弁護士コラム

2018.06.25

婚約破棄後の結納金の返還について

【相談事例⑩】

 息子のことで相談がありません。息子と付き合っていた女性との結婚が決まり,両家がそろって結納を行いました。その際,私たちより相手の家に対して,結納金として100万円お支払いしました。もっとも,結納が終わっても相手の家から,結納の半返しのお話しは一切ありませんでした。マナーがなっていないなと思っていたのですが,息子たちが幸せになればと思い我慢していましたが,先日,息子が,他の女性と関係を持っていたことが相手方にばれ,婚約が破談となりました。

 息子が原因で婚約破棄になるのはしょうがないのですが,結納金は,結婚が成立していない以上,返してもらうべきであると考えています。

 

【弁護士からの回答】

 前回にひきつづき,今回も婚約に関する問題です。婚約解消に関するご相談を受けるときに,よく問題になるのが,新郎側から新婦側に渡される結納金の問題があります。そこで,今回は結納金の法的性質などについてご説明させていただきます。

 

1 結納金とは

 結納金とは,日本の慣習に基づいて,婚約の成立の際に,男性側(新郎側)から女性側へ送られる金銭のことをいいます。また,結納の際には,結納金の他に,結納の品も女性側に贈られるのが一般的です。また,女性側からも,結納返しといって結納の品やお金について,1割に相当する品やお金を返したり(1割返し),半分に相当するものなどを返す(半返し)ことを行う慣習もあるそうです。結納金についてはそもそもいくらわたすのか,それに対して,いくら返すのかということが法律上決まっておらず,あくまでも慣習や両家での話し合いによって決まります。ご相談者様のように,結納を渡したのに相手方の家からお返しがないということをおっしゃられる方がいらっしゃいますが,法律上の問題ということではなく,マナーや考え方などの道義的な問題にすぎないため,半返しなどを強制することはできません。

 この,結納金については,民法などの法律に規定されているものではありませんが,その法的性質は,最高裁判所の判例において,婚姻が成立した場合に,当事者ないし当事者両家の間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるとしており,簡単にいうと,婚姻が成立することを条件とした贈与契約であると考えられています。

 したがって,婚姻が成立しなかった場合には,条件を成就していないので,結納金を受け取った側は,その結納金を返還しなければならないのが原則です。

 もっとも,婚姻の不成立(婚約破棄)に至った原因が,結納を支払った側のみにあると認められる場合には,婚約破棄の原因を作っておきながら結納の返還を求めるのは信義則に反するとして,結納金の返還は認められません。

 他方,婚約破棄の原因が,女性の側にも一部認められる場合には,過去の裁判例では,結納を支払った者の帰責性が,受け取った者の帰責性よりも小さい場合には返還を認めるとしているものもありますが,いずれにも原因があると認められ,優劣がつかないといった場合には,結納金の返還については認められる(もしくは一部認められる)のではないかと考えています。

 なお,婚姻が成立した場合には,条件が成就しているため,その後,婚姻関係が解消(離婚)したとしても,原則として結納金の返還は認められませんが,結婚(内縁後)わずか2か月で関係を解消した事例では,結納金の返還を認めた判例もあります。

 いずれにせよ,本件については,ご相談者様の息子さんの帰責事由により婚約が破棄されていることは明らかであるため,結納金の返還は認められないでしょう。それだけでなく,不貞行為により,婚約を破棄しているため,相手方より慰謝料の請求がなされる可能性があります。

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