弁護士コラム

2019.04.25

【相談事例38】合意をすればすべて有効?~契約(法律行為)の有効性について~

【相談内容】

平成32年という合意であっても無効になることは少ないようですね。
先日、妻の不貞相手との間で、慰謝料の和解をして、慰謝料として5,000万円支払うと相手も言っていたため、その旨の和解契約書を作成しました。
相手は学生で、到底払えきれないとは思うのですが、一度当事者で合意をした以上、問題ないですよね?

【弁護士からの回答】

前回は、契約(法律行為)の客観的有効性の要件のうち、内容の確定性についてご説明させていただきました。

今回は、内容の確定性以外の客観的有効性の要件についてご説明させていただきます。

1. 内容の「実現可能性」について

前回ご説明したとおり、契約が成立すると、契約の当事者には、契約内容にしたがった権利(債権)と義務(債務)が発生することになり、義務を履行することができない場合には、損害賠償をしなければならないリスクを背負うことになります。

したがって、契約の内容が実現することが不可能な契約の場合には、当事者間で合意をしたとしても、契約は無効となります。

例としては、既に消失してしまっている物の売買や、「3時間以内に月に行って帰ってくる」といったような、社会通念上実現不可能な契約(そもそもこんな契約を行うこと自体考えられませんが、分かりやすい例としてご説明しています。)についても無効となります。

2. 内容の「適法性」について

法律の中には、契約の当事者を保護するために、その規定に反する合意を行ったとしてもその合意が無効になる効力を有する規定があり、これを「強行規定」といいます。

強行規定の例としては、民法146条で「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と規定されており、時効の利益(消滅時効や取得時効により生ずる利益(債務の消滅や、物の所有権の取得など)をいいます。)については時効期間が満了する前に契約書等で時効の主張を行わないと定めていても、上記強行規定に反し無効ということになります。

3. 内容の「社会的妥当性」について

当事者がいかに合意していたとしても、公の秩序や善良な風俗(社会における一般的な倫理)に反し、社会的な妥当性を欠く法律行為(契約)については、公序良俗違反として民法90条によりとなるとされています。

例えば、「人を殺したら200万円支払う」といったような犯罪行為に関する契約や、愛人、妾の契約については、家族若しくは性道徳に反する契約として無効になります。

また、不当に高額な利息を付した契約や、莫大な賠償金などを設定するようないわゆる暴利行為に関しても、公序良俗違反として無効になるとされています。

ご相談者様の事例でも、不貞行為の慰謝料の金額がどの程度の金額になるかについては、不貞行為の内容や、不貞を行った人の経済能力などが考慮の対象となります。しかしながら、5000万円というあまりにも高額な金額について、学生が支払うことができ金額ではないことは誰がみても明らかであるため、示談書を作成していたとしても公序良俗に反し無効とされてしまう可能性が非常に高いでしょう。

ご相談者さまの事例については、あまりに極端な事例ですが、上記のような契約の有効性については意識しておかなければ、要件を満たしていない契約書を作成してしまう可能性は少なくないと思いますので、契約書等の合意書面を作成する際には、是非一度弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.04.02

不貞相手に慰謝料請求ができない??④~今後の問題点について~

【ご相談者様からのご質問】

第三者に離婚慰謝料を請求することができる場面はとても限られているのですね。

今回の最高裁所の判例がでたことにより、気を付けなければならないことはありますか。

【弁護士からの回答】

これまで、不貞行為を行った第三者に対する離婚慰謝料が否定された最高裁版所の判例についてご説明させていただきましたが、今回は、上記判例が出されたことによる、今後の検討課題や、注意しなければならない事項についてご説明させていただきます。

1 注意事項~消滅時効に注意~

夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対しては、「離婚」慰謝料の請求は認められず、「不貞」慰謝料の請求のみ認められることになります。
そして、不貞慰謝料の場合自身の配偶者が不貞行為を行ったこと及び加害者知った時点から3年以内に訴訟を提起しなければ、消滅時効により不貞慰謝料は消滅してしまうことになります。

したがって、不貞を行った第三者に対して慰謝料請求を行う場合には、不貞行為の事実や相手方を知った日から3年以内に請求しなければならないということは認識しておいた方がよいでしょう。

2 検討課題①~離婚の有無が慰謝料金額に及ぼす影響~

従前、「不貞」慰謝料を第三者に対し請求をする場合には、当該夫婦が離婚したか否かという点が、慰謝料金額を算定する上で考慮の対象になるという考え方がありました。

もっとも、今回の判例により、離婚するか否かは、あくまでも夫婦での問題であるということであるため、この判例を素直に読むと、不貞慰謝料を第三者に対し請求する場合には、夫婦が離婚をするのか、婚姻関係を継続するのかについては、あまり影響しないようにも読めるため、「不貞」慰謝料の金額が離婚の有無により影響を及ぼすのか否かについては、今後の裁判例の蓄積を待つ必要があると考えています。

3 検討課題②~配偶者と第三者の連帯責任の範囲~ 

別の機会にご説明させていただきますが、不貞行為を行った配偶者と第三者は2人で不貞行為という違法な行為を行っているため、連帯して慰謝料を支払う義務をおっており、これを共同不法行為による連帯債務といいます。

今回の最高裁の判例で、配偶者に対しては、不貞慰謝料のみならず離婚慰謝料も認められるものの、第三者に対しては不貞慰謝料のみ認められることになったため、配偶者と第三者は、「不貞」慰謝料の範囲のみ連帯して責任を負うということになると解するのが自然であるため、訴訟において、配偶者に対しては、離婚慰謝料、第三者に対しては不貞慰謝料を請求した場合にはどの範囲で連帯債務を負担することになるのかについては、今後の検討課題になると思います。

4 不貞行為以外で、第三者が離婚慰謝料を負う場合はあるのか?

最高裁判所は、「当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情」がある場合には、第三者に対し「離婚」慰謝料を請求することができる旨判断しているところ、この判断が、不貞行為により離婚を余儀なくされた場合に限定した判断であるのか、それとも不貞行為に至っていなくても、第三者が暴力や脅迫により離婚を余儀なくされた場合等においても、離婚慰謝料を認めるという判断になるのかについては今後、問題になっていくと思われます。

5 最後に

これまで、数回にわたり、不貞行為に関する最高裁の判例についてご説明させていただきましたが、この判例のみならず、不貞行為の慰謝料請求は、法的に複雑であり、専門的な内容が多々ある分野ですので、慰謝料請求については、是非早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。

2019.04.01

不貞相手に慰謝料請求ができない??③~最高裁判例の検討~

【ご相談者様からのご質問】

先日、妻から離婚を切り出されました。理由としては、不倫相手から、離婚して一緒になろうと言われたらしく、妻も不倫相手との将来を考えているとのことでした。

妻がそう言う以上、妻との関係は考えていませんが、妻と、不貞相手に対してはきちんと慰謝料を請求したいと考えております。

しかし、先日、ニュースで、不貞相手には離婚の慰謝料が請求できないと知り、どうすればいいか悩んでいます。

【弁護士からの回答】

前回は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する慰謝料請求に関する最高裁の判例についてご説明させていただきました。

今回は、前回ご説明した最高裁の判例の内容の解説とともに、今後検討すべき課題についてご説明させていただきます。

1 第三者には「離婚」慰謝料の請求は認められない。

前回ご説明したとおり、最高裁は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する「離婚」慰謝料は原則として認められないと判断しました。

他方、不貞行為を行ったことを理由とする慰謝料(不貞慰謝料)については認められると判断しました。

離婚慰謝料が原則として認められないと判断した理由として、最高裁判所は、「夫婦が離婚するまでに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来当該夫婦の間で決められるべき事柄である。」と述べられています。

すなわち、不貞行為があったとしても離婚するかしないかは夫婦で決めるべき事情であるため、離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料は、配偶者に対し請求すべきであって(最高裁も、配偶者に対しては離婚慰謝料を請求することができると判断しています。)、離婚するかしないかに関与することができない第三者に対しては原則請求することはできないと判断しました。

2 例外的に離婚慰謝料が認められる場合

上記のとおり、最高裁判所は、夫婦が離婚するか否かは夫婦で決められるべき事柄であることを理由に、第三者に対する離婚慰謝料を否定しています。

したがって、最高裁判所も、第三者が「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある」場合には例外的に、第三者に対する離婚慰謝料が認められると判断しています。

どの程度の干渉があれば、特段の事情があると認められるかについては、今後、の裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、第三者が不貞している夫婦の一方に対し、配偶者と離婚するよう積極的に働きかけた、その結果として離婚するに至った場合や、第三者自身が、不貞をしていない配偶者に対し、離婚するようメールや電話などで執拗に要請した場合などは、第三者の不貞行為等によって、離婚を余儀なくされたと認められ得るため特段の事情の有無を検討してよいのではないかと思います。

次回は、今回の最高裁判所の判例が出されたことによる、今後の検討課題や注意すべき事項等についてご説明させていただきます。

2019.03.29

不貞相手に慰謝料請求ができない??②~各裁判所の判断は?~

【ご相談者様からのご質問】

慰謝料には、離婚慰謝料と不貞慰謝料の2種類があるのですね。

不貞が原因で離婚するのだから、不貞慰謝料だけでなく離婚慰謝料も当然、第三者にも請求できると思うのですが・・・。

【弁護士からの回答】

前回は、最高裁判例の事案のご説明と、どのような点が問題になっているのかについてご説明させていただきました。

この事件、第1審、第2審と最高裁との間で判断が分かれたのですが、ポイントは、不貞行為を行ったことと、夫婦が離婚することをどのように考えるのかというところにあります。

1 第1審及び第2審について

第1審及び第2審は、妻とAとの不貞行為により、夫と妻との間の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、Aは両社を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、Aは夫に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができると判断しました。

すなわち、第1審及び第2審では、不貞行為を行った第三者に対しても離婚慰謝料を請求することができると判断し、原告の慰謝料請求の一部を認容しました。

判決の理由にもあるように、不貞が原因で離婚したのであるから、離婚慰謝料を支払う義務があるというのは自然なようにも思えます。

もっとも、不貞行為の第三者に対し離婚慰謝料が認められるとすると、不貞により直ちに離婚した場合には、離婚してから3年間相手から請求がない場合には、時効により、請求を逃れられることになりますが、不貞が原因で家庭内別居が続き、不貞行為から10年経過した後に、離婚したような場合には、第三者はその場合でも慰謝料を支払う義務があることになってしまい、いつまでも損害賠償を受けるリスクにさらされることになり、妥当ではないという考え方もあります。

2 最高裁判所の判断

上記第1審及び第2審の判断を不服としたAが、最高裁判所に上告を行った結果、平成31年2月19日、最高裁判所において、それまでの判決のうち、Aの敗訴部分(離婚慰謝料を認めていた部分)を取消した上で、原告である夫の請求を棄却しました。
そして、最高裁判所は、以下のような判断を行いました。

①夫婦の一方は他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害を求めることができる。

②夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合はあることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない

③第三者がそのこと(夫婦離婚させたこと)を理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不法行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる。

上記①~③の詳細な内容については次回ご説明させていただきますが、上記判断のうち②については、第三者に対し、「不貞慰謝料」は認められるものの、「離婚慰謝料」は原則として認められないと判断した点で非常に重要な判例とされています。

次回は、最高裁判所の判断の内容について解説させていただきます。

2019.03.28

不貞相手に慰謝料請求ができない??①~最高裁判例の争点とは~

【ご相談者様からのご質問】

1年前に夫がほかの女性と不倫していることが判明しました。現在、夫とは離婚協議中なのですが、夫が離婚に応じてくれないのと親権等の問題があり、まだまだ離婚については長引きそうです。

夫の不倫相手へ慰謝料については、夫との離婚が解決してからゆっくり請求しようと考えています。

【弁護士からの回答】

先日、最高裁判所において、不貞行為を行った第三者への慰謝料請求に関する重要な判決が出されました(テレビのニュースでも報道されていたので、一般の方でも知られている方もいらっしゃるかもしれません。)。

もっとも、ニュースの見出しなどでは、「不貞行為を行った第三者に対し慰謝料を請求できない」というような誤った情報を与えるような内容も見受けられました。

そこで今回から、最高裁判例の事案の概要や争点(何が法的な問題となったのか)についてご説明するとともに、最高裁判所がどのような判断を行ったのかについてご説明させていただきます。

1 事案の概要

原告の夫は、平成6年3月に妻となる女性と婚姻し、その年の8月に長男、平成7年に長女をさずかりました。しかし、夫は仕事のため帰宅しないことが多く、妻も働くようになった平成20年12月以降は、夫婦の間で性交渉がない状態になっていました。

その後、妻は入社した直後に会社で知り合った男性(訴訟の被告です。以下、Aとします。)と親密になっていき、平成21年6月以降、Aと不貞行為に及ぶようになりました。

そして、夫は、平成22年5月頃、妻とAの不貞関係を知るに至りましたが、そのまま同居を続けていました。また、妻とAとの不貞関係は、同じころ解消しました。

夫と妻はそのまま同居を続けていましたが、平成26年4月頃、長女が大学を進学したのを機に、夫と別居し、半年間夫のもとに帰ることも連絡を取ることもなかったため、夫において平成26年11月頃、離婚調停の申し立てを行い、平成27年2月に調停離婚が成立しました。

そして、離婚成立後、夫から不貞相手のAに対し、妻とAが不貞行為を行ったことにより夫婦が離婚するに至ったとして慰謝料請求等を500万円の支払いを求める訴訟を行いました。

2 問題点

今回の事案で問題となるのが、慰謝料請求権の消滅時効との関係で、「何を原因とする慰謝料請求を行うか」という点にあります。
まず、慰謝料請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条、710条)であり、かかる請求権の消滅時効は、被害者が「損害及び加害者を知った時から三年間」になります(民法724条)。

そして、不貞と離婚の関係では、「不貞行為を原因とする慰謝料」(「不貞慰謝料」といいます。)と、「離婚を余儀なくされたことによる慰謝料」(「離婚慰謝料」といいます。)の2つの慰謝料があり、各慰謝料では、時効期間の開始時期(起算点といいます。)が異なります。

すなわち、不貞慰謝料は、不貞行為をされたことにより被った精神的苦痛が損害になります。したがって、時効の起算点、すなわち「損害及び加害者を知った時」というのは、不貞行為の事実及び不貞行為の相手方を知ったときになります。

最高裁判例の事例では、夫は平成22年5月ころ妻とAの不貞の事実を知っているため、3年後の平成25年5月の時点で、時効期間が満了してしまい、夫はAに対し、「不貞」慰謝料が請求できないことになってしまいます。

これに対し、「離婚慰謝料」の場合には、離婚を余儀なくされてしまったことによる精神的苦痛が損害になります。したがって、「損害」を知ったときが時効期間の起算点になるため、離婚慰謝料の場合には、離婚した時が起算点となります。

最高裁判例の事例でも、「離婚」慰謝料の構成をとれば、離婚をしたのが平成27年2月であるため、そこから3年以内であれば離婚慰謝料を請求することができます。
おそらく夫(原告)の訴訟代理人も不貞慰謝料では時効期間の問題があるため、離婚慰謝料として構成して訴訟提起したのでしょう。

したがって、最高裁判例での一番の争点は、「不貞行為を行った第三者(夫婦以外の不貞行為の当事者)に対し、「離婚」慰謝料を請求することができるか」という点になり、この点について、最高裁判所が初めて判断を行ったことで注目が集まっていました。

次回には、上記争点について、第1審、第2審理及び最高裁判所がどのような判断を下したかについてご説明させていただきます。

2019.02.20

婚姻費用と養育費とは

【ご相談者様からのご質問】

夫からのモラハラ、パワハラが理由で夫との離婚を考えています。ですが、私は現在、専業主婦で働いておらず、子ども1人もおり、別居後や離婚後の生活が不安です。

夫から養育費などお金をもらうことができると聞いたことがありますが、具体的な内容をよく知りませんので教えていただけますか。婚姻費用と養育費は離婚後もどちらももらえるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

離婚のために夫婦が別居したとしても、離婚が成立するまでの間は、夫婦であることには変わりはありません。また、未成年のお子さんがいる場合には、別居後も離婚後もお子さんの生活費などは負担していく必要があります。

そこで、今回から複数回にかけて離婚事件における生活費の問題、すなわち、婚姻費用や養育費についてご説明させていただきます。

今回は、婚姻費用と養育費の定義等総論的な内容についてです。

1 婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦と未成年(未成熟)の子どもの生活費のことを言います。

民法760条では、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定されていることから、夫婦は、婚姻から生ずる費用、すなわち、生活費を分担することになります。

また、民法752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されている以上、夫婦である以上、収入がある方が他の配偶者を扶養する義務を負うことになります。

この点、夫婦や家族が同居している場合には、生活費の負担については問題になることはありません(数は少ないですが、同居しているが生活費を支払わないという場合もゼロではなく、その場合には同居していても婚姻費用が問題になることがあります。)。

もっとも、収入の少ない配偶者や子どもが別居している状況では、別居している状態で、婚姻費用(生活費)の分担について協議を要することになります。

2 養育費について

上記の婚姻費用は、簡単に言うと、収入の少ない方の配偶者と未成熟のお子さんの生活費のことを言いますが、離婚後は婚姻費用ではなく、養育費が問題となります。

すなわち、上記婚姻費用のうちの夫婦の扶養義務については、婚姻期間中のみ発生するものであり、離婚後は、夫婦ではなく、厳しい言い方にはなってしまいますが、他人になるため、元配偶者であったとしても、その配偶者自身の生活費を負担する必要はなくなります。

もっとも、夫婦間の関係は離婚により解消するものの、未成年のお子さんと夫婦との関係は、親の離婚に関係なく続いていくことになります。したがって、夫婦の離婚後は、収入のある配偶者が、未成年者の生活費を養育費という形で支払う必要があります。

ご相談者様の質問にあるように、婚姻費用と別に養育費がもらえるわけではなく、簡単に整理すると、離婚するまでは婚姻費用、離婚後は養育費というように、棲み分けがなされています。

婚姻費用や養育費にまつわる個々の問題については、次回以降でご説明させていただきます。

2019.02.20

面会交流について⑦

【ご相談者様からのご質問】

面会交流を拒否すると、間接強制としてお金を払わなければならないのですね。

ただ、逆を言えば、間接強制のお金だけ払っていれば子どもを相手に会わせなくても済むのですね。

【弁護士からの回答】

面会交流について、合意した内容や、審判で決定した面会交流の内容を頑なに実施しない方は少なからずいらっしゃいます。

これまで何度もお伝えしているとおり、面会交流についてはあくまで子の福祉の観点から実現すべきであるとして裁判所も判断を行っています。また、未成年のお子さんと離れて暮らす非親権者にとって、お子さんとの交流を実現するという利益は法的にも保護に値する利益であると認められています。

したがって、正当な理由なく面会交流を実施しない場合には、上記の間接強制以外の不利益を被る可能性があるため、今回ご説明させていただきます。

1 親権者変更

正当な理由なく、面会交流を拒否し続けることは、お子さんと非親権者の親との交流を阻害し続けていることになるため、親権者の適格性を欠くと判断されてしまったとしてもやむを得ないでしょう。

もちろん、面会交流を拒否したことのみをもって親権者変更が認められるというわけではありませんが、少なくとも、親権者変更の判断において、従前の親権者にとって不利な考慮要素となってしまうことは間違いありません。

2 慰謝料請求

上記のとおり、面会交流を実施することは親の利益として法的な保護に値する利益になります。

したがって、正当な理由なく面会交流を拒否したことにより上記利益を害することになった場合には、親権者害された非親権者の精神的苦痛を慰謝料という形で賠償する義務があります。

どの程度の慰謝料が支払われるかについては、具体的な相場があるわけではないのですが、面会できない期間、お子さんの年齢などを考慮して判断されることになりますが、裁判例では「長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告(長男の父)の精神的苦痛は相当大きい」などとして、相手方(元妻)らに対し合計100万円の支払い義務を認めたものもがあり、長期間、面会交流を拒否することで、多額の賠償責任を負うことも否定できません。

3 最後に

離婚に伴い、夫婦であった当事者の関係を、離婚後も円満な関係を継続することは原則として難しいと思われますが、夫婦が離婚したとしても、お子さんにとって親であることにはかわりはありません。

親権者の方には面会交流はあくまでもお子さんのために実施するものであるということをきちんと理解して面会交流を実施する必要があります。

もっとも、一度面会交流について合意に至ったのちに、状況が変わり、従前の面会交流を維持すべきでない場合もあります。

その際には、再度面会交流調停などを申し立てる必要があるため、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

2019.02.19

面会交流について⑥

【ご相談者様からのご質問】

妻と離婚したのですが、妻が子どもと会わせてくれないため面会交流の調停を申し立てました。調停でも話し合いがつかずに、審判になり、審判では子どもとの面会交流を認めてもらいました。ですが、審判が出たにも関わらず、妻は、子どもと会わせようとしません。

面会交流を強制的に実現する方法はないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

面会交流について、調停で合意した場合や、審判で裁判所が判断した面会交流の条件については、未成年者のおかれた環境等に変化がない場合には、監護親において、お子さんと非監護親との間で面会交流を実施させるべき義務を負うことになります。では、監護親が調停や審判で認められた面会交流を実施させない場合に、強制的に面会交流を実施する方法はあるのでしょうか。

1 強制執行という手段

離婚に関する条件(養育費や財産分与)については、調停で合意した場合や、審判で判断されたには、相手方がすべき義務を怠った場合(養育費を支払わない場合、財産分与を支払わない場合)には、裁判所を通じて、強制的に相手方がすべき義務の履行を実現させることができません。この手続きを強制執行といいます。したがって、養育費や財産分与を支払うべき義務があるにも関わらず支払わない場合には、給料の差押を受けたり、預貯金口座を差し押さえられたり、不動産を差し押さえられ、競売にかけられるなど、強制的に金銭を回収されることになります。

2 面会交流における強制執行

では、面会交流の場合の強制執行の場合にはどのような方法で強制執行が実現されるのでしょうか。

強制執行の方法は2つあり、そのうちの1つの方法として口座を差し押さえたり、不動産を差し押さえることにより、返還を求めている動産(自動車など)を引き渡しを受けるなど、強制執行の目的物を直接譲り受けることで強制執行を実現するという直接強制という方法があります。

もっとも面会交流においてこの直接強制を仮に実行しようとすると、執行官(強制執行を実現する裁判所の職員です)が監護権者の自宅などに赴き、お子さんを連れていき非親権者との面会を実現させるという方法をとることになり、お子さんの福祉を害することになってしまいます。

したがって、面会交流における強制執行については、直接強制ではなく、間接強制という方法がとられることになります。間接強制とは、判決などにより一定の行為を行うよう義務付けられた人(債務者といいます。)が、義務を履行しない場合に、一定の金銭の支払いを強制することで、義務の履行の実現を図る強制執行の方法をいいます。

面会交流の場合には、1回面会交流をさせなかった場合には、金〇万円を払えというような命令がでることになります。

このように、面会交流を正当な理由なく拒否した場合には、間接強制として金銭の支払いを余儀なくされてしまうため、調停で合意した内容や、審判で確定した内容については順守することが必要になります。

2019.02.19

面会交流について⑤

【ご相談者様からのご質問】

3年前に夫と離婚し、子どもの親権者は私になっています。これまで、夫と子どもとの間で面会交流を問題なく実施してきたのですが、今後、私が再婚することになりました。

再婚相手の人は、子どもと養子縁組をしてもらう予定になっています。これまでは、離婚しても父親であることには変わりはないので、面会を認めてきましたが、私も再婚しますし、新しい父親もできるので、面会交流はなしにしてもらいたいと考えているのですが・・・・

【弁護士からの回答】

今回も面会交流制限すべき事由に該当するか否かについてご説明させていただきます。

ご相談者様のように、離婚をする人がいれば再婚する人もいらっしゃるため、お子さんをとりまく環境は変化していくため、面会交流を求める非監護親の方も、お子さん自身の環境の変化についても理解を示すことが必要です。

1 お子さんの自身の環境の変化

例えば、お子さんが小さいとき(3歳、4歳)の離婚をした際に、夫婦間で毎週、土日に面会交流を実施すると合意していたとします。

もっとも、お子さんが大きくなり、小学校や中学校に入った際に、毎週土日に面会交流を実施するということが現実的に困難になるということは明らかでしょう。

このように、お子さん自身の進学等に伴い、従前の面会交流を実現することが困難となった場合には、いったん面会交流について合意していたとしても、一生その合意に拘束されるということはなく、面会交流は制限されてしまうことが一般的です。

面会交流に関しご相談に来られる方からは「いったん合意した以上、どんなことがあっても守ってもらうのが普通ですよね」と聞かれることもあるのですが、以前にもお伝えした通り面会交流はあくまでもお子さんの利益のために実施されるべきものであるため、面会交流を求める親としては、お子さん自身の環境の変化によって面会交流の内容も変えざるを得ないということを理解されておいた方がよいと思います。

2 監護親の再婚やお子さんとの養子縁組

では、ご相談者様の事例のように、監護親が再婚し、お子さんと再婚相手との間で養子縁組が締結された場合には、非監護親との間の面会交流は認められないのでしょうか。

結論から申し上げますと、再婚や養子縁組を行ったとしても、非監護親との間の面会交流が一切認められないということにはならないのが通常です。

再婚や養子縁組をしたとしても、お子さんと、非監護親との間の親子関係がなくなるわけではなく、複雑な環境にはなりますが、お子さんにとっては、非監護親(実父)も再婚相手も(養父)も父親であることには変わりはありません。

したがって、監護親としては、再婚後も非監護親とお子さんとの間で面会交流を実施する必要があります。

もっとも、再婚相手(養父)とお子さんとの親子関係や再婚後の家族関係の構築も必要になってくるため、再婚前と同じような面会交流が実現できるというわけでもありません。

ここで、実父との面会交流と、養父との交流のどちらを優先すべきであるかという点については、法律上どちらが優先すべきであるかという点について決まっているわけではありませんが、再婚当初については、再婚相手との家族関係の構築という点が重視されるため、実父との面会交流については一定程度制限されることになるのが一般的です。 

3 最後に

これまで、何回かにわけて、面会交流を制限すべき事由についてご説明してきましたが、面会交流に関する問題は、父親側母親側のみならず、お子さんが置かれている環境によっても実施すべき面会交流の方法は千差万別であり非常に難しい問題であるため、面会交流についてお悩みの方は是非一度ご相談ください。

2019.02.19

面会交流について④

【ご相談者様からのご質問】

子どもが会いたくないと言っていても会わせなければならないということがあるのですね。少し納得がいかないです。

ただ、うちの夫は、子どもの養育費を一切払ってくれていません。養育費を払わない親に、子どもと面会する権利はありませんよね。

【弁護士からの回答】

今回も、面会交流を制限すべき事由に該当するか否かについてご説明さえていただきます。ご相談者さまのように、「養育費を払わないから面会させない」「面会させないのであれば養育費を払わない」という意見は本当によく聞かれます。

ですが、養育費も面会交流もお子さんの為の問題であるということ忘れてはいけません。

1 非監護親が養育費を払わない場合

これまでご説明したように、裁判所では、面会交流はあくまでお子さんの利益に資する場合には、面会交流をすべきという考え方にたっています。

したがって、たとえ養育費を支払わない親であっても、面会交流が制限される理由はなく、面会を希望すれば原則として面会は認められるということになります。

別の言い方をすれば、面会交流は養育費の支払いの対価ではないということになります。

逆をいえば、監護親が面会交流を認めない場合であっても、養育費を支払うべき非監護親の養育費を支払うべき義務はなくなりません。

2 非監護親の暴力

まず、非監護親が同居期間中に、お子さんに暴力を日常的に振るっており、将来にわたっても暴力が振るわれる可能性が否定できない場合には、面会させることで、お子さんの利益を害しかねないので、面会交流は認められないと判断されることになります。

もっとも、お子さんへの虐待の事実については、きちんと証拠として残しておかなければ、非監護親が虐待の事実はないと主張した場合、単に、監護親の主張のみではその事実を認定することはできないため面会交流を認めるとの判断がなされることは少なくありません。

他方、非監護親が同居中に、監護親に対し暴力を振るっていた場合は、面会交流を制限すべき事由にはなりえますが、ただちに、禁止すべきであると判断されることにはなりません。というのも、監護親にとっては非監護親に対する暴力がなされる恐怖があるため、監護親自身が引渡しに立ち会うことは難しいでしょう。

もっとも、お子さんに対して暴力を振るっていない場合には、お子さんと非監護親を会わせることが直ちに、お子さんの利益を害するとは言い難い状況もあります。

したがって、調停での進め方としては、監護親不在での面会交流の実施を検討することができないかを検討することになります。

具体的にはお子さんが幼い場合には、面会交流を支援する団体(別の機会にご説明さえていただきます。)の利用や、監護親の親(お子さんからすると祖父母)等が引き渡したりすることができないかを検討し、また、お子さんがある程度成長している場合には、お子さん自身が直接非監護親と面会する方法をとることができないかを検討することになります。

1 2 3 4 5 6 7
WEB予約 弁護士法人菰田総合法律事務所アプリ
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人菰田総合法律事務所 弁護士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所