弁護士コラム

2026.01.09

親権を夫に取られたら取り返すことは可能?子どもを連れ去られた際の対処法と親権獲得のポイントを弁護士が徹底解説


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親権を夫に取られたら取り返すことは可能?子どもを連れ去られた際の対処法と親権獲得のポイントを弁護士が徹底解説

 

「夫に子どもを連れて行かれた」「協議離婚で親権を夫に譲ってしまったが、やはり取り戻したい」――離婚において親権は、最も譲れない権利の一つといえます。一度夫に渡ってしまった、あるいは夫が事実上確保している親権を取り戻すことは簡単ではありませんが、状況や適切な法的手段によっては、再びお子様と一緒に暮らせる可能性も残されています。本コラムでは、親権を夫に取られた状況から「親権者変更」や「子の引き渡し」を目指すための具体的な法律知識と、裁判所が重視する判断基準、早期解決に向けた行動を、弁護士の視点で分かりやすく解説します。

第1章 親権を夫に取られた状況別の「取り戻せる可能性」

「親権を夫に取られた」という状況は、いくつかのパターンに分類されます。どの段階にいるかによって、法的に取り得る手段や、親権を取り戻せる難易度が大きく変わってきます。まずは冷静に、ご自身の状況を整理してみましょう。

1-1 離婚届の提出時に夫を親権者として指定した場合

協議離婚において、離婚届の親権者欄に夫の名前を書いて提出してしまったケースです。一度戸籍に記載された親権者を変更するには、当事者間の合意だけでは足りず、必ず家庭裁判所での手続きが必要になります。この場合、家庭裁判所からは「なぜ当時は夫を親権者としたのか」「その後、どのような事情の変化があったのか」などが問われます。

1-2 離婚調停・裁判で夫が親権者として認められた場合

裁判所の手続きを経て、一度「夫が親権者として適任である」という公的な判断が下されたケースです。これを覆すには、前回の判断を維持することが「子の利益」に反すると証明しなければならず、実務上は高いハードルといえます。夫側の監護状況に重大な欠陥が生じているなど、決定的な証拠が求められます。

1-3 離婚前だが、夫が子どもを連れて別居を開始した場合

まだ離婚は成立していないものの、夫が強引に子どもを連れ去り、別居先で育てているケースです。日本では「監護の継続性」という考え方が重視されるため、放置すると「今の環境で安定している」とみなされ、最終的な親権争いで不利になるリスクがあります。早急に法的なアクションが必要といえます。

1-4 事実上、夫が子どもを監護しており手出しできない状態

離婚後、親権は自分にあるにもかかわらず、夫が子どもを返してくれない、あるいは面会交流の際にそのまま連れ去ってしまった場合です。このケースでは親権の有無にかかわらず、実力行使での奪還はリスクが伴うため、裁判所を通じた「子の引き渡し」の手続きを検討する必要があります。

第2章 夫に取られた親権を取り戻すための法的ルート

感情的に「返して」と訴えるだけでは、状況は好転しません。法律の専門家である弁護士が介入する場合、主に以下の法的ルートを軸に戦略を立てます。

2-1 「親権者変更調停・審判」による親権の移転

すでに離婚が成立し、戸籍上の親権者が夫になっている場合の対処です。家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立て、話し合いを行います。合意に至らない場合は「審判」に移行し、裁判官が諸般の事情を考慮して決定を下します。民法第819条第6項に基づき、「子の利益のために必要があると認めるとき」に変更が許されます。

2-2 「子の引き渡し請求」と「監護者指定の申し立て」

離婚前、あるいは事実上の連れ去りが発生している場合の有効策の一つです。親権争いの決着には時間がかかるため、まずは監護者(実際に日常的な養育を行う人)として自分を指定してもらう「監護者指定の申立て」を行い、同時に「子の引き渡し」を求めます。
裁判所の決定が出ても相手が応じない場合は、間接強制などの強制執行手続きが検討されることがあります。ただし、子どもの心身への影響を考慮し、実務上は慎重に運用されるため、必ずしも直ちに引き渡しが実現するとは限らない点には注意が必要です。

2-3 緊急性が高い場合の「審判前の保全処分」

子どもの教育環境が著しく損なわれている、あるいは夫が子どもを海外へ連れ出そうとしているなど、一分一秒を争う状況では「審判前の保全処分」を申し立てます。これは正式な決定が出る前に、暫定的に子どもを保護したり、引き渡しを命じたりする手続きです。

第3章 裁判所が「親権を夫から妻へ変えるべき」と判断する基準

裁判所が親権者を判断する際に重視するのは、「子どもの幸せ(子の利益・福祉)」です。抽象的に聞こえるかもしれませんが、実務ではいくつかの明確な指標があります。親権を取り戻すためには、これらの基準に照らして「自分がいかに適任か」を客観的に示し、裁判官や調査官の心証を好転させる準備が必要です。

3-1 母親だから有利とは限らない「子の利益」の原則

かつては「母性優先の原則」がありましたが、現代では「どちらが主たる監護者として機能してきたか」という実態が重視されます。単に性別が女性であることだけでは、親権奪還の決定打にはなり得ません。
例えば、子どもの食事の好み、予防接種の履歴、学校での友人関係など、これまでいかに深く育児に関わってきたかを具体的なエピソードや記録(育児日記や写真など)とともに整理しておくことです。これらを証拠として提示することが、家庭裁判所調査官に対し「母親が子どもの心身の状況を細かく把握しており、主たる監護者として不可欠な存在である」という心証の形成につながり、判断を有利に導ける可能性が高まります。

3-2 継続性の原則:今の生活環境が安定しているか

裁判所は「環境の急変は子どもにストレスを与える」と考えます。そのため、夫のもとで子どもが長期間安定して生活し、心身ともに健やかに育っている場合、あえてその環境を壊してまで親権を変えるべきではないと判断されやすい傾向があります。これを打破するには、夫のもとでの生活環境が必ずしも安定していないことを論理的に主張しなければなりません。例えば、子どもが情緒不安定になっている、転校を繰り返しているといった客観的な事実があれば、環境を維持することの難しさを立証する材料となります。憶測ではなく、学校の欠席日数や通知表の所見、医師の診断といった客観的資料を収集することで、裁判所に「環境を変えることの正当性」を認めさせる一助となり得ます。

3-3 監護能力と生活環境:どちらが適切に育てられるか

親自身の心身の健康状態、経済力、居住環境、また仕事で忙しい親に代わり、親族(子の祖父母など)がどの程度サポートできるかといった監護補助者の存在も重要な評価対象となります。
親権を取り戻した後の生活について、自分が働いている間、実家の両親などがどのように協力してくれるかを具体的に書面化し、プランを提示しましょう。

3-4 子どもの意思の尊重:15歳以上と10歳前後の扱いの違い

子どもが15歳以上の場合は、本人の意見聴取が義務付けられており(家事事件手続法152条)、10歳前後でもその意思は調査官調査を通じて強く尊重されます。
子どもの意思が判断を左右するからといって、決して「お母さんと暮らしたいと言って」と無理強いをしてはいけません。こうした働きかけは調査官に対しても不利な心証を与えてしまいます。
本心で「お母さんといたい」と思ってもらえるよう、面会交流などの限られた機会に、安心感を与える関わりを積み重ねることが親権獲得への道を切り拓くことにつながるといえます。

3-5 兄弟姉妹不分離の原則:子どもたちが離ればなれにならない配慮

兄弟姉妹は一緒に育つのが望ましいという「兄弟姉妹不分離」の考え方は、裁判実務において今も存在します。もし兄弟が離ればなれになっている、あるいは夫が一部の子どもだけを連れ去っている状況であれば、全員をまとめて引き受ける体制を整えていることが対抗策の一つになり得ます。一人だけを引き取るという主張は、本人の強い希望など特別な事情がない限り、裁判所に「子どもの福祉を二の次にする提案」と受け取られるリスクがあるため慎重な検討が必要といえます。

3-6 面会交流の許容性:相手に会わせる寛容さはあるか

近年、親権者としての適格性を判断する上で「もう一方の親との交流をどの程度認めるか」という寛容性が重視されるようになってきています。夫への憎しみや葛藤が深くても、裁判手続きの中では「子どもにとって父親との交流が必要であること」を理解し、円滑な面会交流に協力する姿勢を明確に示しましょう。この姿勢は「フレンドリー・ペアレント(寛容な親)」という考え方に通じるもので、日本の裁判実務でも「子どもの利益を優先できる親である」という評価につながりやすい傾向があります。逆に交流を頑なに拒否する態度は、親権奪還において足かせとなるリスクがあることを念頭に置いておきましょう。

第4章 親権変更が認められるための「事情の変化」とは?

一度決まった親権を変更するには、「離婚時には予想できなかった重大な事情の変化」があり、かつ変更することが「子の利益」にかなうと判断される必要があります。この高いハードルを超えるためには、法的に意味のある事実を積み上げなければなりません。

4-1 夫側(現在の親権者)の監護状況に問題が生じたケース

夫がギャンブルに溺れている、育児を放棄して夜な夜な出歩いている、あるいは仕事が多忙すぎて子どもが常に独りぼっち(孤食)であるなど、今の環境が子どもにとって不適切であると判断される場合、それは親権変更を検討すべき重大な事由となり得ます。
しかし、「夫は育児をしていないはず」という単なる思い込みや推測を主張しても、裁判所や調査官の理解は得られません。子どもからの具体的な聞き取り内容や、学校の先生・近隣住民からの指摘など、第三者が見ても「監護に欠陥がある」と判断できる客観的事実を時系列で整理して提示する必要があります。

4-2 夫が再婚し、継母との関係が子どもに悪影響を与えている場合

夫の再婚相手と子どもの折り合いが悪く、家庭内に居場所を失っているケースでは、親権変更が認められる可能性が浮上します。単に「再婚したから」というだけでは不十分であり、再婚を機に子どもの成績が急落した、表情が暗くなった、家に帰りたがらないといった「具体的な悪影響」が生じていることを立証する必要があります。子どもの変化を日記などに記録し、必要であれば児童精神科医などの診断を仰ぐことで、環境の変化が子どもの福祉を損なっていることを公的に証明する準備を進めましょう。

4-3 夫による虐待やネグレクトが発覚した緊急事態

暴力、暴言、食事を与えない、あるいは適切な医療を受けさせないといった不適切な関わりがある場合、裁判所は迅速な保護と親権の変更を検討する可能性が高まります。ただし、虐待の事実認定には厳格な証拠が求められるため、専門家と迅速に連携することが不可欠といえます。

4-4 妻側(自分)の受け入れ態勢が劇的に改善したケース

「離婚時は病気や経済的不安で育てられなかったが、現在は健康を取り戻し、安定した収入とサポート環境が整った」という状況は、親権変更の後押しになります。しかし、それだけでは「子の利益のために親権の変更が必要」とは判断されにくいのが現実です。前述したような「夫側のマイナス要因」とセットにし、こちらの整った状況と対比させる形で主張を組み立てることが重要といえます。
現在の健康診断書、雇用契約書、実家の協力体制を記した報告書などを取り揃え、「今の自分こそが子どもにとって安心できる居場所を提供できる」ということを、証拠に基づいて論理的に訴えかけましょう。

第5章 夫に子どもを連れ去られた直後に行うべき初動対応

5-1 自力で連れ戻す「自力救済」はNG

夫の家から無理やり子どもを連れ戻す行為は、その態様によっては、たとえあなたが親権者であっても「未成年者略取誘拐罪」に該当すると判断されるリスクがあります。このような行動をとってしまうと、裁判所からもマイナスな印象を受け、親権争いで不利になる可能性が高いといえます。

5-2 警察への相談と「安否確認」の重要性

夫の連れ去りが暴力的なものである場合や、子どもの安全が危ぶまれる場合は、警察に相談しましょう。民事不介入と言われることもありますが、「安否確認」の名目で状況を確認してもらうことは可能なケースが多いです。

5-3 速やかな弁護士への相談と証拠の確保

連れ去られた際の日時、態様、その後の夫とのやり取り(LINEやメール)はすべて保存しておきましょう。これらは後の裁判手続きで、夫の非協力性や不当な監護を立証する証拠になります。

第6章 親権争いで不利にならないための注意点

6-1 感情的な対立が子どもに与える心理的ダメージ

親同士が激しく罵り合ったり、互いを否定し合ったりする姿を見せることは、子どもの心に大きな傷をつくります。これが深刻化すると、家庭裁判所の調査の際、「お父さんもお母さんも嫌い」「どっちと暮らしたいか分からない」と心を閉ざしてしまうことにもなりかねません。
どんなに夫への怒りがあったとしても、子どもの前では「パパとママの問題であって、あなたのせいではない」と伝え続け、子どもを争いの道具にしないという断固たる姿勢を貫くことが大切です。調査官は、親が子どもの心理的な負担をどれだけ理解し、配慮できているかを監護能力の一部として評価します。子どもの心の安定を最優先する振る舞いを見せることは、結果として「この親こそが子どもの健やかな成長を支えられる」というプラスの評価につながるといえます。

6-2 相手を誹謗中傷することの法的デメリット

夫をSNSで攻撃したり、共通の知人や親族に悪口を言いふらしたりする行為は、現代の親権争いにおいて高いリスクを伴います。これらの証拠を夫側に握られてしまうと、裁判所から「相手との協調性(フレンドリー・ペアレントの精神)が著しく欠如している」と判断される要因になってしまうからです。
裁判所が求めているのは、離婚後も子どものために相手方と適切な連絡を取り合い、円滑な面会交流を許容できる親です。不満がある場合でも公の場や記録に残る形での発言は慎み、主張すべきことはすべて弁護士を通じて法廷という適切な場で行いましょう。

6-3 調査官調査(家庭裁判所)に向けた準備不足のリスク

家庭裁判所調査官は、心理学や社会学の専門家であるケースが多く、彼らの作成する調査報告書は、裁判官の判断に影響を及ぼします。しかし、限られた時間内で行われる調査官との面談で、自分の考えを正確に彼らに伝えるのは容易ではありません。自力だけで臨み、焦りから的外れな回答をしてしまったり、夫への非難ばかりに時間を費やしてしまったりするのは、判断を誤るリスクとなります。こうした事態を回避するため、頼りになるのが弁護士などの専門家です。調査官からの想定される質問を整理し、これまでのエピソードを具体的かつ客観的に話せるようシミュレーションしておくことが重要といえます。

第7章 よくある質問:親権を取り戻したいママたちの疑問

Q1 一度親権を譲ったら、一生取り戻せませんか?

いいえ、一生ではありません。しかし、簡単ではありません。

家庭裁判所に、以前とは事情がどのように変わり、自分と暮らす方が子の利益になる理由を明確に証明する必要があります。子どもの成長に伴い、本人が「お母さんと暮らしたい」とはっきり意思表示をすることも転機となり得ます。

Q2 経済力が夫より低くても親権者になれますか?

はい、可能性はあります。

経済力の差は、養育費で補填するという考え方が一般的です。あなたが子どもに対して適切な愛情を注ぎ、日々の世話を丁寧に行える環境であれば、夫より年収が低くても親権をあきらめる必要はありません。

Q3 夫が勝手に離婚届を出して親権を取った場合は?

離婚無効の調停を申し立てましょう。

無断で提出された離婚届は、当事者の真意に基づかないものであれば、無効と判断される可能性があります。この場合は「離婚無効の調停」を申し立てることになります。受理されてしまった後でも、手続きを踏めば親権を取り戻せるだけでなく、戸籍を正すことも可能です。

第8章 お子様の未来のために、今できる最善の選択を

親権を夫に取られたという現実は、言葉にできないほど辛いものです。子どもにとっての母親は世界に一人しかいません。もし、現在の状況がお子様にとって最善ではないと確信しているのであれば、法的な手段を通じてその環境を変える努力をすることは、親としての立派な責任です。
親権奪還への道は、決して平坦ではありません。手続きの煩雑さや相手との交渉、裁判所での調査など、精神的な負担も大きく、だからこそ一人で抱え込まないでほしいと思います。
Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスは、那珂川市および周辺地域の皆様の身近な相談者として、お子様との未来を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。専門的な対応が必要な場合はお気軽にご相談ください。

 

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