弁護士コラム

2017.12.11

勝手に離婚届を出されてしまったら

勝手に離婚届を出されてしまったら

<ご相談者さまからのご質問>

 先日,妻がいきなり離婚したいと言ってきて,離婚届にサインするように迫ってきました。私としては妻と離婚する気はなく,離婚届にサインをする意思はありません。私がサインをしなければ離婚は成立しないので,何もしなくても問題はありませんよね。

<弁護士からの回答>

 相手方が一方的に離婚を迫っている場合には,自分の知らないところで相手方が勝手に離婚届を提出してしまう可能性があります(そんなこと現実にあるわけないと思われている方もいらっしゃると思われますが,離婚届を勝手に出してしまわれる方は意外に多くいらっしゃいます。)。協議離婚はお互いが合意をしていないと成立しないので,勝手に離婚届を提出されたとしても後で覆すことは可能ですが,皆様の想像以上に時間や手間がかかる作業になります。そこで,今回は2回にわたり,相手方に勝手に離婚届を出されることを防ぐことができる離婚届不受理申出制度についてご説明させていただきます。本日は離婚届不受理申出制度の説明に入る前に,そもそも離婚届が勝手に出されてしまうようなことがあり得るのかという点と,勝手に離婚届が出されてしまった際の対応等についてご説明させていただきます。

 まず,前提として,離婚届については,双方が離婚することに合意し,それぞれが離婚届に署名押印している必要があり,夫婦の一方が勝手に離婚届を作成し離婚届を提出したとしても,離婚に関する合意が存在しないため,離婚は無効になります。しかし,離婚届は必要事項を記載して役場に提出をすれば簡単に受理されてしまい,離婚届の筆跡が夫婦本人の筆跡であるかどうかの確認はされませんし,離婚届に押す印鑑は実印である必要はなく(印鑑証明も不要です。)認印で足ります。加えて,離婚届は(婚姻届も同様ですが,)夫婦がそろって提出する必要はなく,夫婦の一方だけでも提出することが可能となっております。

 このように離婚届については,離婚届が夫婦で作成されているかのような外形を作出すれば受理自体はしてもらうことが可能であるため,離婚することに反対されている夫婦の一方が勝手に離婚届を作成し,提出してしまうことは少なくありません。(ごく稀に当事務所にも,「勝手に作成して,提出してしまってはダメなのですか」とご質問いただくことはありますが,相手に無断で離婚届の署名を自分で行い,印鑑を押して提出することは,有印私文書偽造・同行使罪に該当する犯罪行為です(戸籍に間違った離婚の記録がなされると電磁的公正証書原本不実記録罪という犯罪にも当たります。)ので,くれぐれもお控えください。)。

 勝手に離婚届が提出されてしまった場合であっても,夫婦のどちらかに離婚する意思,もしくは離婚届を提出する意思がない以上,無効になります。

 この,法律上は無効な離婚についても,いったん受理されて離婚の記載がなされている戸籍について,役所の方がすぐに訂正してくれるということはありません。戸籍を基に戻すためには,家庭裁判所に対し,協議離婚が無効であることを確認する調停を申し立て,「合意に相当する審判」というものを得て,審判書(判決書のようなものです。)を役所届けでる必要があります。もっとも,この調停では相手が合意をしないと合意に相当する審判を出すことができないため,相手方が合意をしていない場合には,家庭裁判所に対し,協議離婚無効確認訴訟を行い,無効であることの判決を得る必要があります。

 このように,勝手に離婚届を提出されてしまったとしても,最終的には離婚を無効にするとはできるものの,それまでに多大な時間と労力(精神的,経済的な負担)がかかってしまいます。
 次回のブログでは,こうしたトラブルに巻き込まれないために,勝手に離婚届けを提出することが防ぐことができる。離婚届不受理申出制度についてご説明させていただきます。

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