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隣地のブロック塀が境界線を越えていたら?|勝手に撤去できるか・解決方法を弁護士が解説



 

隣地との境界線付近にあるブロック塀やフェンスが、自分の土地へはみ出ているように見えると気になるものです。しかし、土地の境界は判断が難しい場合があり、境界だと思っている場所が法的な土地の境界と一致しない可能性もあります。
本記事では、土地の境界の確認方法や、越境が確認された場合の法的な解決策について弁護士が解説します。

第1章 隣地の塀が越境しているように見えても勝手に撤去してはいけない

自分の土地に入っているように見えても勝手には壊せない

隣家のブロック塀などの工作物が自分の土地へはみ出しているように見えても、自分の判断だけで壊したり、切断したり、移動させたりすることは避けるべきです。
塀やフェンスが設置されている位置関係と、法的な土地の境界が一致しているとは限らず、見た目だけでは、本当に自分の土地へ越境しているのかを判断できない場合があるためです。

また、越境していることが確認できた場合でも、その塀やフェンスが隣地所有者の所有物であれば、許可なく撤去する行為は相手の所有権を侵害する可能性があります。撤去によって塀全体が壊れたり、補修が必要になったりすれば、修理費用などの損害賠償を求められるおそれもあります。

まずは勝手に手を加えず、第2章以降で説明する方法で、土地の境界や越境の有無を確認し、適切な対応をとることが大切です。

第2章 隣地の塀が境界線を越えているかを確認する

2-1 境界線は手元の資料や見た目だけでは判断できない

境界標などがある場合を除き、自分が所有する土地であっても、現地のどこまでが自分の土地なのかを正確に判断することは簡単ではありません。
登記事項証明書には土地の所在地や面積などが記載されていますが、現地のどの位置が境界線なのかまでは示されていないためです。
公図や地積測量図(※)があっても、作成された時期や土地によって精度が異なり、それらの資料だけで現地の境界線を確定できるとは限りません。
さらに、土地の境界には、登記上の区画を示す「筆界」と、実際に所有権が及ぶ範囲を示す「所有権界」があり、両者は通常一致しますが、過去に土地の一部が売買・贈与された経緯などの事情によって異なっている場合もあります。

このような事情から、越境の有無を見た目や手元の資料だけで判断するのは困難なのです。
そのため、越境が疑われる場合は、まず土地家屋調査士に相談し、筆界の調査・測量を依頼するのが実務的です。

※公図

法務局に備え付けられている、土地の位置関係やおおまかな形状を示す図面

※地積測量図

土地の面積、辺の長さ、境界点の位置などを示す測量図面

2-2 土地家屋調査士に境界の調査・測量を依頼する

土地家屋調査士は、土地の境界に関する資料を調査し、現地を測量する専門家です。
公図や地積測量図、現地の境界標、過去の測量図などを調べ、現地を測量し、必要に応じて隣地所有者の立会いを求めたうえで、筆界の位置を示します。
この調査・測量の結果と、ブロック塀やフェンスの位置を照らし合わせることで、まずは隣地の工作物が筆界を越えているかを確認できます。

ただし、土地家屋調査士が調査・測量を行っても、その結果だけで隣地所有者に筆界の位置を受け入れさせることができない場合も少なくありません。相手が立会いを拒否した場合や、示された位置に同意しない場合には、次の手続を検討する必要があります。

2-3 隣地所有者と筆界を確認できない場合は筆界特定制度を利用する

土地家屋調査士による調査・測量を行っても、隣地所有者が立会いに応じない場合や、双方が異なる位置を筆界だと主張している場合には、法務局の筆界特定制度を利用する方法があります。
筆界特定制度は、申請を受けた筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、資料調査や現地調査、必要な測量を行って、筆界の位置を公的に明らかにする制度です。当事者同士の合意がなくても手続を進められる点が、土地家屋調査士による通常の境界確認との違いです。
なお、筆界特定制度の申請は本人でもできますが、申請資料や図面の作成には専門知識が必要となるため、土地家屋調査士や弁護士に手続の代理を依頼することもできます。

2-4 所有権の範囲に問題がある場合は弁護士に相談する

土地家屋調査士による調査と筆界特定制度の対象は登記上の区画である筆界であり、実際に所有権がどこまで及んでいるかを示す所有権界までは判断されません。
筆界と所有権界が一致していない場合には、売買契約書、境界確認書や合意書、登記関係の資料、過去の土地の利用状況などを確認し、自分の所有権がどこまで及んでいるかを検討しなければなりません。
これは測量だけでは判断できない法律問題を含むため、弁護士への相談が必要になります。

第3章 越境が確認された場合の解決方法

3-1 ブロック塀やフェンスの所有者を確認する

隣地の塀やフェンスが自分の土地へ越境していることが確認できたら、次に、その工作物を誰が所有しているのかを調べます。
隣地の敷地内に設置されたブロック塀などが、部分的に自分の土地へはみ出している場合は、隣地所有者の単独所有物であることが一般的です。
一方、境界線上に設置された塀については、以前の所有者同士が費用を出し合って設置している場合があります。民法上も、境界線上に設けられた塀などは、隣接する土地所有者の共有物と推定されます。

中古住宅を購入した場合は、現在の所有者が塀の設置経緯を把握していないこともあります。売買時の資料、過去の工事契約書や領収書、隣地所有者の説明などを確認しましょう。
共有物であれば、一方の所有者だけで撤去や移設を決めることはできないため、双方で協議する必要があります。

3-2 撤去や移設の方法について隣地所有者と話し合う

越境と工作物の所有関係を確認したら、調査・測量の結果を隣地所有者に示し、解決方法について話し合います。
具体的には、越境部分を撤去する、塀全体を境界線の内側へ移設する、老朽化した塀を新しく設置し直すといった方法が考えられます。塀の構造によっては、越境部分だけを切り取ると塀全体の強度が低下するおそれもあるため、施工業者にも確認したうえで工事方法を決める必要があります。

あわせて、工事の実施時期や施工業者、費用の負担、工事のために隣地へ立ち入る必要があるかなども具体的に決めます。はじめから一方的に撤去を要求するのではなく、越境の程度や双方の事情を踏まえ、実行可能な方法を検討することが大切です。

3-3 すぐに撤去できない場合は越境確認書を作成する

工事費用や建替えの時期などの事情から、越境した塀をすぐに撤去できないこともあります。その場合は、口頭で現状を認めるだけでなく、越境確認書や合意書を作成しておきましょう。
書面には、境界線と越境部分の位置だけでなく、工作物の所有者、撤去または移設する時期、工事費用の負担、土地を売却・相続した場合の取扱いなどを記載します。
また、越境した状態を一時的に認めるだけであり、その土地を隣地所有者へ譲渡するものではないことも明確にしておく必要があります。
将来、所有者が代わった場合にも経緯が分かるよう、測量図や現場写真を合意書に添付しておくとよいでしょう。

3-4 話合いが進まない場合は弁護士に交渉を依頼する

越境自体は確認できたものの、隣地所有者が撤去に応じない場合や、工事方法、実施時期、費用の負担などについて合意できない場合は、弁護士への相談を検討します。
弁護士は、土地家屋調査士の調査・測量結果、工作物の所有関係、これまでのやり取りを確認し、法的にどのような請求が可能かを整理します。そのうえで、隣地所有者へ通知書を送り、撤去または移設の方法や期限、費用負担などについて交渉します。

土地の売却や建替えが予定されている場合は、境界トラブルがあることで手続や工事が進まなくなることもあります。予定が決まっている場合は、その期限も弁護士へ伝えたうえで、対応方針を検討することが重要です。

3-5 交渉で解決できない場合は民事調停や訴訟を利用する

弁護士による交渉でも合意できない場合は、裁判所の民事調停を利用する方法があります。
民事調停は、裁判官と調停委員が当事者の間に入り、話合いによる解決を目指す手続です。塀を撤去する時期や工事方法、費用負担などについて、双方の事情を踏まえて調整できます。合意した内容が調停調書に記載されると、確定判決と同じ効力が生じます。

民事調停でも解決できない場合は、訴訟による解決を検討することになります。
訴訟の内容は、隣地所有者との間で何が争われているかによって異なります。相手が越境について認めない場合は、裁判所に所有権の範囲の確認を求めます。所有権の範囲が明らかであるにもかかわらず相手が撤去に応じない場合は、ブロック塀などの撤去を求めることが考えられます。
どの請求を行うべきかは、測量結果や過去の契約・合意、土地の利用状況などによって異なるため、弁護士に資料を確認してもらったうえで判断する必要があります。

第4章 【FAQ】境界トラブルでよくある疑問

Q1. ブロック塀の越境が数センチだけでも撤去を求められますか?

A1. わずかな越境でも撤去を求められる可能性があります。

越境している範囲が数センチであっても、他人の土地に入り込んでいれば所有権の侵害に当たります。しかし、裁判でブロック塀の全面的な撤去が認められるかは、越境の程度や土地の利用に与える影響、撤去に必要な費用なども考慮されるため、撤去によって得られる利益に比べて相手の負担が著しく大きい場合などには、撤去までは認められない可能性もあります。

Q2. ブロック塀の基礎が地中で越境している場合や、フェンスなどが空中で越境している場合も撤去を求められますか?

A2. 地中や空中の越境も撤去を求められる可能性があります。

土地の所有権は、法令による制限の範囲内で、その土地の上空と地下にも及びます。そのため、地上に見えている部分が境界線の内側に収まっていても、ブロック塀の基礎や擁壁の底部が地中で越境していれば所有権の侵害が問題になる可能性があります。フェンスが傾いて上空へ入り込んでいる場合や、雨どいなどが空中で境界線を越えている場合も同様です。

Q3. ブロック塀の越境を長期間放置すると、土地を時効取得されることがありますか?

A3. 土地の使われ方によっては、時効取得される可能性があります。

ブロック塀が越境しているだけで、直ちに土地を取得されるわけではありません。
ただし、相手が塀の内側を自分の土地として、所有の意思をもって平穏かつ公然に使い続けた場合は、原則として20年で取得時効が成立する可能性があります。占有を始めた時点で自分の土地だと信じ、そのことに過失がなかった場合は10年です。
そのため越境が疑われる場合は長期間放置せず、必要に応じて、相手が越境部分の土地についてこちらの所有権を認める内容の越境確認書を作成しておくことが大切です。

Q4. 倒れそうなブロック塀でも、緊急に撤去してはいけませんか?

A4. まず安全を確保し、所有者や行政へ連絡しましょう。

ブロック塀が大きく傾いている、ひび割れが広がっているなど、倒壊のおそれがある場合は、人が近づかないようにし、写真や動画で状況を記録したうえで、所有者へ早急に連絡します。周囲に危険を及ぼしている場合は、自治体の建築指導担当窓口や、空き家であれば空き家対策窓口へ相談します。
人身被害の危険が差し迫っている場合は、警察や消防にも連絡しましょう。直ちに対応が必要な状況でも、自己判断で隣地の塀を全面撤去することは避け、まずは自分の敷地側で人を近づけないようにするなどの安全確保を行い、塀自体への措置については、所有者や行政の対応を踏まえて判断するのが基本です。

Q5. 隣地が空き家で所有者と連絡が取れない場合はどうすればよいですか?

A5. 所有者を調査し、必要に応じて管理人の選任を申し立てます。

隣地が空き家であっても、ブロック塀を勝手に撤去することはできません。まず登記上の所有者を確認し、すでに亡くなっている場合は相続人を調査して、撤去や移設について連絡します。
調査しても所有者が分からない場合や、所在が分からず連絡できない場合には、裁判所に、所有者が分からない土地を管理する所有者不明土地管理人や、所在不明の所有者の財産を管理する不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人と撤去などについて協議する方法があります。
いずれの場合も、自力での調査や手続きが困難な場合は弁護士への相談を検討しましょう。

第5章 境界トラブルは状況が複雑になる前に専門家へ相談する

境界線をめぐる問題は、見た目だけでは判断できず、測量だけで解決するとも限りません。隣地所有者との認識が食い違っている場合には、どの資料を確認するか、土地家屋調査士による調査・測量や弁護士による交渉が必要かを、早い段階で整理することが大切です。
特に、土地や建物の売却、建替え、外構工事を予定している場合は、境界トラブルが解決していないことで手続が進まなくなる可能性があります。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、隣地所有者との交渉だけでなく、土地の売買・相続に伴う登記や税務の問題にも対応しています。隣地の塀やフェンスをめぐってお困りの場合は、まずはご相談ください。

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