弁護士コラム

2021.02.15

説明のむずかしさ

皆様が乗られているお車の任意保険の内容を確認すると「弁護士費用特約」というものが契約内容で入っている方が多いと思います。

これは、もらい事故など、交通事故の被害者となられた際、交渉で必要な弁護士費用を任意保険会社が負担するという特約になります。

この弁護士費用特約の普及もあってか、当事務所でも交通事故の相談は頻繁にいただいています。
弁護士に相談する状況というと、基本的に相手方(加害者側)の任意保険会社との協議が整わないため、ご相談にくるというケースが多いです。

その中で多く問題となるのが、お怪我をしている際の治療費の打ち切りに関する問題や過失割合(事故の態様)に関する問題ですが、それと同じくらい問題になるのが物損事故における「経済的全損」という問題です。

この「経済的全損」という言葉、聞きなれない方の方が多いと思いますが、相談者の方も「相手の保険会社から『経済的全損なので修理費用全額ははらえない』と言われた。こっちは被害者なのにおかしいではないか」とご相談いただくことがあります。

結論として、経済的全損のケースでは、修理費用全額は支払われないという相手方保険会社の対応は間違っていないのですが、納得いかずにご相談に来られる方が一定程度いらっしゃるということは、担当者においてきちんと経済的全損について説明がされていないのではないかなと思っています。

「経済的全損」とは簡単にいうと、修理費用よりも、当該車両の時価が低い状況をいいます。例えば、車をぶつけられ、修理費用に70万円が必要となるが、ぶつけられた車は年式も古く、走行距離も多かったため、事故当時の車の価額は50万円である場合、加害者(の保険会社)から支払われる金額は、70万円ではなく、車の価額である50万円のみとなります。

被害者の方からは、よく、「こちらは事故で車に乗れないため、相手の費用で修理してもらうのが損害賠償ではないのか」と質問されます。

しかし、交通事故での損害の請求は、法律上損害賠償請求といい、損害賠償請求は、文字通り、被った損害を賠償することを請求するものであるため、請求できるのは被った損害の限度となります。
ここで、先ほどの例で、被害者に70万円(修理費)が支払われた場合、車の価額は50万円であるため、事故のまえよりも20万円財産が増えてしまっていることになります。

ここまで説明すれば、多くの方はご理解いただけるのですが、 この経済的全損の問題は、自動車という、修理しなければ運転できないことや、比較的高額であるため、ご理解に時間がかかるのではないかなと個人的に考えており、ご相談者様には、物を代えてご説明しています。

たとえば、書店で中古の本を100円で購入した直後に、他の人がその本を誤って破ってしまったとして、その本を元に戻すためには1万円かかるとした場合破ってしまった人に対しては、いくら請求できますか」と問いかけると、多くの方は、「100円」とご回答いただけると思います。

このような「経済的全損」という問題にかかわらず、法律の世界の用語や理屈には、通常の方ではなじみがない複雑な問題がとても多いです。

そういった複雑な問題を処理するのが代理人となる弁護士の仕事なのですが、ご依頼者の方に対し、理屈や、理由について説明し、納得してから進んでいては、同じ結論になるとしても、「弁護士に依頼して良かった」と思っていただけるか否かに大きな違いがでるのではないかと感じています。
何事ともわかりやすく説明するよう心がけているのですが、全部が全部できているかというとそうでないことも多いため、常日頃、わかりやすい説明することの難しさを痛感しています。

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