弁護士コラム

2017.12.25

調停前置主義について

調停前置主義について

<ご相談者様からのご質問>

  性格の不一致が原因で夫と別居して1年が経とうとしています。夫とこれまで離婚の話し合いを行ってきましたが,夫がいっこうに離婚に応じてくれません。夫の意思は固そうなので,調停にして,調停委員を間に入れても離婚に応じないという考えは変わらないと思います。夫と早く離婚したいので調停を経ることなく裁判にすることはできないのですか。いきなり訴訟を申し立てたらどうなるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

  結論からお伝えすると,離婚調停を経ることなく,離婚訴訟を行うことができません。離婚調停だけでなく,家事事件に関する手続きの多くは,当事者での話し合いを経てそれでも解決できない場合に,初めて裁判官の最終的な判断にゆだねるべきであるという原則を採用しています。したがって,ご相談いただいている方の場合もいきなり離婚訴訟を起こすことはできません。今回は,離婚調停のみならず,家事調停における調停前置主義についてご説明させていただきます。

  調停前置主義とは,裁判(もしくは審判)を前に調停をしなくてはならない制度をいいます。通常の民事事件,例えばお金を貸したのに返してくれないといった紛争の場合には,交渉で解決しない場合に,訴訟に移行するか,それとも調停(民事調停)を申し立てて話し合いで解決するかについては,当事者の自由な意思に委ねられています。

  これに対し,家事事件のうち,ある一定の事件に関しては,(家事事件手続法257条1項,244条),調停前置主義が採用されています。
  家事事件において調停前置主義が採用されている主な理由は,家事事件の家事事件の場合,事件が終了したあとも親子関係などが継続していくケースもあり,そのような家庭内の問題(紛争)を,いきなり訴訟手続に持ち込んでしまい,白黒つけるという解決方法よりも,当事者が十分に協議をすることにより,できるだけ当事者双方の関係を改善することが望ましいと考えられているためです。

  家事調停において調停前置主義が採用されている事件は,離婚調停だけでなく,婚姻の無効,嫡出否認,認知の無効等に関する特殊調停事件と離婚,離縁等の一般調停事件が対象となっています(調停の種類については,別の機会にでもご説明させていただきます。)。
  調停前置主義が採用されている離婚事件に関し,調停を経ることなくいきなり離婚訴訟を提起した場合には,原則として,裁判所が職権で,事件を家事調停に付す(移す)ことになります(家事事件手続法257条2項,調停に付されることから,「付調停」と言われています。)。

  もっとも,裁判所において「事件を家事調停に付することうが相当でないとみとめるとき」には,例外的に,いきなり訴訟を起こせる場合があります。付調停の例外としては,相手方が行方不明であったり,精神障害等で協議による解決が見込めないことが明らかである場合などには認められる可能性があります。
  いずれにせよ,基本的には離婚訴訟するためには原則調停を経る必要があります。早期に離婚を進めていくためには,離婚に応じないという方であっても協議や調停において充実した活動を行い,訴訟の前に離婚が成立するのがよいと思います。そのためにも早く離婚したいと考えられているかたは,是非一度弁護士にご相談ください。

WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所