弁護士コラム

2026.01.07

離婚時の財産分与で贈与税はかかる?課税される例外ケースと損をしないための注意点を弁護士が解説


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離婚時の財産分与で贈与税はかかる?課税される例外ケースと損をしないための注意点を弁護士が解説

 

離婚にあたって避けて通れないのが「財産分与」の話し合いです。夫婦で築き上げた資産を分ける際、「受け取った財産に贈与税がかかるのではないか」と考える方も多いのではないでしょうか。結論からいうと、原則として離婚時の財産分与に贈与税はかかりません。しかし、分与の額が多すぎる場合や、不動産の譲渡を伴う場合など、例外的に課税対象となるケースが存在します。本記事では、離婚時の財産分与と税金の関係について、どのような場合に注意が必要なのか、実務に精通した弁護士の視点から分かりやすく解説します。

第1章 離婚時の財産分与で贈与税がかからない原則と理由

1-1 財産分与は贈与ではなく権利の清算

離婚に伴う財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際に清算してそれぞれに分け与えることを指します。
この行為は、一方が他方へ一方的に利益を与える「贈与」とは根本的に性質が異なります。 本来自分の持ち分であるはずの財産を返してもらう、あるいは共有状態を解消して個人のものにするという性質があるため、原則として受け取った側に贈与税が課されることはありません。実務上も、財産分与は「夫婦の共有財産の清算」としての側面が意識されています。

1-2 贈与税が非課税となる範囲と税務署の考え方

贈与税が非課税となるのは、あくまで「財産分与として妥当な範囲内」である場合です。ここでの妥当な範囲とは、婚姻期間中の協力度合い、共働きか専業主婦(主夫)か、分与される側の今後の生活基盤の確保などを総合的に考慮して判断されます。
一般的に、夫婦の共有財産を半分ずつ(2分の1ルール)分けるようなケースであれば、贈与税が問題になることはほとんどありません。

1-3 公的機関(国税庁)の指針と実務上の取り扱い

国税庁の指針においても、離婚による財産分与によって取得した財産については、原則として贈与税がかからないことが明記されています。
ただし、後述するような「あまりにも多すぎる分与」や「税金逃れを目的とした離婚」と判断される場合には、例外的に課税される仕組みになっています。
実務においては、預貯金や動産、不動産などを分ける際に、それらが「夫婦で協力して得たものか」という点が焦点となります 。

第2章 財産分与でも贈与税がかかってしまう「3つの例外ケース」

2-1 婚姻中の協力に見合わないほど「多すぎる額」

財産分与として受け取った財産の額が、婚姻中の夫婦の協力度合いや、その他一切の事情を考慮しても「多すぎる」と判断された場合、その「多すぎる部分」に対して贈与税がかかる可能性があります。
例えば、共有財産が1億円ある場合に、特別な理由もなく9,000万円を妻に分与するといったケースです。裁判例や実務上の基準に照らして、社会通念上適正な範囲を超えているとみなされると、税務署から「実質的な贈与である」と指摘されるおそれがあります。

2-2 離婚を手段として利用した「税金逃れ」とみなされる場合

本来、多額の財産を贈与すれば高い税率の贈与税がかかります。これを免れるために、形の上だけで離婚(偽装離婚)をして、多額の財産をパートナーに移転させるような行為は厳しくチェックされます。
離婚後も同居を続けている、生計が同一であるなど一般的な離婚との違和感がある場合や、明らかに税負担を軽減させることだけを目的としていると判断された場合などは、離婚による財産分与とは認められず、全額が贈与税の対象となるおそれがあります。

2-3 相手方以外の第三者(義父母など)から財産を受け取る場合

財産分与はあくまで夫婦間で行われるものです。そのため、離婚に際して相手方の親(義父母)や相手方の親族が経営する会社など、相手方本人以外の第三者から直接財産を受け取った場合、それは財産分与の枠組みには入りません。
この場合は、通常の贈与として扱われ、基礎控除(年間110万円)を超える部分に対して贈与税が発生します。たとえ相手方(元配偶者)に財産がない代わりに親(義父母)が支払ってくれたというような事情があっても、贈与税のリスクがあるため注意が必要です。

第3章 注意すべき「不動産」の財産分与に伴う税金

3-1 不動産を「渡す側」に発生する譲渡所得税の注意点

不動産を分与する場合、もらう側ではなく「渡す側」に譲渡所得税がかかるケースがあります。これは、時価が購入時よりも値上がりしている不動産を分与した際、その値上がり分(含み益)に対して課税される仕組みです。
法的には「時価で不動産を売却し、その代金で財産分与義務を履行した」とみなされるため、現金で分与する場合とは異なる税務リスクが発生します。
このように購入時よりも不動産価格が上がっている場合は特に、税理士など専門家を交えたシミュレーションを行うことが安全策といえます。

3-2 「もらう側」にかかる登録免許税と不動産取得税

不動産を受け取る側は、名義変更(所有権移転登記)を行う際に「登録免許税」を支払う必要があります。これは登記手続きに不可欠な税金です。
一方、「不動産取得税」については、適切な財産分与(共有財産の清算)であると認められれば、原則として課税されない、あるいは大幅に軽減される運用がなされています。
ただし、離婚後の生活維持を目的とする分与(不要的財産分与)として不動産をもらう場合など、例外的に課税対象にされるケースもあるため注意が必要です。

3-3 自宅分与で使える「3,000万円の特別控除」の適用条件

居住用不動産(自分が住んでいた家)を分与する場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例を利用できる可能性があります。この特例を使えば、多くのケースで譲渡所得税をなくしたり、大幅に減らすことができます。
ただし、この特例は「配偶者への譲渡」には適用されません。つまり、離婚届を出す「前」に分与すると特例が使えず、離婚届を出した「後」に分与することで初めて適用可能になるという、タイミングが非常に重要なルールとなっています。

持ち家やマンションの具体的な処分方法は別記事を参照

不動産の名義をどうするか、住宅ローンが残っている場合にどう対処するかといった具体的な実務については、当サイト内の別記事(「離婚でマンションはどうなる?」「離婚後の持ち家はどうする?」)で詳細に解説しています。実際の手続きを進める際は、そちらの記事も参考になるかと思います。

離婚でマンションはどうなる?財産分与の注意点を弁護士が解説|オーバーローンや住み続ける場合の対処法


離婚後の持ち家はどうする?住宅ローンが残る戸建ての売却・居住・名義変更を弁護士が解説

第4章 実務で失敗しないための財産分与の進め方

4-1 分与の対象となる共有財産を正確に洗い出す

適切な財産分与を行い、税務署に説明がつく状態にするためには、まず何が「共有財産」なのかを明確にしなければなりません。婚姻期間中に築いた預貯金、不動産、有価証券、生命保険の解約返戻金、さらには将来受け取る予定の退職金なども対象となります。
これらを漏れなくリストアップすることが、公平な清算の第一歩といえます。相手に財産を隠されている疑いがある場合は、弁護士を通じた調査(弁護士照会など)が必要になる場合もあります。

弁護士照会(23条照会)とは?

弁護士照会とは、弁護士が依頼を受けた事件の証拠や資料を集めるために、弁護士会を通じて、銀行や市役所、企業などの団体に対して必要な情報の回答を求める制度のことです。 個人で問い合わせても「個人情報なので教えられません」と断られてしまうような情報(隠し口座の有無や残高、勤務先など)についても、弁護士がこの制度を利用することで、法的な根拠に基づいて開示を求めることが可能になります。

4-2 特有財産(独身時代の預貯金や相続財産)を明確に切り分ける

一方、婚姻前から持っていた預貯金や、婚姻中でも自分の親などから相続した遺産などは「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象にはなりません。
この特有財産を共有財産と混同して分与してしまうと、本来分ける必要のない財産を相手方に渡してしまうことになるだけでなく、前述の「多すぎる分与」として贈与税の対象になる可能性もあります。
通帳の履歴などを遡り、特有財産であることを証明できる客観的な証拠を整理しておくことが大切です。

4-3 財産分与の合意内容は「公正証書」に残して証拠化する

財産分与の合意内容(離婚協議書)は、私文書ではなく、公証役場で作成する公正証書として作成することをおすすめします。
公正証書は公的な書類であるため、後日、税務署から財産の移動について尋ねられた際にも、それが離婚に伴う適正な財産分与であることを証明する証拠となり得ます。
また、ローンや養育費の支払いなど相手方の金銭の支払いが滞った際に、裁判を経ずとも給与差し押さえなどの強制執行ができるというメリットもあります。

第5章 離婚と贈与税にまつわる、よくある勘違い

5-1 慰謝料として多額の現金を受け取った場合はどうなる?

離婚に伴う慰謝料も、基本的には非課税です。慰謝料には、精神的苦痛に対する損害賠償金という意味合いがあるため、原則として贈与税の対象にはならないのです。
しかし、これも財産分与と同様に、社会通念上「あまりにも高額すぎる」と税務署に判断される場合は、その超過部分に課税される可能性があります。慰謝料と財産分与の内訳を明確にしておくことが、税務上のトラブルを避けるポイントの一つといえます。

5-2 離婚届を出す前に財産を分けると「贈与」になってしまう?

これも注意すべきポイントです。戸籍上の夫婦である間に財産を移動させると、それは法律上「夫婦間の贈与」とみなされます。夫婦間の贈与には年間110万円の基礎控除しかなく、多額の財産の移動には贈与税がかかります。
離婚に伴う財産分与として非課税にするには、原則として「離婚成立後」に財産を移転させる、あるいは「離婚成立後に移転させる旨の合意」を成立させておく必要があります。

5-3 子どもの養育費を一括で受け取ると課税される?

将来分も含めて、養育費を一括で受け取りたいというニーズもあります。しかし、養育費は必要な都度支払われるのが原則です。そのため、養育費を一括で受け取ると、その資金が「当面必要のない資産」とみなされ、贈与税の対象になる可能性があります。
どうしても一括で受け取る必要がある場合は、信託銀行の仕組みを利用するなど、税務上の対策を検討してみましょう。

第6章 税金トラブルを防ぎ、適正な財産分与を実現するために

後悔しない離婚後の再スタートを

離婚時の財産分与は、新しい生活を始めるための大切な原資となります。原則として贈与税はかかりませんが、金額の妥当性・分与のタイミング・不動産の有無など、いくつかのハードルを正しく越えなければなりません。「離婚届を出す前に家を譲ってしまった」「相場を大きく超える金額を渡してしまった」といった、善意や無知によるミスが、後に大きな税金負担として跳ね返ってくるケースは実務上少なくありません。
失敗しないためのチェックポイントは以下の通りです。

• 財産のリストアップと特有財産の仕分けができているか
• 離婚成立前後のタイミングを間違えていないか
• 合意内容を公正証書など客観的で法的効力のある書類に残しているか

これらをご自身だけで完結させるのは決して容易ではありません。特に、財産の種類が多い場合や、不動産が含まれる場合には、早い段階で弁護士や税理士などの専門家に相談し、適切なスキームを構築することをおすすめします。
私たちNexill&Partnersグループでは、弁護士による法的な交渉や書類作成はもちろん、グループ内の税理士や司法書士と連携し、税務申告や不動産登記までをワンストップでサポートする体制を整えています。これからの人生が不安のない確かなものとなるよう全力でバックアップいたします。まずはNexill&Partners那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。

 

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