弁護士コラム

2026.01.15

離婚調停で母親が親権を取れないことはある?不利になるケース・状況を弁護士が解説


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離婚調停で母親が親権を取れないことはある?不利になるケース・状況を弁護士が解説

 

近年の裁判所は、母親というだけで親権を判断せず、より具体的な子どもの利益を重視する傾向になっています。
母親であれば親権は取れるはずと思っている方も多いかもしれませんが、実務の現場では、母親側が思わぬ理由で親権を断念せざるを得なくなるケースも起こります。
この記事では、母親が親権争いで直面するリスクや、不利になりやすいシチュエーション、後悔しないために確認すべきポイントについて弁護士がわかりやすく解説します。

第1章 母親が親権を確保できない事態はなぜ起こるのか

1-1. 性別よりも実際の育児実績と子の利益が重視される傾向

現代の離婚調停において、裁判所が親権者を決める基準は「子の利益(子の福祉)」です。これは、どちらの親と暮らすことが子どもの幸せに繋がるかという視点です。
かつて裁判実務上重視されていた「母性優先の考え方」により母親が有利な傾向にありましたが、現在はそれだけで決まることはなく、これまで誰が食事や寝かしつけ、通院などの育児を主導してきたかという具体的な監護の実績がより多角的・実質的に評価されるようになっています。
まずは、母親であるというだけで自動的に親権が決まるわけではないことを理解しておく必要があります。

1-2. 「母親だから有利」という甘い見通しによる準備不足

生活設計が不明確、離婚後の育児体制を具体的に練れていないなどお子さんの養育に関する準備が不十分な状態で、母親だからおそらく大丈夫だろうとして調停を進めてしまうのは少し危険です。
父親側が同じように親権を欲しいと思っているときに、綿密な養育計画や親族のサポート体制を整えて調停に臨んだ場合、こうした差があると、調停委員や裁判官に対して父親の方が子どもを育てる覚悟と環境が整っているというような印象を与えてしまい、結果として不利な判断を下されるリスクが高まります。

第2章 母親が親権を取れない可能性がある養育環境の例と解決のためのヒント

2-1. 深夜勤務や不規則な就労による直接監護の困難さ

仕事を持つ母親が親権を争う際、懸念されるのが就労形態です。働いていること自体が不利になるわけではなく、深夜まで及ぶ勤務や、休日が不定期で子どもとの時間が確保しにくい状況は、裁判所から「直接の監護(日常的な育児や生活の世話、見守り)が困難である」と見なされる要因になります。
特に、子どもがまだ幼い時期に、母親が夜間に家を空けざるを得ない場合、その間の監護を誰が行うのかは厳しく問われます。

解決のヒント

まずは勤務先に相談し、育児短時間勤務や始業・終業時刻の変更が可能か確認してみましょう。調整が難しい場合は、実家の両親による送迎や宿泊を伴う協力体制を具体化し、書面で提示することが有効です。また、病児保育や民間のベビーシッターなどを利用登録し、具体的な緊急時のフローを可視化しておくことで、直接監護の不足を補う姿勢を示すことができます。

2-2. 経済的な困窮により住居や食事を提供できない状況

親権の判断において、親の年収の額がそのまま決め手になることはほとんどありません。経済力に差があっても、養育費の支払いなどによって補完されるべきと考えられているからです。
しかし、母親側の収入があまりに不安定で、生活保護基準を大きく下回るような困窮状態にあり、かつ実家などの支援も期待できない場合はその限りではありません。
たとえば、定まった住居がなくネットカフェを転々としている、子どもに適切な食事を満足に与えられないといった実態がある場合は、親権者としての監護体制に慎重な判断がなされる可能性があります。

解決のヒント

現在の収入が低くても、離婚後に受け取れる養育費や児童扶養手当、児童手当などを合算した「将来の家計収支見込み」を詳しく算定しましょう。住居については、公営住宅への入居申し込みや、実家での同居など、安定した居住基盤が確保できることを証明する必要があります。自治体の福祉窓口で利用可能な公的支援制度を把握し、生活再建の具体的な計画を立てることから始めましょう。

2-3. 親族からの協力が得られず、母親一人での育児環境

母親がフルタイムで働きながら一人で子どもを育てる場合、裁判所は、子どもの発病や母親の残業など、突発的な事態になった場合のサポート体制を問う傾向があります。
近隣に頼れる親族がいないようなほぼ母親だけでの育児環境になるような場合は、少し注意が必要です。特に、父親側の実家が強力な育児支援体制をアピールしている場合、ここの充実度の差が判断に影響を与える可能性があります。

解決のヒント

遠方などで親族の協力が物理的に得られない場合は、地域のファミリーサポートセンターや民間サービス、放課後児童クラブなどの複数を組み合わせ、突発的な事態が起こった際のサポート体制をつくりましょう。可能であれば、実際に面談などを済ませ、離婚後に実際に利用ができるということを具体的に提示できると監護体制を整えようとしているということへの信憑性も高まります。

2-4. ギャンブルや過度な浪費癖などの生活態度

母親自身の生活態度に著しい問題がある場合も親権獲得には不利にはたらきます。代表的なのは、パチンコや競馬などのギャンブルにのめり込み、育児放棄(ネグレクト)に近い状態になっているケースや、借金を繰り返して家庭生活を破綻させているケースなどです。
こうした行為は、「子どもに適切な生活習慣を身につけさせることができない」という判断を促す傾向があります。また、自宅がゴミ屋敷化しているなど、衛生環境を維持できない場合も、子どもの心身の健康を損なうおそれがあるとして、親権者としての適格性を否定される要因になりやすいといえます。

解決のヒント

過去に問題があったとしても、現在は改善されていることを客観的に示す必要があります。家計簿をつけて支出を適切に管理している事実や、借金の完済証明、依存症克服のためのカウンセリング受診記録などが客観的な資料になり得ます。
自宅の清掃状況を写真で記録するなど、衛生環境を維持できているということを客観的に証明することも有効です。

2-5. 安全確保が難しいと判断される精神的な疾患

うつ病や統合失調症など母親が精神的な不調を抱えている場合、病状の程度によっては親権判断において慎重に検討される対象となる場合があります。
ただし、病気であること自体を理由に即座に親権を失うわけではありません。裁判所が検討対象とするのは、病状が「子どもの安全な養育を妨げる要因になっていないか」という実態です。たとえば、幻覚や妄想によって子どもに危害が及ぶおそれがある場合や、重度の意欲低下により子どもの食事や衛生管理ができないなどの状況があれば、親権獲得が難しくなる可能性があります。

解決のヒント

主治医による「適切な監護が可能である」旨の診断書や、治療に前向きに取り組んでいる通院実績を提示しましょう。また、体調が優れない時に育児を代行してくれる親族や福祉サービスとの連携が取れていることを明確に示すことも大切です。

第3章 不倫をした母親の親権獲得は難しいのか?

3-1. 離婚原因としての不倫と親権判断は別問題

法律相談の場でよくある誤解が、「不倫(不貞行為)をした親は親権を持てないのではないか」というものです。法律上の原則としては「不倫という離婚原因を作ったこと(有責性)」と「親権者としての適格性」は別問題とされています。つまり、夫以外の男性と関係を持ったからといって、それだけで即座に親失格という判定が下るわけではないということです。
不倫はあくまで夫婦間の問題であり、子どもへの愛情や適切な監護が行われている場合、親権が認められるケースはあります。

3-2. 不倫が親権判断に影響するケース①:不倫相手を優先し、子どもの食事や身の回りの世話を怠った場合

一方で、不倫が親権判断に直結するケースもあります。
それは、不倫行為によって「子どもの監護がおろそかになっている」場合です。たとえば、不倫相手と会うために夜な夜な子どもだけで留守番をさせたり、不倫相手との時間を優先して子どもの食事を作らなかったり、保育園の送迎を忘れたりといった事実がある場合です。
このような場合は、裁判所から監護能力に欠けると評価され、親権獲得が難しくなる可能性があります。

3-3. 不倫が親権判断に影響するケース②:子どもの前で不倫相手と接触するなど精神面に悪影響を与えた事実

さらに深刻なのは、不倫相手を自宅に連れ込み、子どもの目の前で接触を持つようなケースです。こうした行為は、子どもに多大な心理的ストレスを与え健全な発育を阻害するものとして、親権判断において心理的虐待に近い行為と見なされる可能性があります。
また、不倫相手が子どもに対して暴言を吐いたり、不倫相手による子どもへの体罰を母親が黙認したりしている状況が客観的証拠をもとに認められた場合、母親の親権確保は非常に難しくなるといえます。
親権判断は常に「子の利益」に立ち返るため、母親の行動が子どもに直接的な悪影響を及ぼしているかどうかが判断の境界線となります。

第4章 一定の年齢に達している子どもの希望が尊重され親権判断に影響があるケース

4-1. 10歳以上の子どもが「父親と暮らしたい」と明確に希望した場合

子どもが一定の年齢(おおむね10歳以上、特に法的に意思が尊重される15歳以上)に達している場合、親権判断における子ども自身の意思の重要性は高まります。
子どもが「お母さんとは一緒に暮らしたくない」「お父さんと暮らしたい」とはっきり意思表示した場合、たとえ母親側に大きな落ち度がなくても、子どもの意思に反して母親を親権者とする判断が慎重に検討される傾向が強まります。思春期を迎えた子どもの場合、無理に母親との生活を強いることは、子どもの精神的な不安定さや、非行などを招くおそれがあると判断される傾向があるからです。

4-2. 子どもの意向を無視し、母親の都合で転校などを強いるような場合

お子さんが「今の学校に通い続けたい」「この町を離れたくない」という強い希望を持っているとき、母親のもとで養育をすることで転居や転校が発生するような場合は、親権判断において影響が出る可能性があります。
裁判所は、子どもの生活環境の継続性を重視するため、母親が親権者になることでお子さんの生活基盤が大きく壊れてしまうような場合は、その判断が慎重になる場合があります。

4-3. 子どもの母親に対する「本音」が調査官に認定されたとき

調停の中で、家庭裁判所の調査官が子どもから直接話を聞く状況も起こり得ます。その際、子どもが母親に対して強い恐怖心を抱いていたり、あるいは極端に冷淡な態度を示したりすることがあります。
その原因が、過去の過度な叱責や感情的な爆発、あるいは「母親の顔色を常に伺わなければならない」という圧迫的な家庭環境にあったと調査官が判断した場合、母親への親権指定は回避される傾向にあります。
子どもが母親の前では「お母さんといたい」と言っていても、調査官との面談で本音が明らかになるケースは少なくありません。

第5章 不利な状況を回避し、子どもとの生活を守るために

現代の離婚調停において母親が親権を確保するためには、「母親であること」だけに甘んじず、以下のような点に留意する必要があります。

• 「子どもの利益」を最優先する裁判所の視点を理解する
• 仕事と育児を両立させるための具体的かつ現実的な養育計画
• 自身の健康状態や生活態度が子どもに悪影響を与えていないか客観的に見つめる
• 子どもの意思が尊重されることを理解し、子どもの気持ちを置き去りにしない

ただし、親権の判断は個々の家庭の事情により大きく異なります。本記事の内容がすべてのケースに当てはまるわけではないため、具体的な状況については弁護士へ個別に相談することをおすすめします。
私たちNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスは、地域に根差した弁護士として、お一人お一人に沿った最適な戦略を提案いたします。大切なのは、「親権を取れないかもしれない」という不安を一人で抱え込まないことです。自信を持ってお子様との新しい生活に踏み出せるよう、私たちが全力でバックアップいたします。まずはお気軽にご相談ください。

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