弁護士コラム

2018.09.10

特別受益について~要件①~

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が亡くなりました。相続人は私と兄の2名です。兄は結婚しており,私は独身なのですが,父は,生前,兄の子供を非常にかわいがっており,兄の子供に対しては,私立の中学,高校,大学の費用のみならず,大学での1人暮らしするための家賃,生活費,お小遣い等全て父が支払ってきました。兄自身がなにかもらっていたわけではないのですが,父の援助は特別受益にはあたらないのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 弁護士オフィス今回から,複数回にかけて,特別受益についてご説明させていただきます。

 今回は,どのような人が特別受益者に該当するかについてご説明させていただきます。

 

 

1 条文上の要件

 民法903条1項では,「共同相続人」と記載されていることから,共同相続人が特別受益者の対象になることは間違いありません。したがって,血縁者は当然ですが,養子縁組をした場合の養子,養親についても,特別受益者に該当することになります(この点,養子縁組の場合,養子縁組後の贈与などが特別受益に該当することは当然ですが,裁判例上,養子縁組前に取得した財産についても特別受益になると判断した裁判例がありますが,縁組前については,確定的な判断がなされているものではありません。)

 

2 相続人の配偶者や子に対する贈与について

 では,被相続人が,相続人に対してではなく,相続人の配偶者に贈与した場合や,ご相談者様の事例のように,被相続人が相続人の子(孫)に贈与していた場合には,共同相続人の特別受益と評価することができるのでしょうか。

 この点については,最高裁判所の判例があるわけではないため,確定的な結論があるわけではなりません。しかし,特別受益の制度の趣旨は,共同相続人間の公平を図る点にあることから,裁判例上,実質的に被相続人から相続人に対する贈与されたものと評価することができる場合には,配偶者や子に対する贈与であっても被相続人に対する特別受益であると判断されています。

 具体的には,贈与の経緯,贈与額,贈与の性質,贈与により得られる相続人の利益等を考慮して判断することになります。裁判例においても,ご相談者様の事例のように,孫の学費及び生活費については,本来であれば,扶養義務を負っている相続人(父)が負担すべき費用であり,当該贈与により相続人は学費や生活費を負担する必要がないという利益を得ていることから,特別受益に該当すると判断されています。 

 このように,相続人以外に対する贈与等についても特別受益に該当する可能性があるため,是非一度弁護士にご相談ください。

 

 

2018.09.07

特別受益と寄与分について~総論~

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父がなくなりました。相続人は私と弟の2名です。父の相続財産は,預貯金が500万円のこっています。私としては,この500万円を弟と2分の1ずつ分ければいいと思っていますが,私は10年前に結婚するときに,父にお祝いとして200万円をもらっています。弟は,自分は結婚しておらず,父からなにももらっていないので,不平等ではないかと主張しています。相続財産は父が死亡した時点での財産を分けるので,私の考えで間違いないと思っています。

 それに,私は,認知症で,動くことができない父を,5年以上も1人で面倒を見てきていたにも関わらず,弟は一切父の面倒を見てきませんでした。父の病気の入院費や手術費も全部私が支払っています。私への贈与を問題にするなら,私の介護や費用の支出についてはどうなるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

那珂川オフィス② これまで,複数回にわたり,相続財産についてご説明させていただきました。通常,遺産分割は,この相続財産を法定相続分にしたがって,分割するのですが,例外として,相続財産には該当しない内容を,相続人間の公平の観点から,相続財産とみなすという制度が民法上,特別受益と寄与分という制度により認められています。遺産分割の場面では,この,特別受益と寄与分について非常に親族間で揉めることが多く,論点も多岐にわたるため,今回から複数回にかけて,特別受益と寄与分についてご説明させていただきます。今回は,特別受益と寄与分に関する総論的なお話をさせていただきます。

 

1 特別受益について

 特別受益とは,民法903条に規定されており,被相続人から遺贈を受け,または婚姻,縁組のために贈与を受けることや,生計の資本のために贈与を受けることをいいます。

 被相続人から生前に贈与を受けている者(特別受益者といいます。)が他の相続人と同様に,相続財産から受け取ることができるとなると,他の相続人との公平を害するという考えからから,相続人間の公平を図るために設けられた規定です。

 

2 寄与分について

 寄与分とは,民法904条の2に規定されており,共同相続人の中に,事業に関する労務の提供,財産上の給付,療養看護等により,被相続人の財産の維持,増加に寄与した場合をいいます。

 この寄与分についても,被相続人のために何もしていない相続人と寄与分のある相続人との間の公平を図るために設けられた規定です。

 

3 みなし相続財産について

 相続財産は,原則として,被相続人が死亡時に有していた財産を基準としますが,特別受益や寄与分が認められる場合には,特別受益の額を相続財産に加算し,寄与分の額を相続財産から控除します(相続財産に特別受益の額を加算し,寄与分の額を減額したものを「みなし相続財産」といいます。)。

 そして,みなし相続財産を,法定相続分に従い,分配した後に,特別受益者の場合には,分配後の金額から特別受益の金額を控除します(特別受益の金額の方が高い場合には,特別受益者の相続分は認められません。)。また,寄与分を有する人は,分配後の金額に寄与分の金額を加算します。

 ご相談者様の事例でみると(今回は,寄与分として100万円が認められるという前提でお話しします。),相続財産(500万円)に特別受益として,ご相談者様が結婚祝いにもらった200万円を加算し,寄与分100万円を控除した金額である,600万円がみなし相続財産となります。そして,600万円を2分の1ずつ分配することになります。したがって,ご相談者様の弟は,300万円の相続分を有することになります。これに対し,ご相談者様は,分配後の300万円から,と特別受益額を控除し,寄与分を加算した200万円の相続分を有することになります。

 特別受益と寄与分については,今後具体的なご説明をさせていただきますが,このように,特別受益と寄与分の内容によっては,相続する金額が大きく異なってきますので,是非一度,弁護士にご相談ください。

 

 

2018.09.05

相続財産と可分債権について②~預貯金債権について~

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が無くなりました。先日,父が亡くなりました(遺言書はありません。)。相続人は私を含めて,兄と姉の合計3人です。父の遺産は,銀行に貯金が600万円ありますが,それ以外の財産はありません。調べてみると,預金の契約をしている預金者は,預金の払い戻し請求権という債権を取得していることになるとのことでした。先生のブログでは,可分債権は遺産分割を経ずに相続されるとのことであったため,預金債権についても遺産分割は不要ですよね。

 

【弁護士からの回答】

那珂川オフィス 前回,可分債権については,相続により,法定相続分に従い当然に承継する旨ご説明しております。もっとも。預金債権については,近年最高裁判所にて,異なった判断がなされておりますので,今回は,預貯金債権の取り扱いについてご説明させていただきます。

 

 

1 預金契約について

 銀行等に口座を開設した際には,銀行との間で預金契約を締結していることになります。そして,預金者には,銀行に預けている預金を引き出すことができる債権(払戻請求権)を有していることになります。この払戻請求権のことを預金債権といいます。

 この預金債権については,金銭の支払いを求める債権であり,分割して請求することができる債権であることから,可分債権であることには間違いありません。

 したがって,可分債権である以上,これまでは,通常の可分債権と同様,遺産分割を経なくとも法律上当然に相続されると理解されていました。

 もっとも,銀行実務上,亡くなった方の預貯金を引き出すためには,遺産分割協議書若しくは,相続人全員の合意を必要とし,相続人単独での払戻請求については,応じていませんでした。

 

2 最高裁判所判例について

 このようななか,平成28年12月19日に,最高裁判所において,「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」との判断が出され,従来の預貯金債権に関する判例が変更されることになりました。判例変更の理由としては,遺産分割の場面においては,被相続人の財産をできる限り対象とするのが望ましいことや,上記でご説明した銀行実務上の取り扱いも理由とされています。また,預貯金債権であったとしても実質は現金と同じ取り扱いをされているという実情も踏まえた判断となっております。

したがって,ご相談者さまの事例においても,お父様の預貯金債権については,遺産分割の対象となり,被相続人名義の預貯金を引き出すには,遺産分割協議を行う必要があります。

 このように,何が遺産分割の対象になるかという判断についても,非常に専門的な知識を有するものであるため,相続が発生した場合には,是非一度,弁護士にご相談ください。

 

 

2018.09.03

相続財産と可分債権について①

【ご相談者様からのご質問】

 先日,父が亡くなりました(遺言書はありません。)。相続人は私を含めて,兄と姉の合計3人です。父の財産整理していたところ,父が,知り合いに対し,600万円貸したことが記載された借用書がみつかりました。貸金債権も,父が有していた財産であるため,遺産分割に関する協議をして分割する必要があるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

弁護士 これまでは,相続財産に含まれない財産について,ご説明させていただきましたが,今回は,相続の対象になるものの,通常の財産とは異なる扱いになる,可分債権についてご説明させていただきます。

 

 

1 可分債権と相続財産

 まず,これまで説明したとおり,民法896条により,被相続人の一身専属の権利義務以外の財産に属した一切の権利義務が相続財産になります。

 そして,相談事例の貸金債権等のように,性質上分割することができる債権を可分債権といいます(逆に,動物の引渡しを請求する権利のように分割することができない債権を不可分債権といいます。)についても,一身専属の権利ではないため当然に相続の対象となることには間違いありません。

 そして,被相続人が遺言書を作成しておらず,相続人が複数人存在する場合には,被相続人の相続財産は,遺産分割の協議が整うまでの間,共同相続人間全員による,「共有」状態となります(民法898条,)。

 したがって,相談事例においても,被相続人の貸金債権についても共有状態となり,遺産分割協議により協議を行う必要があるようにも思えます。

 

2 可分債権と遺産分割の対象

 もっとも,実務上,可分債権については,判例上,不動産等の通常の財産とは異なる取り扱いがなされています。

 すなわち,可分債権については,他の財産と異なり,相続によって,当然に共同相続人に対し,各人の法定相続分にしたがって相続されるとされています。その理由としては民法427条において,可分債権において,債権者が複数存在する場合には,各債権者が等しい割合で権利を有すると規定されていることから,相続により,取得した場合も同様であると考えられているのです。

したがって,ご相談者さまの事例でも,貸金債権(600万円)については,遺産分割を経ることなく,法定相続分にしたがい,200万円ずつ相続されることになります。

もっとも,可分債権については,民法427条で,「別段の意思表示」がある場合には,別の割合によって取得されることになります。したがって,相続人全員が,可分債権について遺産分割の対象にすることに合意した場合には,法定相続分と異なる割合にて相続することも可能になります。

今回は,可分債権一般について,ご説明させていただきましたが,同じ可分債権であっても預金債権については,近年,最高裁判所にて異なった判断がなされております。次回,預貯金に関する取扱いについてご説明させていただきます。

 

 

2018.09.01

相続財産に含まれない財産

<ご相談者様からのご質問>

先日,父が亡くなりました。私が父の長男であったため,早急に父の葬儀を執り行いました。その際の葬儀費用は300万円程度だったのですが,まとまったお金もなかったので,父が亡くなってすぐ,父名義の口座から引き出して支払いました。

 その後,父の遺産分割の話し合いになった際,私の弟たちから葬儀費用を父の預金から支出していることに不満がでました。父の葬儀費用なので,父の口座から支出することに問題はないと思うのですが,どうなのでしょうか。

 

<弁護士からの回答>

弁護士 ご親族が亡くなった場合,葬儀を実施するのが一般的ですが,この葬儀費用に関しては被相続人の預金の引き出しとの関係で問題になることが非常に多いです。今回は葬儀費用の負担の問題についてご説明させていただきます。

 

 葬儀費用とは,死者の追悼儀式に要する費用と,埋葬等の行為に要する費用(死体の検案に要する費用,死亡届に要する費用,死体の運搬に関する費用及び火葬に要する費用等)をいうとされています。

この葬儀費用について,被相続人の死後に相続人間で話し合いを行い,相続人間で負担する,若しくは,相続財産より支出する旨の合意ができる場合には,その合意に基づいて,葬儀費用を負担すればよいのであって,特段問題になることはありません(実際に多くのご親族が,話し合いにより葬儀費用の負担を決めていることが多いのではないでしょうか。)。また,被相続人が遺言などで葬儀費用の負担について記載している場合や,互助会等に葬儀費用の積立などを行っている場合(通常葬儀費用の負担についても決めていることが多いです。)には,被相続が決めた内容にしたがって,葬儀費用の負担が決まることになるため,問題になることはありません。

これに対し,葬儀に費用の負担に関して,被相続人が何ら取り決めておらず,かつ,相続人間で協議が整わなかった場合にはどのように処理されるのでしょうか。実際に問題になるケースでは,ご相談者様の事例のように,被相続人がお亡くなりになってすぐに,被相続人名義の預金口座から葬儀費用を引き出し,後の遺産分割協議等で,他の相続人から預金の引き出し行為について指摘されるといったケースが非常に多いです。

ここで,葬儀費用について,相続財産から支出することが可能なのか,すなわち,葬儀費用を誰が負担すべきであるかについては,法律上明確な規定があるわけではありません。学説などでは,①共同相続人で負担すべきという考え方,②喪主が負担すべきであるという考え方③相続財産より支出すべきであるという考え方など諸説の考えがあります。

この問題に関して,名古屋高等裁判所の平成24年9月29日の判決では,葬儀費用のうち,追悼儀式に要する費用(葬式代等)については,儀式を主宰した者(自己の責任と計算において,儀式を準備し,手配等をした者)が負担すべきであると判断しました。簡単にいうと,儀式を主宰した喪主(通常,喪主が儀式を主宰することになると思うので,喪主負担となると考えても差し支えないと思います。)。

理由としては,葬式に関しては,被相続人が何ら決めていない場合には,そもそも葬式を行うのか否か,どの程度の規模の式を行うのか否か,その式にどれだけ費用をかけるのかについては,全て主宰する人が決めることができる以上,主宰者で負担すべきであると考えたのです。また,喪主が負担すべきであると考える考え方の理由として,上記裁判例の理由に加え,主催者は出席者からの香典についても受け取ることができることからも,喪主が負担すべきであると考えているようです。

このように,葬式の費用等については,何も決めていない以上,喪主負担となってしまうことから,自身のお亡くなりになったときの備えを何ら準備していないと,遺されたご家族間での争いを生んでしまう可能性があるため,弁護士に相談し,しっかりと葬式についても記載した遺言書を作成することをお勧めします。

 

 

2018.08.10

いらない土地を放棄することはできるのか?

古くなった実家の処分を考えています。父のも母も亡くなり,だれも実家に住んでいないため,実家を処分しようと考えていたのですが,先日,実家の登記を取得したところ,土地は私名義になっているのですが(父から相続しました。)建物自体は,祖母名義になっていました。父は叔父との2人兄弟であり,叔父が存命のため,祖母の相続人は私と叔父の2人になるのですが,叔父との関係が悪く,おそらく遺産分割等で協議をすることは困難ではないかと思います。このままだと,使えない不動産についていつまでも固定資産税などを支払い続けなくてはいけなくなってしまうため,土地や建物の所有権を放棄したいと考えているのですが,できるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 相続手続きを行っておらず,不動産等について,多数の,相続人が存在することになってしまい,被相続人名義のままの不動産が残っているということも少なくありません。ご相談者様のご質問にあるように,土地の所有権を放棄することができれば,不要な土地の固定資産税等を回避できるのでしょうか,不動産の所有権の放棄はできるのでしょうか(なお,祖母名義の建物については相続分の放棄が可能ですがこれについては別の機会にご説明させていただきます。)。

 

1 権利の放棄について

 民法は,私的自治の原則という制度を採用しており,権利の行使や放棄については,当事者の自由な意思に基づいて行使することができるという原則を採用しています。したがって,誰かに対し債権を有しているとしても,債権を行使するのか放棄するのかについては,債権者の自由な意思に委ねられています。したがって,債権については債権者の意思で自由に放棄することができます。

 

2 所有権の放棄

 上記のように,私的自治の原則からすると,不動産の所有権という権利を放棄することも自由にできるようにも思えます。もっとも,結論からお伝えすると,現時点では,不動産の所有権の放棄については認められていないというのが現状です。

 先程お伝えした,私的自治の原則にしたがえば,権利の放棄も自由行使することができますが,私的自治の原則には,権利の行使については第三者の利益を害するような場合には公序良俗に反するとして,権利行使が制限されるという側面があります。したがって,権利の放棄についても,第三者の利益を害する場合には放棄が認められないということになります。

 そして,不動産について自由な放棄が認められてしまうと,建物の場合には老朽化した建物があふれかえってしまうおそれもあり,倒壊などにより近隣の住民に損害を被る恐れなどが否定できないため,一般的に不動産の所有権の放棄は認められないとされています(実際,不動産の登記実務上では,放棄による所有権の滅失登記などは一切認められておりません。)。

 

3 今後の課題

 このように,自由な所有権放棄が認められていない以上,不要な土地を処分する場合には,誰かに売却するか,相続の始まった時点で相続放棄をする以外に方法が考えられない状況になります。したがって,遺されたご家族が困らないように生前に財産を処分しておくか,相続が判明した時点ですぐに相続放棄等の対応を行う必要があるため,ご親族がお亡くなりになった場合にはすぐに,弁護士にご相談ください。

 もっとも,ご相談者様の事例では,相続放棄の申述期間も経過してしまっているでしょうし,建物が祖母名義であることから,土地の買い手もなかなかつかないのではないかと思います。この場合,遺産分割調停や審判等で建物についてもご相談者様名義にして,土地と一緒に売却することになると思われます。

 このように,土地の放棄が制度として認められていないこともあり,現在,日本では,空き家として放置されている不動産が非常に多く,社会問題になっています。

このような状態を解消するためにも,不動産の放棄の制度や,一定期間空き家状態となっている不動産に関して,国庫の帰属とするような立法措置により解消していくしかないのではないかと感じています。

2018.04.14

相続財産に含まれない財産②

<ご相談者様からのご質問>

  先日,父が亡くなりました(遺言はありません。)。父の法定相続人は,私と兄の2人なのです。相続財産については,預貯金500万円ほどがあり,兄妹で仲良く250万円ずつで分けることに合意していたのですが,遺産分割協議書を作成する前に,父が兄を受取人とする生命保険をかけており,兄が100万円程生命保険金を受け取っていたことが分かりました。
  私としては,相続財産は預貯金と生命保険金の合計600万円であり,300万円がが法定相続分としてもらえると考えているのですが,間違っているのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回は,相続財産に該当しない財産として,一身専属の権利義務についてご説明させていただきましたが,今回は,生命保険金についてご説明させていただきます。

 生命保険金については,死亡により支給される仕組みになっていることから,相続財産に含まれると考えられている方が非常に多いのではないかと思います。
しかし,結論からお伝えすると,生命保険金は相続財産に含まれません。理由としては,相続財産とは,相続開始時(死亡した時点)において被相続人が有している財産であるところ,生命保険契約は,契約者と保険会社との間で,保険料を支払うかわりに「被保険者が死亡したことを条件として受取人に対し,生命保険金を支給する」ことを合意する契約です。すなわち,生命保険金はあくまでも保険契約に基づき受取人が受領することができるものであり,被相続人から承継した金銭ではないため,相続財産に該当せず,当該受取人固有の財産となります。

したがって,ご相談者様のケースにおいてもご相談者様の兄が受領した生命保険金100万円については,兄の固有の財産に該当するため,相続財産には含まれないことから,相続財産は預貯金の500万円のみということになります。

このように生命保険金については,遺産分割における相続財産には該当しませんが,生命保険金の額があまりにも高額な場合には,別の機会にご説明しますが,遺留分減殺請求権における「特別受益」として認定される場合もあります。

また,保険金の受取人が「満期の場合には被保険者(被相続人),被保険者が死亡した場合には相続人」と規定されており,相続人が複数存在する場合には,相続財産には含まれないものの,法定相続分にしたがって,各自保険金請求権を有することになります。
また,相続税においては,生命保険金も相続税の課税対象となる「みなし相続財産」に含まれますので,相続税の算定の際には注意が必要です。

2018.04.13

相続財産に含まれない財産①

<ご相談者様からのご質問>

 先日,元夫が亡くなったと聞きました。離婚調停の際,私が子どもの親権者となり,元夫から毎月2万円の養育費を支払ってもらうように約束してもらいましたが,全然支払ってもらえませんでした。元夫は私と離婚後再婚していましたが,再婚相手には養育費を支払う義務は相続されないのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 以前にもお話させていただきましたが,被相続人の一身専属の権利義務については相続されず,相続財産には含まれないことになります。そこで,本日は,相続財産に含まれない一身専属の権利義務について説明させていただきます。また,養育費に関しては複雑な問題があるため併せて養育費に関する問題についてご説明させていただきます。

 一身専属の権利義務とは,その権利や義務の性質や内容から,他の人に与えたり課したりすることに馴染まない,本人にのみ与えられまたは課せられるべき権利義務のことをいいます。
 具体的には,帰属上の一身専属権として,代理権,使用貸借権,労働者である地位等があり,行使上の一身専属権として離婚請求権等があります。

ご相談様のご質問内容では,養育費を支払う義務が相続財産となるかという点が問題となっておりますが,養育費の支払義務に自体は,帰属上の一身専属の義務として,相続の対象とはなりません。したがって,ご相談者様の元夫の再婚相手は,元夫の相続人ですが,養育費を支払う義務までは相続しませんので,今後の養育費に関しては,請求することができません。

 もっとも,ご相談者様の事例では,元夫が養育費について,毎月2万円の支払い義務があるにも関わらずこれを支払っておらず,元夫が死亡するまでの未払いの養育費が存在します。この未払いなっている養育費については,上記の養育費を支払う義務とは異なり,単なる,金銭債務となっているため,一身専属の権利義務には該当しません。したがって,ご相談者様の事例の場合でも過去の未払分の養育費については,相続財産として元夫の再婚相手にも相続されます。

 ここで注意が必要な点が2点あります。まず,上記の未払分の養育費(金銭債務)は,養育費の対象であるお子さん自身も相続します。この場合相続により債権者と債務者が同一人物になるため債務は消滅します(法律上,混同による消滅といいます。)。

したがって,再婚相手に請求できる金額は,再婚相手の法定相続分に相当する金額となります。
 また,過去の未払分の養育費は,毎月支払われる「定期給付債権」であるため,民法169条により,各支払日から5年間で消滅時効になってしまいます。したがって,したがって,何もしていないと未払分の養育費として請求できる金額が毎月毎月減少してしまうことになりますので,いち早く弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。

2018.04.12

相続財産について②~積極財産~

<ご相談者様からのご質問>

相続財産には借金も含まれるのですね。それでは,積極財産に関してはどのようなものが相続財産になるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

前回は,相続財産に関する総論的なご説明と消極財産の具体例についてご説明させていただきました。今回は,積極財産についてどのようなものが積極財産に該当するかをご説明させていただきます。

1 不動産及び不動産所の権利

 被相続人が所有していた土地(宅地,農地,山林)や建物(居宅や店舗も含みます。)等の不動産だけではなく,不動産上に設定されている権利,具体的には,地上権,永小作権や借地権,借家権利等の相続財産に含まれます。したがって,父親名義で賃借していた不動産に関しては父親が亡くなった後でも相続人は不動産を賃借することができます(賃借の対価である賃料を支払う必要はあります。)。

2 現金・有価証券等

 現金のみならず預貯金,貸付金,売掛金,株券(株式)等の有価証券についても相続財産になります。この点,預貯金や貸付金等の債権については,可分債権であるのか不可分債権であるのかについてどのように相続人に分配されるのかについて複雑な取扱いになっていますので,別の機会に詳しくご説明させていただきます。
 先日,夫が急になくなってしまいました。これから相続のことについて考えなければなりません。夫との間には子どもが1人おり,夫の両親もご兄弟も健在です。この場合,誰が相続人になるのでしょうか。

3 動産

 被相続人が所有していた自動車や,家財道具,船舶,宝石,貴金属などの動産についても相続財産になります。動産に関しては相続財産に含まれるのかという問題よりも相続持参の価額をどのように評価するのかという点が問題となります。

4 その他(債権等)

 上記以外にも電話加入金,著作権等の権利も相続の対象となります。債務不履行による損害賠償請求権についても相続の対象となります。損害賠償請求権のうち,精神的苦痛に対する慰謝料請求権については従来,一身専属の権利であるとして相続財産に含まれないとされてきましたが,最高裁の判例により(昭和42年11月1日判決),慰謝料請求権であっても相続財産に含まれ相続人において加害者に対し慰謝料請求権を行使することができるとされました。

2018.04.11

相続財産について①

<ご相談者様のご質問>

 父が先日なくなりました。相続人は私だけなのですが,父が所有していた物は実家の不動産があります。しかし,父はギャンブル等で作った借金もありますが,借金は父が作ったもので私は関係ありませんよね。

<弁護士からの回答>

 これまでは,相続人,すなわち,誰が亡くなった人の財産を相続することになるのか,相続人の順位,資格の喪失等についてご説明させていただきました。
 今回からは,これまで説明してきた相続人にどういった財産が承継(相続)されるのかという相続財産に関する問題についてご説明させていただきます。
 今回は,相続財産の定義や総論的な内容をご説明させていただきます。

 民法では,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定されています(民法896条本文)。
 したがって,被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人に承継されるため,相続財産とは,相続開始時に被相続人の財産に属していた一切の権利義務,すなわち,被相続人が有していたプラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)のすべてのことをいいます。もっとも,民法896条但書では「被相続人の一身に専属したものは,この限りではない。」と規定されており,被相続人の一身専属の権利義務に関しては相続財産含まれないことになります。

 このように,相続財産については,積極財産(プラスの財産)だけではなく,消極財産(マイナスの財産)についても相続されることになります。積極財産については別の機会のご説明させていただきますが,消極財産としては,負債(借金,事業での買掛金,住宅ローンなど)や,税金関係(所得税,住民税,固定資産税,その他未払いの税金など)に加え,未払いの家賃・地代,未払い分の医療費等も含まれるため,かかる消極財産を承継した相続人は,債権者等に承継した債務等を返済する義務を負うことになります。

 また,相続の際には,積極財産のみ承継して,消極財産を承継しないということはできません。したがって,相続する際には,被相続人にどのような相続財産があるのかについてしっかり判明してから相続するかしないかを判断する必要があります(相続放棄については,別の機会でご説明させていただきます。)。

 ご相談者様の事例でも,お父様の不動産を相続する際には,お父様が作った債務についても承継し,支払う必要があるので相続するか否かは,慎重に判断された方がよいでしょう。
 当事務所でも相続に関しお手伝いさせていただく際には,相続財産を調査するサービスもございますので,お気軽にご相談ください。

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