弁護士コラム

2018.06.06

有責配偶者について③~例外の要件について~

<ご相談者からのご質問>

 有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてはわかりましたが,どういった場合に,各要件を充たすことになるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

前回は,有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件について,ご紹介させていただきましたが, 今回は,各要件の具体的内容や,どういった点が考慮されているのかについてご説明させていただきます。

 

1 はじめに(有責配偶者の認定)

 有責配偶者として,離婚の請求が原則として認められないことになるのは,ほとんどの場合が,不貞行為を行ったことを有責行為としてとらえられていますが,不貞行為を行った場合に限られるわけではありません。悪意の遺棄や,暴力,他のいやがらせ行為を行った場合等でも有責配偶者にはなりうる場合があります。

 

2 別居が長期間であること

 原則として,夫婦の同居期間と比較して別居期間が長期間であるか否かを判断することになります。また,夫婦双方の年齢も考慮要素となります。もっとも,これまでの裁判例をみてみると,別居期間が10年以上たっている場合等には,単純に同居期間と比較する余地もなく別居期間が長期にわたっていると判断される傾向にあるようです。したがって別居期間が10年未満という場合に,夫婦の年齢や同居期間等を総合的に考慮して,別居が長期間であるかを判断することになります。もっとも,有責性が認められない場合でも別居期間は2年~5年程度必要であると考えられているため,別居期間が5年以内の場合には,別居期間に関する要件が認められる可能性は少ないのではないかと考えています。有責配偶者となってしまった方が,ご相談に来られたときに「相手が離婚に応じないと主張してきた場合には,5年くらいの別居では離婚は認められないかもしれません。」とお伝えすると,非常に驚かれる方が多いです。

 

3 未成熟の子が存在しないこと

 未成熟の子(未成熟子)とは,一般的に経済的に独立(成熟)していない子のことをいい,未成年者と同視されるわけではありませんが,高校生の場合には,一般的に経済的に独立しているとは認められず,未成熟子と判断されることが多いと感じています。逆に,大学生については,働くことは潜在的に可能であるとして未成熟子にはあたらないと判断される場合もあります。また,大学を卒業した成人であったとしても,障害を抱え,監護が必要な子どもについては,未成熟子と同視することができるとして,離婚請求を認めなかった裁判例があります。

 

4 相手方配偶者,苛酷な状況に置かれないこと

 苛酷な状況の有無については,主として経時的な事情が考慮されることになります。具体的には,過去(判決に至るまでの間)の生活費の負担の有無・額,将来における経済的負担の有無,・内容(慰謝料,住居の確保などの離婚の際の給付の申し出),現在の相手方配偶者(離婚を拒否している配偶者)の生活や収入に関する状況等を考慮することになります。

 このように,有責配偶者からの離婚請求が認められるためには非常に困難な要件を充足させる必要があり,現実に弁護士の下に相談に来られる方で,上記要件を充足している方というのはそこまで多くはありません。そこで,次回は,有責配偶者とし離婚を実現するための方法についてご説明させていただきます。

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