弁護士コラム

2018.03.01

法定相続分について⑤

法定相続分について⑤

<ご相談者様からのご質問>

今では非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じなのですね。私は以前(平成15年頃)父の相続の際,遺産分割の審判を行ったのですが,その際は,非嫡出子として,他の兄弟よりも低い相続分しかもらえませんでした。その審判はとうの昔に確定してしまっているのですが,今からどうにかすることはできませんか。

<弁護士からの回答>

 前回は,非嫡出子と嫡出子との間で相続分を区別している規定が憲法違反であるとした平成25年9月4日の最高裁判所の決定についてご紹介させていただきましたが,上記最高裁判所の決定は,当該決定が出された以前の相続に関しては影響を及ぼすのでしょうか。今回は,上記最高裁判所の決定の効力が及び範囲についてご説明させていただきます。

上記最高裁判所の決定は,平成25年9月4日に出されていることから,平成25年9月4日以降に発生した相続に関しては,全ての相続に関し非嫡出子であっても嫡出子と同じ法定相続分を取得することになります。
また,上記最高裁判所の決定は,平成13年7月に被相続人が死亡し,相続が開始された事件であったため,平成13年7月時点における,民法900条4号但書のうち非嫡出子と嫡出子の相続分に関する規定(「本件規定」といいます。)の有効性について判断しており,「本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。」としています。この判事からすると,平成13年7月以降に発生した相続すべてについて効力を及ぼすように思えます。

しかし,上記最高裁決定は,平成13年7月から平成25年9月までの間に発生した相続において,本件規定が有効であることを前提として解決した遺産分割の事件が多数存在することから,過去に解決した事件についてまで効力が及ぶとすると,法的な安定性を害することから,本決定の違憲判断は平成13年7月から本決定までの間に開始された他の相続について,本件規定を前提としてされた遺産分割の審判,その他の裁判,遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとしています。

したがって,最高裁判所の決定を素直に読むと,平成13年7月1日以降に開始した相続について,「確定的なものとなっ」ていない場合には,非嫡出子と嫡出子は同じ法定相続分を有することになり,審判などで「確定的なものとなっ」ている場合には,もはや非嫡出子の相続分を争えないことになります。そうすると,ご相談者様の事例においても,すでに審判が確定している以上,残念ながら成立した遺産分割の効力を改めて争うことはできません。

なお,平成13年7月1日よりも前に発生した相続(確定的な法律関係が存在しないことを前提としています。)について,本件最高裁決定の効力が及ぶかについて,本件決定は直接判断をしているわけではありませんが,本件決定が,「その相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。」と判断していることに加え,平成12年6月30日に発生した相続を対象として,本件規定を合憲であると判断したものがあるため(最高裁判所平成21年9月30日決定),少なくとも平成12年6月以前に発生した相続については,本件決定の効力は及ばないと判断される可能性が高いといえます。

ご自身が婚外子である場合,上記のとおり以前に発生した相続であっても,嫡出子と同じ相続分をご主張できる場合は十分にございますので,遺産分割等を進める前に是非一度弁護士にご相談ください。

WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所