉を開始し、主に以下の2点について合意を目指します。

将来利息のカット

和解成立後、完済までに発生する予定の利息を全て免除してもらう交渉です。

分割回数の設定

残った元金を何回払いで返済するかを決めます。実務上は60回(5年)を一つの目安としますが、債権者によっては36回(3年)までしか認めないなど、業者ごとに対応が異なる場合があります。

複数社ある場合、準備が整った業者から順次和解書(合意書)を取り交わしていく場合と、全ての業者と同時に和解が成立させる場合があり、どちらを取るかは各債権者との合意内容よって異なります。

第4章 任意整理のデメリットと見落としがちなリスク

4-1 保証人がいる借入を整理対象から外すべき理由とリスク

複数社の中に、親族や知人が保証人・連帯保証人になっている借入がある場合、その業者を任意整理の対象に含めるかどうかは慎重に判断しなければなりません。
任意整理の交渉を開始(受任通知を送付)すると、債権者は主債務者(本人)への督促を止める代わりに、保証人に対して残金の一括返済を請求するためです。これは法律上の当然の権利として行われるため、事前に相談なく手続きを進めると、保証人に多大な経済的負担と精神的なショックを与えることになります。
そのため実務では、その業者だけを任意整理の対象から外す選択を検討することが多いです。

4-2 銀行口座の凍結やクレジットカード強制解約への備え

銀行からの借入(カードローンなど)を任意整理の対象にする場合、その銀行の口座が一時的に凍結されるというデメリットがあります。銀行は貸し倒れを防ぐため、口座にある預金と借金を相殺(差し引き)し、入出金を一切できない状態にします。
この際、給与振込口座や公共料金の引き落とし口座が凍結されると、生活に支障をきたすため、受任通知を送る前に振込先の変更や残高の引き出しを確実に行わなければなりません。
また、整理対象にしなかったクレジットカードであっても、他社を任意整理した情報が信用情報機関に登録されると、カード会社が行う定期的な審査(途上与信)によって、いずれ強制解約となる可能性がある点にも留意が必要です。

第5章 任意整理での解決が困難な状況と、その際の次なる選択肢

5-1 家計収支から見た返済原資が不足している場合

任意整理は、あくまで「元金を分割して完済すること」を前提とした手続きです。そのため、家計の見直しを行っても、元金の分割払いに充てる返済原資(月々の収入から家賃・食費・光熱費などの固定費を除いて返済に回せる余剰金)が不足している場合には、任意整理を成立させることが難しくなります。
実務上の目安としては、借金の総額を60回(5年)で割った金額を、毎月の余剰金が下回っている場合、和解案が債権者に受け入れられない可能性が高まります。このようなケースでは、無理に任意整理を強行しても、再延滞によって事態が悪化するリスクがあります。
対応策としては、借金自体を大幅に圧縮する「個人再生」や、返済義務を免除してもらう「自己破産」への切り替えを、早期に検討することが現実的な解決策となり得ます。

5-2 特定の債権者による延滞が長期化している場合

複数社からの借入のうち、すでに数ヶ月以上にわたって延滞が続いている業者がある場合、任意整理の交渉は通常よりも厳しくなります。延滞が長期化すると、債権者側で一括返済を求めるという方針が固まってしまったり、将来利息のカットに応じないといった強硬な姿勢をとられたりすることがあるためです。
また、一部の債権者によってすでに債権が保証会社に代位弁済(肩代わり)されていたり、債権回収会社(サービサー)に譲渡されていたりする場合も、交渉条件が厳格化する傾向にあります。こうした状況では早期の対応が重要です。

5-3 訴訟提起や給料の差し押さえが迫っている場合

債権者からの督促を放置し続けたことにより、債権者が訴訟を起こした場合、裁判所から訴状や支払督促が届きます。これをさらに放置すると、債権者は確定判決等を得て、給料や預金口座の差し押さえ(強制執行)に踏み切る可能性があります。
この段階まできてしまうと、通常の任意整理の交渉だけでは対応が難しいケースがあります。対応策としては、弁護士が速やかに受任通知を送付すると同時に、裁判手続きの中で和解(訴訟上の和解)を目指す交渉を行います。それでも緊急性が高い場合は、民事再生(個人再生)などの法的整理を申し立てて、強制執行の中止・停止を求める等の法的手段を講じる必要があります。

第6章 複数社からの借入を解決するために

複数社から借入がある多重債務の状態は、単に返済が苦しいだけでなく、利息負担の増大や管理の煩雑さによって、自力での完済が難しくなっている状況といえます。
もし、現在の収入から月々の返済額を捻出するのが困難だと感じているのであれば、まずは私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスへ現状をありのままご相談ください。現在の債務額と家計状況を客観的に分析することで、任意整理が可能か、あるいは他の法的整理が必要か、最適な解決策を見出すことができます。一刻も早く専門家の助力を得ることが、生活再建に向けた第一歩となり得ます。

 

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