弁護士コラム

2018.06.22

離婚後の借金について

【相談事例⑦】

半年前に別れた夫が借金をしていたことが分かり,一緒に生活していたときの借金だから返済に協力するよう元夫の家族から連絡がありました。結婚していたときの給料や生活費の支払いについては全て夫が支払っていたのですが,どうやら夫の給料だけではやっていけなかったようで,私には内緒で借り入れを続けていたようです。当時は消費者金融からお金を借りていることを全く知らなかったし,このお金は返さなくてはいけないのでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

 日本での契約に関する責任については,個人責任,すなわち,契約を締結した当事者のみがその契約に基づく責任を負うという原則を採用しているため,夫婦であるとしても他の配偶者の契約上の責任を負うことはありません。もっとも,夫婦については,例外的に一方の契約上の責任が,他の配偶者にも認められると場合があります。そこで,今回は,日常家事に関する連帯債務についてご説明させていただきます。

 

1 日常家事に関する連帯債務について

 連帯債務とは,債権者に対して複数の債権者が連帯して債務を負担することをいい,例えば,不動産を購入するときに,夫のみの収入では銀行などのローンが下りないときに,夫婦で銀行から借り入れを行うときには,2人で住宅ローンを借り入れているので,連帯債務になります。通常,連帯債務を負うためには,上記の個人責任の原則から,自ら契約の当事者になる必要があり,自らの知らないところで勝手に連帯債務者になることはありません。

 もっとも,民法761条では,「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは,他の一方はこれによって生じた債務について,連帯してその責任を負う。」と規定しており,他の配偶者が自らの知らないところで,日常家事に関する法律行為を行った場合であっても,その法律行為に関する債務については,連帯債務として責任を負うことになります。

 

2 日常家事とは

 では,民法761条の「日常の家事」とはどのようなものが含まれるのでしょうか。民法761条は日常家事に関する法律行為について連帯債務とすることで,取引の相手方を保護するための規定であることから,日常家事に該当するか否かは,客観的にみて日常家事,すなわち,夫婦の共同生活に必要な事項に該当するか否かを判断することになります。具体的には,子の養育,教育に関する費用,食料,衣類などの購入費用,光熱費などについては,日常家事に該当するとされています。

 

3 生活費のための借り入れについて

 では,ご相談者様の事例のように,元ご主人が結婚していたときに,生活費のために借り入れた債務については,日常家事に関する債務に該当するのでしょうか。たしかに,日常家事のために借りている以上,連帯債務となるとも思えます。

 しかし,先ほどもご説明したとおり,日常家事に該当するか否かは,客観的に,すなわち行為の外形から判断するため,「衣服や食料を買う」という行為とは異なり,「お金を借りる行為」が日常家事に該当するものではありません。生活費という日常生活に使う目的があるということは,あくまでも,借りる人の主観にすぎません。また,お金を貸す債権者としては,お金を借りる人が日常生活(生活費)に使うということを重視してお金を貸すわけではありません。その人の収入状況等をみて,返済することができるか否かを判断しており,現実的に,借りたお金を生活費に使おうが,他の借金の返済に使おうが,ギャンブルに使おうが,借りた人の自由であるため,日常家事として夫婦の連帯債務としてまで,債権者を保護すべき必要性はないといえます。

 したがって,日常家事のために借り入れた場合の借金ついては,日常家事に基づく債務には該当しないため,ご相談者様の事例においても,元ご主人の債務を返済する必要はありません。

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