弁護士コラム

2018.01.13

遠隔地での裁判について

<ご相談者様からのご相談>

 私は福岡に住んでいるのですが,東京の実家に別居した妻から離婚訴訟を提起されました。移送の申立てをしましたが,認められませんでした。離婚訴訟の期日は月に1回程度行われると聞きましたが,毎回毎回東京の家庭裁判所に行かなければならいのですか。弁護士さんに依頼する場合には東京の弁護士さんに依頼した方がいいのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  裁判所が遠隔地になってしまった場合には,裁判所への出廷による経済的な負担等が生じてしまいます。そこで,離婚裁判においてもすべての場面において必ず裁判所に出廷しなければならないということはなく,出廷しなくても期日を進めることができる場合があります。代理人に離婚訴訟を依頼した場合には,実際にご依頼者様ご本人が裁判所に出廷することはほとんどないのが実情です。
そこで,今回は,遠隔地での離婚訴訟に関するご説明をさせていただきます。

  日本の裁判では,進行が迅速かつ充実したものとなるように,口頭弁論期日においては,原告・被告の双方の当事者が出席することを原則としています(民事訴訟法87条1項参照。)。したがって,離婚訴訟においても,遠隔地であっても当事者が裁判所に出向き,期日に出廷することが必要になります。
  もっとも,上記の原則に対しては例外がいくつか認められています。まず,訴訟された側の被告は,原告から訴状が送達された場合には,第1回目の期日までに答弁書(訴状に対する反論の書面)を提出することになるのですが,答弁書を提出していれば,第1回目の期日については,欠席したとしても,出席して答弁書の内容を陳述したものとみなされるため(民事訴訟法158条,擬制陳述といいます。),被告の場合には第1回目の期日には出席する必要はありません。

 また,第1回目の期日以外の期日であっても,裁判所が相当と認めるときには,一方の当事者が裁判所に出廷しているときに限り,他方の遠隔地の当事者は電話にて期日に出廷することができます(電話会議システムといいます,民事訴訟法170条3項)。もっとも,この電話会議システムについては実際に利用されるケースとしては,当事者に代理人がついている場合がほとんどであり,当事者本人のみで訴訟を行う場合には,裁判所から代理人をつけるように説得されるケースが多いと思われます。

  このように,遠隔地の裁判所であっても,実際に何度も何度も裁判所に出廷するということはほとんどありません。しかし,離婚裁判のうち,当事者尋問,証人尋問(人証)手続に関しては電話会議システムを使うことができないので,実際に裁判所に出廷する必要があります。また,裁判上の和解により離婚が成立する場合には,当事者は必ず裁判所に出廷する必要があります。

 遠隔地の裁判所で裁判を行う場合のケースでよくご相談されるのが「自分の住んでいるところで弁護士を依頼すべきか,遠隔地の裁判所の近くの弁護士に依頼すべきか。」ということです。これに関しては,どちらが正しいか間違っているということはありません。しかし,私の感覚では,離婚訴訟の場合には,期日の間に弁護士との間で充実した打合せを行うことが重要であると考えているため,遠隔地の弁護士だと充実した打合せは難しく,かつ,弁護士との間での信頼関係を築くのも難しいのが一般的です。

上記のように,電話会議システムにより,実際に遠隔地の裁判所に行く機会は1回~2回程度で済むケースがほとんどですので,遠隔地の裁判所で離婚訴訟を提起された場合であっても,是非一度当事務所にご相談ください。

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