弁護士コラム

2018.05.16

親権者の判断基準⑤

<ご相談者様からのご質問>

 勝手に連れ去ってしまうとダメなんですね。でも,そもそも妻が別居する際に子どもを実家に連れて行っているのはどうなのでしょうか。それも違法な連れ去りに該当するのではないですか。

<弁護士からの回答>

 離婚問題で夫側からのご相談の場合に多く聞かれるご質問として,ご相談者様のように,妻が子どもともに,同居していた住居から別居したことで何か追及することができないかという点があります。今回は,離婚する際に子どもを連れ出して別居を実施することの適法性についてご説明させていただきます。

 離婚を考えている夫婦の一方が子どもを連れ出して別居をする行為(いわゆる「連れ去り別居」といいます。)については,これまでご説明してきたとおり,親権者の判断において現状維持が非常に大事であるとの考えから,現状維持を確保するためにいわば連れ去ったもの勝ちであるとの認識が広まり,連れ去り別居が横行することになりました。

 しかし,親権者の判断はあくまでも子の福祉に適しているか否かの判断であるため,子のことを考えず,ただただ親権が欲しいがために連れ去る行為が容認されてしまうと,子の福祉を害することになってしまいます。
 したがって,現在では,連れ去り別居に関しても,直ちに適法であるとは判断されず,別居するに至った経緯等が慎重に判断されているのが現状です。

 具体的には,従前の監護状況(連れ去った親が主たる監護者か否か監護能力に問題がないか否か。),や,子の年齢,別居に至る経緯(別居せざるを得ない状況が会ったのか否か。)別居の時期(子どもに影響を及ぼす時期であるのか否か。)別居先(遠方か否か),子の監護について夫婦間で話し合ったか否か,別居後の非監護親との面会交流の有無,別居後の未成年者の心身の状況等を総合的に考慮することになります。

 別の機会にもご説明しますが,相手方に無断で連れ去り別居を実施した場合,相手方は基本的に,子どもを確保すべく,子の監護権者の指定及び子の引渡しの審判を家庭裁判所に申し立てることになります(緊急性が高い場合には保全処分の申立てもなされます。)。このように連れ去り別居により相手方との関係が紛争状態に発展することも否定できないため,お子さんを連れての別居に関しては,許容されるような状況に該当するか否かについては,別居を行う前に慎重に判断する必要があるため,是非一度,弁護士にご相談ください。

2018.04.19

親権者の判断基準④

<ご相談者様からのご質問>

 妻との離婚を考えています。先月に妻が5歳の長男と一緒に実家に帰ってしまいました。
はじめのうちは,母親が育てる方がよいのではないかと考えたのですが,やはり自分が親権を欲しいと考えています。
先生の話では現在の監護状況が継続することが大事であるとのことでしたので,何としても子どもをこちら側に引っ張ってきたいと考えています。問題はないでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回ご説明したとおり,子の親権者の判断においては,現状維持,すなわち,現在生活している環境が特段問題なく,変更後の環境との優劣がない場合には,現状の環境を維持すべきであると考えられています。では,ご相談者様の事例のように現状を確保するために,お子さんをご相談者様側に引き戻すことは適切なのでしょうか。

今回は,違法な奪取行為が親権者の判断に与える影響について協議させていただきます。
  前回ご説明したように,現状維持については,親権者の判断要素となります。しかし,現状維持についてのみを優先してしまうと,現状維持を確保するために,子どもを連れ去ることにより監護実績を確保するだけで,親権者の判断にとって有利な状況を作出することが可能になってしまい,連れ去りが横行してしまい,子の福祉を著しく害することになってしまいます。

 そこで,親権者の判断においては,違法な連れ去りを行った場合には,親権者としての適格性を欠くとして,親権者の判断においては非常に不利な状況に陥ることになってしまいます。

 具体的には,面会交流中に子どもを引き渡さずに拘束したまま返さない場合や,子を連れて別居した妻から,実力行使により子を連れ去る行為や子の監護について夫婦で協議していたにも関わらず,その協議に反し,事実上監護状態を作出する行為などは,違法な連れ去り行為等に該当すると判断されています。特に最初にあるように,実力行為により子どもを奪取する行為は,親権者であったとしても,未成年者略取罪として犯罪行為に該当しうる行為ですので,絶対にやめた方がよいでしょう。

 このような,違法な連れ去り行為等を行ってしまうと,相手方が弁護士に依頼をした場合,直ちに,子どもを引き渡すよう,裁判所を通じて求めてきます(子の引渡しの審判といいます。
審判については別の機会にご説明します。)。そして,違法な連れ去り行為を行った当事者に対しては,親権者の判断において非常に不利になってしまうばかりか,親権者として認められなかった後の面会交流の条件面においても一度違法な連れ去り行為を行っている以上,信用性に欠けるとして非常に制限された面会交流しか認められない場合や,程度によっては面会交流が認められない可能性もでてきます。

 ご相談者様の事例においても一定程度,相手方の監護下における生活が継続している以上,強制的に連れ去ってしまう行為は,違法な連れ去り行為と判断されてしまう可能性が髙いといえます。別の機会にもご説明しますが,親権について固執するのか,親権者という形ではなく面会交流によりお子さんとの交流を実現すべきであるのかについては,十分に考えなくてはいけない事項ですので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.04.18

親権者の判断基準③

 <ご相談者様からのご質問>

 夫との離婚を考えており,これまで協議をしていました。離婚すること自体には争いはなかったのですが,夫との間の長男の親権について話がまとまりませんでした。現在,私の仕事が忙しく3か月前程から夫の実家にて子どもを面倒見てもらっています。先生のお話では,従前の監護状況が親権者にとって非常に大事であるとのことであったので,従前私が主として子どもを監護してきた以上,私が親権者となると思うのですがどうでしょうか。

<弁護士からの回答>

 これまでご説明してきたとおり,親権者の判断は「子の福祉」の観点から判断されます。ご相談者様がおっしゃるように,確かに従前の監護状況については,親権者を判断する重要な要素ですが,それと同様に,現在の監護状況がどの程度継続しているのかという点についても非常に重要な要素となっています。そこで,本日は,現状維持の重要性についてご説明させていただきます。

 親権者の指定において,従前の監護状況から環境が変更される場合には,環境の変更による子に与える影響を考慮する必要があります。この点,幼児や15歳以上の子どもになると環境変更による影響は比較的小さくなると考えられています(子の置かれている個々の状況によって異なるとは思います。)。

これに対し,幼稚園に通っている子や中学生特に小学生では環境の変化,具体的には転校による交友関係の変化等与える影響も多く,さらに新しい環境において馴染めるのか否かという点も予測することが困難であります。
 また,親権者の判断の際には,従前の環境と新しい環境のどちらが優れているのかという点も判断の要素となりますが,通常,いずれの環境も監護能力については問題と判断され,監護体制で優劣がつくことはあまり多くはありません。

 そこで,裁判所においては,現在子がおかれている環境に問題が無い場合,新しい環境が特段優れていると判断できる事情がない場合には基本的には現状を維持すべきであると判断される傾向にあります。
 ご相談者様の場合でも,現時点においてご主人の実家での一定程度継続している以上,ご相談者における監護状況によっても異なりますが,離婚に伴って,お子さんが他県に引越しせざるを得ない場合等環境が大きく変更せざるを得ない場合には現状を維持すべきであるとして,相手方に親権者が指定されるべきであると判断される場合もあります。

 したがって,ご相談者様の場合にも,環境を変化させないような体制を確保することができるかを検討したり,相手方との話し合いにより,交互に未成年者を監護する等対策を行う必要があると思われますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.04.17

親権者の判断基準②

<ご相談者様からのご質問>

 妻との離婚を考えています。妻との間には5歳の息子がいるのですが,息子からは「パパと一緒にいたい」といつも言ってもらっています。息子が私と一緒にいたいと言ってくれているので,親権者は妻ではなく私がなれると考えて問題ないですか。

<弁護士からの回答>

 親権者の判断要素のところでもご説明しましたが,子の心身の状況についても判断要素となり,その中でも親権者に関する子の意向について判断要素となることがありますが,子の意向が親権者の判断においてどの程度考慮されるのかについてはケースごとに異なります。そこで,本日は,親権者に関する子の意向についてご説明させていただきます。

 これまでもご説明しているように,親権者の判断は子の利益のために行うものであることから,子の意思を尊重すべきことは当然です。家事事件手続法にも,親権者の指定または変更の審判をするとき,子が15歳以上の場合には子の陳述を聞かなければならないと規定されており(169条2項),子の意見を尊重すべきことを規定しています。

 もっとも,子が幼いときには,父と母が対立している状況下で両親ともに愛している子どもが,その時々で回答が異なったり,置かれている環境に左右されてしまうことが非常に多いです。そのような状況下でどちらの親と過ごすべきかという判断について,子の意思を重要な判断要素とすべきではないと考えられています。

 したがって,幼い子ども(小学校低学年や就学前の幼児)の場合には,一方の親と暮らしたいという意向や,一方の親への嫌悪の意思が確認できたとしても,その発言が真意ではない可能性や真意であったとしても変わる可能性があることから,あくまでも。参考程度に考慮される程度にとどまることになります。

 もっとも,家庭裁判所の実務では,子どもの年齢が概ね10歳程度に達している場合には,意思能力に問題はないと考えられています。したがって,意思能力に問題がないとされている10歳程度の子どもの場合には,子の意思の確認がなされ,親権者の判断において考慮されることが一般的です。別の機会にもご説明しますが,子の意思の確認に関しては,家庭裁判所の調査官という子どもに関する専門的な技官において子と面会し意向を確認します。

 ご相談者様のケースでもお子さんの意向のみでは,ご相談者様が親権者と指定されることが確定したわけではありません。その他の事情も詳細に確認しなければ正確に判断することは困難であるため,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.04.16

親権者判断の基準①

<ご相談者からのご質問>

親権者の判断要素についてはわかりました。
では,裁判官は判断要素をもとにどのような基準で親権者を判断するのでしょうか。インターネットなどでは「母性優先の原則」等があり母親が有利であると判断されると聞いたのですが,本当ですか。私の家庭では,いわゆる専業主夫という形をとっており,子どもが生まれた時から,妻ではなく私が子どもを育ててきたのですが・・・・

<弁護士からの回答>

前回は,親権者指定の判断要素についてご説明しましたが,今回から数回に分けて,裁判官がどのような基準で親権者を判断しているのかについてご説明させていただきます。

 1 「母性優先の原則」の有無

「母性優先の原則」とは,子(特に幼児)については,母親の存在が不可欠であるとして,特段の事情がないかぎり母親を親権者に指定するべきという考え方です。しかし,前回もご説明したとおり,親権者の判断は,「子の福祉」の観点からどちらがふさわしいかという観点から判断されるため,母親であることということが直ちに「子の福祉」から親権者として相応しいと判断されることにはなりません。よって,建前上は「母性優先の原則」という原則は採用されていません。

 もっとも,前回もご説明したとおり,親権者の判断要素として子の監護状況(監護実績等)については,非常に重要な判断要素となっており,日本においては夫が外で働き,妻が家で子を育てるという形が一般的になっているため,母親(妻)が子を監護していることが多いため,母親が親権者として指定されることが多いです。
したがって,よく,親権に関してご相談に来られる方からも「母親だと有利になりますか。」というご質問をいただくのですが,その際には,「母親というだけで有利になるということにはなりませんが,お子さんの養育状況等から母親の方が親権者として指定されることが多いです。」と回答するようにしています。

ご相談者様の事例では,ご相談者様が主にお子さんを監護してきたということですので,監護実績の点においては,ご相談者さまが有利と判断される可能性が高いといえるでしょう。

当事務所へご相談に来られる男性の方には,よく,どうせ母親が親権者として選ばれるのだから親権はあきらめていると話される方がいらっしゃいますが,親権者の判断においては,父親,母親という観点のみならず多くの要素をもとに判断していくため,必ずしも親権者になれないということはありませんので,是非親権について悩まれている場合にはいち早く弁護士にご相談ください。

2018.04.04

親権者指定の判断要素

親権者指定の判断要素

<ご相談者さまからのご質問>

  夫との離婚を考えています。ですが,子どもの親権については絶対私が欲しいと考えています。親権者を判断する際にはどのような事情が考慮されるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 夫婦当事者間において,親権者をいずれとするかについて,合意ができている場合には,問題なく親権者は決まるのですが,当事者間で親権者について争いがある場合には,最終的には家庭裁判所において,父と母のいずれが親権者として適切であるかについて判断することになります。
 そこで,今回は,裁判における親権者指定の判断要素についてご説明させていただきます。

 家庭裁判所において,親権者を判断するときの,最も重要な基準は「子の福祉と利益」になります。すなわち,父親と母親のどちらの側で生活をすることが子の利益や福祉に資するのか(子どもの将来のためになるか)という点を基準に判断していくことになります。そこで,裁判所ではおおむね以下の要素を総合的に考慮し,親権者を判断してくことになります。

 1 父母の属性等
   子どもは,父母のいずれかの監護下におかれて養育されることから,父母に関する事情は当然判断要素になってきます。具体的には,年齢,職業,収入,健康状態,生活態度等の父母の属性や資質は判断要素になります。例えば,暴力等頻繁に行ってきた当事者の場合には親権者としての適格性を欠くのではないかと判断されることになります。

2 監護状況等
  未成年者がどのような監護状況において育っていくのかという点については,まさに子の福祉や利益に直結する問題であることから,非常に重要な判断要素になります。
   したがって,これまでの監護実績,経済状況(収入,支出借金の有無等),居住環境,教育環境,監護補助者の有無等については判断要素となります。

 3 監護への意欲
   親権者として子どもへの愛情がどのくらいあるか(従前,子にどれほど関心を注いでいたか),親権者として子をどのように育てていきたいか等の監護への意欲についても親権の判断要素となります。別の機会にご説明させていただきますが,現在子を監護している場合に,相手方配偶者との子どもとの間の面会交流に対してどれだけ協力的かという点についても判断要素となります。

 4 子の心身の状況等
   先程もお伝えした通り,親権者の判断は,子の福祉,子の利益の観点から判断されることになるため,子に関する事情についても当然に判断要素となります。具体的には,子どもの年齢,性別,健康状態,性格等に加え,現在の環境について考慮されることになります。特に現在の環境については,兄妹姉妹との関係性や,学校への通学状況,交友関係だけでなく,非監護親との間の面会交流など現在の環境についてどれほど順応しているか,現在の環境が変化すること(監護する親が変わること)により子にどのような影響が及ぼされるのかという点についても考慮されることになります。
   また,別の機会にもお伝えしますが,親権者に関する子の意向についても,判断要素になることがあります。

   以上のように,親権者を判断する際には,夫婦だけでなく子どもに関する事項も含め,様々な事情を総合的に判断することになり,非常に専門的な内容になっていることから,親権を欲しいと考えられている場合にはできるだけ早く弁護士にご相談いただいた方がよいでしょう。

2018.04.03

親権とは

親権とは

<ご相談者様からのご質問>

   先日,妻から,離婚したいと言われ,自分もこれ以上妻とはやっていけないと考えていたため,離婚に応じることにしました。妻との間には,3歳の息子が1人いるのですが,妻は息子の親権については自分(妻)が欲しいと話しています。これまで仕事中心であったため,息子については妻が中心として育てることについては私も異論はありませんが,そもそも親権ということについてよくわかっていないので教えてください。

<弁護士からの回答>

 離婚する際,夫婦の間に未成年の子がいる場合には,離婚の際に子の親権者を父か母のいずれかに指定しなければなりません。
 そこで,今回は,親権の内容についてご説明させていただきます。

 親権とは,成年に達しない子を監護,教育し,その財産を管理するため,その父母に与えられた身分上及び財産上の権利・義務のことをいい,未成年の子に対し親権を有している人を親権者といいます。
 未成年の子どもは,未熟であり1人では生活したり,内容を理解して法律行為等を行うことが困難であるため,親権者が親権を行使し,本人の生活を支え,財産などを管理していくことになります。
 親権の定義にもあるように,親権は「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分けられます。

 「身上監護権」とは,子の身分行為に関する同意権,代理権居住指定権(子どもをどこに住まわせるのかを決める権利),懲戒権(監護や教育に必要な範囲内で懲戒,しつけを行う権利),職業許可権(子が職業を営むにあたり,その許可を行う権利)などを言います。簡単にいうと,実際に子どもとともに生活し,子どもを監護養育してく権利のことをいいます。
 また,「財産管理権」については文字通り子の財産を管理する権利です。子ども名義の預貯金を管理したり,子ども本人にかわって売買契約などの法律行為を行ったり,子が勝手に法律行為を行った場合には,親権者としてその法律行為を取り消すことができます。

 夫婦(父母)が婚姻中の場合には,親権について,父母が共同して行うことになりますが(共同親権の原則,民法818条3項本文),日本では,離婚する際には,父または母のどちらか一方しか親権者となることができません(英国やフランス等諸外国では,離婚後も元夫婦が共同して親権を有するとしている国の方が一般的なようです。)。したがって,離婚により親権者とならなかった親には上記の「身上監護権」や「財産管理権」が認められなくなります。

 したがって,離婚の際には,父と母のどちらが親権者となるかについて深刻な争いに発展するケースも少なくありません。
 次回からは,離婚の際に親権者を決める際にはどのような判断要素が考慮されることになるのかについてご説明させていただきます。

2018.04.02

よくあるご質問(離婚原因と慰謝料について)

よくあるご質問(離婚原因と慰謝料について)

<ご相談者様からのご質問>

 これまで夫とは些細なことでケンカが絶えなかったのですが,先日,大きなケンカをした際,夫から離婚して欲しいと言われて,私もこれ以上夫とは一緒にいられないと思い,離婚に応じたいと思っています。ですが,夫から離婚を切り出している以上夫が悪いので慰謝料を払ってもらいたいと考えているのですが慰謝料は認められるでしょうか。

<弁護士からの回答>

 ご相談者様からは,弁護士に対し,「相手が原因で離婚をすることになったのだから慰謝料を払ってもらえますよね。」とご質問いただくことがございます。そこで,これまで法定離婚原因についてご説明させていただきましたが,今回は,ご離婚原因と慰謝料の関係について弁護士がご説明させていただきます。

 ご相談者様の中には「離婚の原因を作った」=「慰謝料を払う義務がある」と考えられている方が非常に多くいらっしゃいます。
 しかし,離婚をしたら必ず慰謝料を支払わなければならないという決まりは,日本の法律では一切ありません。相手方において慰謝料の支払いを命じるのが相当であるような違法な行為(「不法行為」といいます。)を行ったことにより,夫婦が離婚するに至った場合に限り法律上,慰謝料を支払う義務が発生します。

 ご相談者様のケースでの離婚の原因については,夫婦喧嘩の際にご主人が離婚を切り出したと伝えたことにありますが,離婚を切り出すことが民法上の不法行為には該当しません。したがって,「離婚の原因を作った」ということが直ちに「慰謝料を支払う義務がある=不法行為に該当する」ということにはなりません。離婚の原因を作った行為が不法行為に該当するような違法な行為に該当することが必要になります。

 もちろん,不貞行為や暴力行為など「離婚の原因を作った行為」が直ちに「不法行為」に該当するケースもありますが,よくある「性格の不一致」が原因で離婚するような場合に,一方当事者が慰謝料の支払いを求め,相手方が支払いを拒んだ場合には,裁判などをしても慰謝料が認められないことが一般的です。

 もっとも,相手方が任意で慰謝料を払ってくれる場合には(この場合には厳密にいうと慰謝料という名目よりも解決金という名目の方が適切かもしれません。),金銭を受け取ることは可能です。

 弁護士にご相談いただいた際には,離婚に至るまでの経緯をお聞きした上で,法律上慰謝料の支払いが認められるのか否かについてもアドバイスをさせていただきますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.03.31

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論③~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論③~

<ご相談者様からのご質問>

  夫の両親との折り合いが合いません。夫は何とかして仲を取り持ってくれてはいるのですが,夫の両親とは根本的に合わないのだと思います。
  夫との両親との不仲を理由に離婚することはできるのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  これまで,「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しうる行為についてご説明してきましたが,今回は,単にそれだけでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しない事情やそれにどういった事情が加われば該当しうることになるのかを弁護士がご説明させていただきます。

1 相手方配偶者の両親との不和

   一般的にも嫁姑問題に限らず,相手方配偶者の両親との間で折り合いが合わないことにより離婚を考える方は多く,離婚調停等においても,配偶者の両親との不仲を理由に離婚を希望される方は少なくありません。
   しかし,結婚が当事者だけでなく家族の問題であったとしても,婚姻関係が破綻しているか否かの判断において考慮されるのはあくまでも夫婦当事者の関係であることから,単に相手方の両親との折り合いが悪いということのみでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとはいえないでしょう。
   もっとも,夫が妻と自分の両親との折り合いが悪いことを知っているにも関わらず両者の関係を良好にすることについて何ら努めてこなかったこと等の事情が認められる場合には離婚事由として主張できる場合があります。

2 宗教活動

  日本の憲法では,信仰の自由や宗教活動の自由が保障されていることから,相手方配偶者が特定の宗教に入信したことや宗教活動を行っていること自体をもって「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することはありません。しかし,結婚当初宗教活動に関し,家族を巻き込まないと約束していたにも関わらず子どもたちにも宗教活動を強要していたり,宗教活動(勧誘活動や集会への参加等)にのめりこみすぎたことにより,仕事,家事,育児等をおろそかにしていたという事実が認められる場合には離婚事由として主張できる場合があります。

3 ギャンブル,浪費,借金

  ギャンブルや浪費,借金についてもそれ自体を禁じる法律等は存在しないため,ギャンブルをしていたことや,借金を有していることのみでは離婚事由たりえません。ただし,ギャンブルや浪費により家庭が経済的に困窮するような事態を招いたり,返す見込み無く借金を行い,配偶者や親族等が返済を強いられたような場合には,離婚原因として主張しうることになります。

4 犯罪を犯したこと等

  相手方配偶者が犯罪を犯したことや,それに伴い服役していたとしてもそれをもって直ちに婚姻関係が破綻していると認定されるものではありません。もっとも,犯した犯罪が殺人などの重大な犯罪である場合には犯罪の悪質性や長期間服役することが明らかであるため離婚が認められやすいでしょう。また,軽微な犯罪を何回も繰り返していたり,当事者間で次何か悪いことをして捕まったら離婚する旨誓約していたにも関わらずそれに反して再び罪を犯したような場合には離婚事由として認められうるでしょう。

  このように,婚姻関係が破綻している(「婚姻を継続しがたい重大な事由」が存在する)と主張する際にはどのような事情が有力な事情に該当するかについては,とても複雑であり,ご依頼者様ご本人での取捨選択はとても困難であると思います。したがって,離婚したいと考えられている方は,是非早めに弁護士にご相談いただき,弁護士に対し,離婚したいと考えた理由については,それが有力な事情であるかという点についてはいったん度外視して全て弁護士にお伝えいただいた方がよいと思います。

2018.03.30

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~

 <ご相談者様からのご質問>

  単に離婚がしたいということだけでは簡単には離婚事由にはならないのですね。
  他には,どのような事情が離婚原因として主張しうるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 夫婦が結婚してから,離婚に至るまでには,当事者のみならずときには両家の家族をも巻き込んで様々なことが起きているのが通常です。一方当事者が離婚に応じていない場合,「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」が認められるか否かについては,上記の様々な出来事についてどれだけ説得的に主張及び立証(証拠により証明することです。)できるかが重要になってきます。前回に引き続き,今回もどういった事情が該当しうるのかについてご説明させていただきます。

1 暴力,暴言(DV,モラハラ等)

  暴力や暴言等を行うことが,夫婦の関係を破綻させることにつながることは当然であり,裁判所としても,DV(ドメスティック・バイオレンス)等に対して厳しく対応しており,きちんと証拠に基づきDVとして認定される場合には,離婚事由に該当することになります。また,近年ワイドショーなどでも使われているモラハラ(モラルハラスメント)についてもDVと同視しうるような程度のものであれば離婚事由足りえるでしょう。ここで大事なのが,単に当事者が「DVだ」「モラハラだ」と主張するのみでは,足りず,あくまでも客観的に裁判所からみてDVとして評価されるうる事実が存在することが必要になってきます。また,「ドメスティック(=家庭内)」というだけあって,DVやモラハラの立証はとても困難を伴います。したがって,録音,録画,毎日日記を書く,程度がひどい場合には警察や,市などの相談窓口に連絡を取っておくなど地道な証拠集めが重要になってきます。

2 性生活の問題

  最高裁判所の判例においても夫婦間の性生活が夫婦関係の重要な要素であること自体は認めています。したがって,相手方が拒否しているにも関わらず異常な性行為(SMプレイ等)を強制させることを継続的に行っている場合などには離婚原因の1つとして主張しうる事情になりえます。
  逆に,正当な理由がないも関わらず性交渉を拒否する(いわゆるセックスレス)状態が長期間に渡り継続していた場合にも離婚事由として主張しうることになります(あくまで正当な理由もなく拒否していることが必要になりますが,長期間にわたり拒否し続けた場合には慰謝料の支払いが認められた裁判例もあります。)。

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